今日からランナー

1位はあの偉業……!? 2019年マラソン界10大ニュース!

さて、2019年最後の「今日からランナー」はこの1年を振り返る、筆者独断による「マラソン界今年の10大ニュース」をお届けしよう。

10位 神野大地がアジアマラソン選手権で優勝!

まずは最新のニュースから。青山学院大出身の神野大地選手(26)=セルソース=が12月22日、中国・東莞で行われたアジアマラソン選手権で優勝した。にもかかわらず、あまり大きなニュースになっていない(気がする)。私自身、神野選手本人のツイッターで知ったくらいだ。

アジアマラソン選手権は1988年にアジア陸上選手権から切り離される形でスタートし、2年に一度開催されている。アジア陸上連盟が主催するれっきとした国際大会だ。そこで日本人選手が金メダルを獲(と)ったのだから、もっと大拍手を送っていいと思う。なので私が取り上げた(笑)。

実はこの優勝にはちょっとしたアクシデントがあった。神野選手を数十メートル離してトップを走っていた北朝鮮の選手が、ゴール直前で大会関係車両(中継バイク)につられてコースアウトしてしまったのだ。北朝鮮選手は気づいて正規のコースに戻ったが、神野選手がすぐ近くまで追い上げていて、デッドヒートの末、最後は神野選手が逆転、逃げ切った。

動画がYouTubeにアップされているので、気になる人は検索してみるといいだろう。マラソンは最後まで何が起こるかわからないということを改めて思い知らされた。神野選手自身も「最後まであきらめないことの大切さを改めて感じました」とコメントしている。

9位 箱根駅伝、常勝青山学院大を破り東海大が初の総合優勝!

初優勝し胴上げされる東海大10区・郡司陽大=代表撮影

初優勝し胴上げされる東海大10区・郡司陽大=代表撮影

その神野選手を輩出した青山学院大は5連覇を目指した箱根駅伝で惜しくも総合2位だった。連覇を阻んだのは東海大で、部創設以来、初という感動的な優勝だった。

しかも、その東海大は11月に行われた全日本大学駅伝でも最終8区で2連覇を狙う青学を抜き逆転優勝した。こちらは16年ぶり2度目の優勝だった。

【参考記事】
>>東海大が16年ぶり2度目の優勝 全日本大学駅伝

8位 女子マラソンで16年ぶりに世界新記録!

16年ぶりといえば、10月に開催されたシカゴマラソンでケニアのブリジッド・コスゲイ選手(25)が16年ぶりに女子マラソンの世界記録を更新した。2時間14分4秒の新記録は、イギリスのポーラ・ラドクリフ氏が樹立した2時間15分25秒を1分以上、大幅短縮するものだった。

【参考記事】
>>コスゲイが女子世界記録更新、ラドクリフ氏も祝福 シカゴ・マラソン

7位 日本記録ランナー大迫選手がフルマラソン「初棄権」

29キロ付近で歩き始める大迫傑選手(右)=代表撮影

29キロ付近で歩き始める大迫傑選手(右)=代表撮影

シカゴマラソンといえば、2018年に大迫傑選手(28)=ナイキ=が2時間5分50秒の日本記録を出した大会としても知られている。その大迫選手の日本凱旋(がいせん)レースとなったのが3月に行われた東京マラソンである。日本記録の再更新が期待されたが、周知のとおり悪天候などの条件も重なって29km付近でリタイアした。大迫選手にとっては4度目のマラソン挑戦で初めての途中棄権だった。詳細は、この連載の過去記事を参照してほしい。

【参考記事】
>>大迫傑選手 「東京マラソン2019」リタイアの真相
>>腹痛に襲われながらも日本新記録! 大迫傑選手のシカゴマラソン回顧

6位 止まらないナイキの厚底ブーム、ますますパワーアップ

その大迫選手と、そして女子マラソン世界新記録のコスゲイ選手が履いていたのが、アレである。そう、この連載でもう何度も取り上げているナイキの厚底シューズ「ズーム ヴェイパーフライ」だ。

主要レースの上位選手がみんなコレを履いているという状況がここしばらく続いている。前述の箱根駅伝で優勝した東海大は10人中7人がナイキで、うち6人がヴェイパーフライだったし、22日に行われた全国高校駅伝でも「ピンクの靴ばかり」と話題になった。はっきり言ってもう書くのがつらいほどの席巻ぶりだ。

新モデル「ネクスト%」が今年出たことで、さらに拍車がかかっている。年明けの箱根駅伝も「ピンクの靴ばかり」になることだろう。他のメーカーにも、ぜひ奮起してもらいたいものである。

【参考記事】
>>箱根駅伝 なんと区間賞の70%を“厚底シューズ”が叩き出していた!
>>ロンドンマラソン上位独占! ナイキの“新厚底シューズ”が鮮烈デビュー

5位 MGC・マラソングランドチャンピオンシップ開催される

男子マラソングランドチャンピオンシップ。39km過ぎで力走する(右から)優勝の中村匠吾、2位の服部勇馬、3位の大迫傑=代表撮影

男子マラソングランドチャンピオンシップ。39km過ぎで力走する(右から)優勝の中村匠吾、2位の服部勇馬、3位の大迫傑=代表撮影

その「ピンクの靴」の日本でのデビュー戦になったのが、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)だ。ご存じ、日本のトップマラソン選手がオリンピック日本代表をかけて東京の街を駆け抜ける、まさに夢のようなレースだった。展開もその大舞台にふさわしく、男子ゴール直前の2位争いの激走は思い出しても胸が熱くなる。

このレースで男子は中村匠吾選手(富士通)、服部勇馬選手(トヨタ自動車)が五輪切符を手にし、大迫傑選手が暫定代表に選ばれた。女子は、前田穂南選手(天満屋)、鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)、小原怜選手(天満屋)の順番だ。

今回、初めての試みとなったMGCによる五輪代表選考は選手からの評判も上々だった。次回以降もこの方法を続けるかどうかは未定というが、一マラソンファンとしては、このドリームレースを今後も継続してほしいと願う。

【参考記事】
>>MGC3位 大迫選手を襲った想定外の“悪いサイクル”
>>トップランナーがこぞって着用 ピンクの厚底シューズ 「ヴェイパーフライ ネクスト%」は何がすごいのか?

4位 そして、まさかのオリンピックマラソンコースの変更

ところで、なぜMGCがあそこまで盛り上がったのかと言えば、使用コースが2020東京オリンピックのマラソンコースそのものだったからという側面もある。

五輪コースで五輪選手を選ぶ。なんとも理想的な話ではないか。ところが、周知のようにIOCから酷暑を理由に開催地変更を迫られ、日本側はさしたる抵抗もせずに札幌開催が決まってしまった。

この決定には驚いたが、結局、コースは札幌大通り公園を中心とする周回コースになった。北海道マラソンの名物難所である炎天下の新川通りを避け、木陰の多いところを選んでいるのは評価できるが、「東京は暑いから北海道で」というのはあまりに雑な判断だったと言わざるを得ない。

【参考記事】
>>五輪マラソンの開催地変更 「アスリートファースト」を科学的に検証したのか?
>>五輪マラソン、札幌は変則3周へ 後半10キロを2周

3位 『いだてん』破格の面白さなれどなぜか視聴率最低記録を更新

大河ドラマ「いだてん」で金栗四三を演じた中村勘九郎さん(左)と、田畑政治を演じた阿部サダヲさん=6月、東京都渋谷区のNHK放送センター

大河ドラマ「いだてん」で金栗四三を演じた中村勘九郎さん(左)と、田畑政治を演じた阿部サダヲさん=6月、東京都渋谷区のNHK放送センター(撮影=真野啓太/朝日新聞社)

そのオリンピックの日本における歴史を余すところなく描いたのがNHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)~」だ。いやぁ~、面白かった。

日本のマラソンの父、金栗四三を主人公にした前半はもちろん、1964年東京オリンピック開催に奔走するマーちゃんこと田畑政治が活躍する後半も最高だった! 

脚本の宮藤官九郎は天才だね、と個人的には思う。ところが平均視聴率は関東地区で8.2%(ビデオリサーチ調べ)と史上最低、初の1桁台だったという。なんでだろう。わからん。

でも、私にとっては堂々の10大ニュース入りである。ちなみに来年は、金栗四三の母校、旧東京高等師範学校(現筑波大学)がなんと26年ぶりの箱根駅伝本戦出場を決めている。

【参考記事】
>>「いだてん」ファン必見! 熊本で見るべき“金栗四三の聖地”

2位 ブラインドマラソンで日本勢がアジア記録を独占

視聴率最低記録更新ということで、残りは記録ものでいきたい。まずは8月に行われた北海道マラソン2019で、ブラインドマラソンT11クラスの和田伸也選手(42)=長瀬産業=が出した2時間33分49秒とT13クラスの高井俊治選手(33)=D2D=がマークした2時間30分54秒がそれぞれアジア新記録として公認された。

さらに、12月1日の福岡国際マラソンではT12クラスの熊谷豊選手(32)=三井住友海上=2時間25分11秒と、これまたアジア記録を塗り替えた。日本勢が三つのクラスすべての記録を独占することになったのだ。

T11クラスは明暗の識別はできるが距離や方向の認知ができない人、T13は視力0.03〜0.1までの人と視野が5度以上で20度以下の人、T12はその間に位置する。それでもフルマラソンを2時間30分前後で走り切るのだから、恐れ入る。

1位 エリウド・キプチョゲ選手が人類初のフルマラソン2時間切り

 1時間59分40秒で走り終え、前人未到の「サブ2」を達成したキプチョゲ=〓The INEOS 1:59 Challenge(2019年10月12日)撮影=Thomas Lovelock


1時間59分40秒で走り終え、前人未到の「サブ2」を達成したキプチョゲ=The INEOS 1:59 Challenge(2019年10月12日)Photo: Thomas Lovelock for The INEOS 1:59 Challenge

マラソン界、今年のナンバー1ニュースはやっぱりコレしかないだろう。ケニアのエリウド・キプチョゲ選手(34)が非公認ながらフルマラソンで1時間59分40秒をたたき出した。まさに人類の限界を超えた歴史的な記録である。前回(2年前)の挑戦では、2時間00分25秒にまで迫っていた。今回も総勢41人のペースメーカーが入れ替わりで囲むなど、特別なサポート体勢の下でのレースで、1kmあたり2分48秒~50秒を維持し続け、見事に偉業を達成した。

YouTube動画は500万回以上も再生された。見たことがある人はわかると思うが、キプチョゲ選手は最後まで余裕を持って走っているようだった。さすがだ。レース後も「私は2時間切りを初めて果たした世界一幸せな男だと思うし、人間に限界なんてないことをみんなに言いたい」とコメントしている。人類にフルマラソン2時間切りは可能なのだ。ちなみに、このキプチョゲの足元を支えていたのも、“ナイキの厚底”だった!

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PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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