原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

原田泰造とコトブキツカサ 映画好きの二人が選んだ2019年ベスト作品はこれだ!

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画好きなオトナのお二人が、新作や印象の残る名作について自由に語る対談企画。今回は2019年最終回ということで、お二人のベスト作品について語っていただきました。

(※編注:収録日の都合上、2019年12月20日以降公開の映画については、今回取り上げられなかった作品があります)

原田泰造とコトブキツカサ

コトブキ 毎年言ってるかもしれないですけど、今年もたくさんの映画が公開されましたね。カウントの仕方にもよりますけど、劇場公開されてた作品だけで1000本超えてるみたいです。僕も、一時期は公開作を全部観(み)てやろうと思ったこともあったんですけど、これはもうムリですね。それにネット配信の作品もありますし……。

原田 時代は変わったね。昔は邦画と、ハリウッドから来た作品だけを観ればいいって感覚だったけど、いまは世界各国からたくさん映画がやってくるし、ネット配信も観たい作品がいっぱいある。でも、映画ファンとしては、観切れないくらいの作品があるというのはうれしい悲鳴だよ。

コトブキ そんなたくさんの映画のなかからベストを選ぶのが難しいですけど、良かった作品を挙げていきましょう。

原田 今年観た作品のなかで、いまパっと思いついたのは『ギルティ』。

コトブキ さすが泰造さん! 『ギルティ』は僕もベスト3に入る作品ですね。デンマーク映画で、緊急通報指令室に勤務する男の話なんですけど、電話の向こうの声だけを頼りにしてっていうサスペンス。要は状況が全く分からないんですけど、主人公と一緒に、何が起きているのかを観客全員が映像として思い浮かべているような感覚になりますよね。

原田 そうそう。映画館で観ながらゾクゾクしたし、『これ観に来て良かった!』って思う作品だったんだよね。もう、隣の席の人にも「良かったですよね」って話しかけたくなるというか。

コトブキ 泰造さんは、ホントに話しかけそうですよね(笑)。『ギルティ』のアイデアと、脚本の面白さは、2019年トップレベルの質ですよ。これを観て、悔しがった作家さんって多いんじゃないですか。

原田 『ギルティ』の公開は2019年2月だったんだけど、この辺りは他にも良作が多かったんだよ。観た映画はメモをつけてるんだけど、2月1日に『アリータ・バトル・エンジェル』を観てる。で、3月には『グリーンブック』『運び屋』『ROMA ローマ』……。ぜんぶ良かったね。

コトブキ その時期って、前回のアカデミー賞絡みの作品が多いですよね。僕も『グリーンブック』も『運び屋』も大好きなんですけど、前の年の作品っていうイメージなんですよ。

原田泰造

原田 そうなんだよ。だから今年のベストに入らないかなっていうのもわかる。でも『ROMA ローマ』は面白かったね。これを観て思ったのは、Netflixの時代が来たというか、もう配信と普通の劇場公開作と差が無くなってるんだなってことだよね。これは『アイリッシュマン』にもいえること。あと『マリッジ・ストーリー』とか。

コトブキ 『マリッジ・ストーリー』も押さえてますか。スカーレット・ヨハンソンがすごくいい演技してましたよね。

配信系の「映画」が台頭した1年

原田 配信系の作品って、ちょっと前までオリジナルドラマっていう感覚だったけど、いまは本当に「映画」なんだよね。アカデミー賞の対象になるかどうかという論争もあったけど、これはもうアカデミー賞の範疇(はんちゅう)に入ると思う。

コトブキ 『ローマ』は、アカデミー外国語映画賞を取りましたからね。もう無視できないですよ。『アイリッシュマン』なんて、制作費が180億円近くですから。まぁ、あれだけの名優をそろえたらそれくらいいかかっちゃうのもわかりますけど。

原田 『アイリッシュマン』は良かったよね。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノがスコセッシ監督の映画で共演してるってだけで贅沢(ぜいたく)だよ。

コトブキ それぞれの若者時代を、本人が演じて、CGで若く加工してるんですよね。昔だったら、若い時は若い役者にやらせるじゃないですか。

原田 CGで確かに見た目は若々しくなってるんだけど、動きはおじいちゃんなんだよね。デ・ニーロが蹴るときとか、ちょっとモッサリしちゃって。やるんだったら動きも修正かけてくれないと。

コトブキ あれは……確かにおじいちゃんでしたね(笑)。でも、CGを使ってでもデ・ニーロ本人の演技で固めた所が渋いですよね。まぁ、これが劇場公開作だったら、大ヒットは難しいかもしれませんね。

原田 そうか。若い女性は見に来ないかもしれないね。

コトブキ 逆の言い方をすれば、『アイリッシュマン』みたいな作品は、いまの劇場公開モデルだと製作費の回収も簡単ではないですよ。公開するなら、男女、いろんな世代を劇場に呼び込まなきゃいけないし、それを世界各国に売って、いろんなタイアップ取って、みたいなことをしなくちゃいけないじゃですか。しかも上映時間が3時間半くらいあるんですよ。回転率が悪いから、稼げない。

原田 配信モデルだからこそ、純粋に監督のやりたいことをできるってことなんだよね。

コトブキ さぁどんどん行きましょう! 僕の今年の忘れがたい作品でいうと『アス』ですね。

原田 あぁ、あれは怖かった。たぶん、日本人にはわからない部分もあると思うんだけど、それでもゾっとした。

コトブキ 不思議な映画でしたけど、なにか惹きつけられるものがあるんですよね。

原田 『ホテル・ムンバイ』は? あれも怖かったよね。

コトブキ 面白かったですね。あの作品好きな人多いですよね。では、僕のベスト級の作品を挙げていきますよ。まず『バーニング 劇場版』。

原田 おぉ、『バーニング』入るの? うれしいなぁ。村上春樹好きなんだ?

コトブキツカサ

コトブキ 全部読んでますよ! でも、村上春樹が好きだから『バーニング』が良かったというわけじゃなくて、あの作品のムードというか、ちょっと例えようがない雰囲気が良かったんですよね。

原田  確かに、何が良かったのか説明できない部分はあるね。でも『バーニング』は面白かった。

コトブキ いま世界各国で「分断」をテーマにした映画が同時多発的に作られている気がするんですけど、その流れで説明できるかもしれないですね。同じ韓国映画でいえば、公開日の関係で2019年の作品にギリギリ入れられなかった『パラサイト 半地下の家族』もそういう作品だと思います。

原田 『パラサイト』はまだ観てないけど、すごく楽しみ。この連載で取り上げたいね。

コトブキ あとは『象は静かに座っている』。これ、面白かったんですけど、とにかく長いんで、人に勧めるのは難しいですね。あとは『LORO 欲望のイタリア』。イタリアの政治家ベルルスコーニの半生を映画にした映画なんですけど、こんなことあったんだ、みたいなことのが面白いし、こんなにパーティーばっかりしてたんだっていうね。

原田 いや、なかなかベストって決められないね。俺の候補作だと『バイス』『キングダム』『女王陛下のお気に入り』『さらば愛しのアウトロー』『ファイティングファミリー』……。『ジョーカー』は入らないの?

コトブキ 『ジョーカー』は当然良かったし、『ジョーカー』が1位でもいいんですけど、みんな語ってるから僕が推さなくてもいいかな、って思ったり…。

原田 『ジョーカー』を見て、ホアキン・フェニックスの演技に感心したので、彼が前に主演した『her/世界でひとつの彼女』を見たんだけど、あの作品もすごく良かったね。

コトブキ あの映画のホアキンも、役柄としては“コミュ障”というか、女の子とうまくしゃべれないというもので、『ジョーカー』に通じるものもありましたよね。

原田 ちょっと悩んできたから、洋画は後回しにして、先に邦画のベストを決めようよ。

キャストがみんな素晴らしかった『宮本から君へ』

コトブキ わかりました。候補でいうと、『ある船頭の話』。オダギリ・ジョーさんはもちろん良かったんですけど、クリストファー・ドイルのカメラがほんとに美しくて、芸術の域でしたね。映画を観てて、ずっとこの世界に浸っていたいって思いました。あとは『蜜蜂と遠雷』。

原田 あぁ、『蜜蜂と遠雷』は良かったね。松岡茉優ちゃんがすごく頑張ってた。

コトブキ 松岡さんの役柄は、自分の気持ちを開放できない部分があって、演じるのが難しかったと思いますよ。原作は小説ですけど、映画ならではの表現に挑んでるところも良かったですね。

原田 じゃあ、俺から邦画ベストいくね。もうこれは1位でいいと思うんだけど、『宮本から君へ』。観てて頭をガツンとやられたというか、今年の邦画の中で一番ショックを受けた作品。

コトブキ わかります! 原作マンガもすごくアツいんですけど、それ以上にアツい作品でしたね。

原田 キャストがみんな素晴らしかったし、演技もすごかった。真淵拓馬を演じた一ノ瀬ワタルくんとは一緒に共演したこともあって、すごくいいヤツという印象だったんだけど、この映画観たらすっげえ悪役で、もうビックリしたよ!

コトブキ 非常階段の決闘! そのあとに蒼井優がチャリンコで走ってくるシーン! 最高でしたね。

原田泰造とコトブキツカサ 映画好きの二人が選んだ2019年ベスト作品はこれだ!

映画『宮本から君へ』より (C)2019「宮本から君へ」製作委員会

原田 蒼井優さんの演技がすごく好きなんだよね。『彼女がその名を知らない鳥たち』のときも思ったんだけど、カッコつけないというか、女性の嫌な所までやりきる所がすごい。

コトブキ 『宮本から君へ』での、蒼井優の存在感って不思議ですよねね。気が強そうなんだけど、宮本に対して依存してるようだし、ヘビーな出来事があっても、どこかふわふわしてる。あの存在感が、映画を暗くしすぎないんでしょうね。

原田 あの真淵拓馬に勝てるわけないって思うんだけど、宮本は絶対折れないじゃない。それでも追い込んで、歯を食いしばって闘ってるのを観てると、なんかこっちも体に力が入っちゃうんだよね。ジャッキー・チェンの『酔拳』とか『蛇拳』を見てる時のような気持ちになったね。

コトブキ 最後はすごい達成感がありましたね。

原田 今年の邦画はパワフルな作品が多くて、『岬の兄妹』『愛がなんだ』『凪待ち』も良かった。あとは『新聞記者』『よこがお』『解放区』も印象に残ってる。

コトブキ 僕の邦画ベスト発表していいですか? 『男はつらいよ おかえり寅さん』、これ最高です。1位です。今年だけで500本以上は映画を観てると思うんですけど、唯一涙を流したのが『おかえり寅さん』だけです。僕は『男はつらいよ』シリーズにそこまで思い入れないんですけど、これは泣きましたね。

原田 俺はまだ観てないんだけど、なにがそんなに泣けたの? 

コトブキ あの寅さんの甥っ子の満男くんが妻と死別してるんですけど……。

原田 ちょっと、内容を言うなって!

コトブキ いやいや、まだあらすじですから(笑)。予告編に出てくる話ですから。

原田 わかった、もう言わなくて大丈夫。俺はホントに楽しみにしてるから。ほんとに、ここにきて寅さんの新作が見れるっていうだけで奇跡なんだよ。

コトブキ 日本人のほとんどが泰造さんと同じ気持ちなんだと思いますよ。さぁ。洋画のベストもいきましょう。引っ張っておいてアレですけど、やっぱり僕は『アイリッシュマン』ですね。

原田 おぉ。やっぱりスコセッシだよね。

コトブキ こういうジャンルで、スコセッシを超える人はいないですよ。デ・ニーロが殺しに行った時、いきなり顔を撃つんですよ。あぁスコセッシだな、かっこいいなって思いましたね。そのスコセッシが、デ・ニーロとパチーノを撮ったっていうのがいいんですよ。

原田 今年、デ・ニーロは『ジョーカー』に出ていたし、パチーノは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも出てたじゃない? それぞれ存在感を発揮しての『アイリッシュマン』だったから、より良く感じたよね。

コトブキ 『アイリッシュマン』は、3時間半あるんですよ。ちょっと地味な展開もあるし、長いなって気持ちはわかります。でも、これ言っちゃいますけど、配信だから途中で止められるじゃないですか。自分のなかでエピソード分けして、今日はここまでで第1話、続きは明日、でもいいと思うんですよ。まぁ、僕は職業病かもしれないけど、途中でやめられないんですけどね。

原田 配信サービスが便利だなって思ったのは、予習・復習がすぐ出来ることだよね。『ドクター・スリープ』を観た後、やっぱり『シャイニング』が見直したくなって、すぐに復習鑑賞したから。関連作をすぐ見られることは、映画への向き合い方に影響を与えてくるかもしれないね。

コトブキ では、泰造さんの洋画ベストは?

コトブキさんの洋画ベストは『アイリッシュマン』、原田さんの洋画ベストは……

原田 うーん……。『イエスタデイ』も良かったよね。もしもの世界ではあるんだけど、それだけで終わらずに、プラス1を乗っけてくる。それと、やっぱり後半のサプライズだよね。あれは感動するし、あれをやりたくてこの映画を作ったのかなって思うくらい。

コトブキ あの場面は、ビートルズファンにとっても大きなギフトでしたよね。名前出しますけど、有田哲平さんって本当にビートルズが好きなんですよ。リバプールに行って聖地巡礼するくらいの。その有田さんが『イエスタデイ観たぞ』って話かけてくれて、僕、正直ダメじゃないかと思ったんすよ。有田さんがビートルズを好き過ぎるから。でも「良かった」って。マニアだからわかる気の利いた所もいっぱいあるって。

原田 あぁ、それはたくさん入ってるんだろうね。

コトブキ 監督自身も触れてないですけど、ビートルズの色々な楽曲がある中で、なんで『イエスタデイ』をタイトルしたんだろうってことですよね。これ実はイエスタディっていう曲が生まれたときのエピソードで、ポール・マッカトニーが夢の中で流れたメロディーを起きてすぐにメモったというのがあるんです。で、「あまりに自然に浮かんできたものだから、誰かの曲のメロディなんじゃないかと思って皆に聞かせて回ったけど、誰も知らないみたいだったから、僕のオリジナル曲だと認識した」っていうエピソードがあって、これがまさに、この映画みたいですよね。

原田 すごいね! この映画のアイディアの元ネタは、そういう所にあったのかもね。

コトブキ 『イエスタデイ』は、いろんなシーンを思い返せますね。やっぱりいい映画って、あのシーンが良かったとか、あのセリフが気が利いていたとか、こまかく覚えてるもんですね。

原田 それでいうと、俺は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のシーンやセリフをすごく覚えてる。よし、今年の洋画ベストは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にしよう! やっぱり、どのシーンも、タランティーノここにありみたいな印象があったし、これが最後の監督作品になっても満足できるくらいの完成度だったと思う。ラストをああいう感じにしたのも、個人的にはすごく良かった。

原田泰造とコトブキツカサ 映画好きの二人が選んだ2019年ベスト作品はこれだ!

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演が話題となった『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』©ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

コトブキ たしかに今年は『ジョーカー』とか暗い映画も多かったので、逆に『ワンス〜』のハッピーさが際立ってくる感じがありますね。

原田 マーゴット・ロビーが演じるシャロン・テートが、自分の出演してる映画を自分で観に行くシーン、あそこは本当に大好き。みんなが笑ってるのを見て喜んでるんだよね。あれがもうタランティーノそのものなんだなって思った。

コトブキ 僕の邦画ベストは『男はつらいよ おかえり寅さん』、洋画は『アイリッシュマン』。泰造さんは邦画ベストが『宮本から君へ』、洋画ベストが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という結果になりました。2020年もよろしくお願いします!

原田泰造とコトブキツカサ 映画好きの二人が選んだ2019年ベスト作品はこれだ!

来年はどんな作品が公開されるのでしょうか。また来年も『深掘り映画トーク』をよろしくお願いします!

(文・大谷弦、写真・林紗記)

 

PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

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