20代ミュージシャンが語る“譲れない価値観”

「21歳、成長期」シンガー・ソングライターeillが音楽に映すありのままの姿

“ジャンルレス”な21歳のシンガー・ソングライターeill(エイル)。K-POP、R&B、JAZZ、SOUL……幼いころからさまざまな音楽を聴いてきた彼女のつくる曲はどれも型にはまらない。どんな曲を聴かせてくれるのか、全く予想がつかないのだ。

ただし、彼女の音楽には15歳で歌手を志した時から一貫した軸がある。

「音楽で誰かを救いたい」

eillが音楽に傾倒(けいとう)し始めた理由もまた、音楽に救われたからだ。

音楽を通して強い女性にひかれた

「音楽に出会って、自分がどう生きていきたいのかが定まったんです。それまではどう生きていきたいのか分からなかった。周りの子たちはみんな、部活動や習い事に打ち込んだり、将来の夢があったりしたのに、私には何も熱中できることがなくて。目標を持ってる人、何かに向かって頑張っている人がとてもカッコよく見えました」

eillさん

「そんなとき、K-POPにハマって韓国のアーティストを調べるようになりました。音楽はもちろん、ファッションやコスメといった見た目、何より生き方がカッコよかった。強い女性像に憧れて、私もこんな風になりたい!と初めて目標ができたんです」

当時はかなりの音痴だったというeill。歌の練習のために聞き始めたビヨンセやアリシア・キーズの影響で、より一層“強い女性”への憧れを募らせた。eillが15歳で曲をつくり始めたのも、彼女らが自身で曲をつくっていたからだ。

また、強い女性への憧れは映画『バーレスク』『ドリームガールズ』やドラマ『グリー』など、さまざまな作品を通して、理想像がクリアになっていく。

「自分ダメだなって弱気になることが多くて。でも、そんな自分の弱さすらも全部受け入れて愛せる人が、すごくカッコよくて強い人だと思うようになった。私もありのままの姿を見せて、それを見てくれた人が同じような気持ちになってくれたらいいなと思っています」

幕開けのスイッチは自分への怒りから

2018年、デビュー曲「MAKUAKE」が音楽ファンを中心に話題を呼び、シンガー・ソングライターとして注目されたeill。だが、デビュー直前まで自作の曲が評価されないもどかしい日々を送っていたという。

「デビュー前の2~3年間は、曲をつくってはボツってを繰り返していました。それならと、別の人がつくった曲でレコーディングしたこともありましたが、自分も周りも納得いかなかった。自分から湧き出るもので曲づくりがしたいという思いが透けて見えてたんでしょうね……それなのに曲としてうまく形にすることができず、すごくもどかしい期間を過ごしていました」

「『MAKUAKE』をつくる前に、この曲ならいけるかもとつくった曲がボツったとき、目の前の道がなくなったような感覚になりました。泣きながらダンスレッスンするくらい落ち込んで(笑)。そこからふつふつと怒りの感情に変わってきました。曲がうまくつくれない自分に対して、なんでこんな思いしなきゃいけないんだと怒りが爆発してできたのが『MAKUAKE』でした」

うまくいかないことが続くと、諦めるという選択が頭の中によぎる人も多いだろう。しかし、諦めずにはい上がれるのがeillの強さだ。「自分の人生は自分でしか切り開けないのに、なんでそれができないんだ!」。この怒りが決意に変わり、10代でデビューにこぎつけることができたという。

一皮むけたことにより、強さにも磨きがかかった。曲づくりも楽しくて仕方がないと語る。

「デビューしたことでいろんな人と一緒に曲をつくっていくようになりました。詞やメロディーは自分でつくるけど、そのあとのアレンジ(編曲)作業は、プロデューサーやエンジニア、鍵盤、ギター……みんなで意見を持ち寄って、一つの曲を完成させていく。それがゲームみたいで楽しい。誰かと一緒につくることで、1人でつくるより良い曲ができることを日々学んでいます」

ありのまま、決まっていることを全部無視して曲をつくる

1人ではないからだろうか、eillの曲はいつも新しさを感じさせてくれる。各方面から“ジャンルレス”と評されるが、彼女自身はそんな風に感じたことはないと話す。

「言葉の乗せ方や転調が特殊だと言われるけど、意識してつくっているわけじゃない。ただ、自分の中で曲づくりのルールを決めないようにしています。ラップや転調を入れるタイミングって暗黙的に決まっていることがあるけど、私は全部無視してる。つくりたいものをとにかくつくって、周りの人の意見を聞いて、ポップスに仕上げている、それだけなんです」

ありのままの自由な曲がつくれるのは、これまでさまざまなジャンルの音楽に接してきた経験が生きているのかもしれない。

「音楽をやりたいと思っていた時からYouTubeがあって、検索すればどんな音楽でも聞けました。K-POP、J-POP、洋楽、世界中のどんな音楽も聞けるから、ジャンルという固定された感覚がなかったのかも。どれも音楽であることに変わりはないので」

eillさん

「eillの生き方が好き」ーー。

eillが憧れのアーティストに抱いていた感情を、自分が向けられる立場になっていた。

「きっと私のつくる曲に自分を重ね合わせてくれたんじゃないかな。自由に曲をつくりながら、自分が強くなれる曲、自分への応援歌をつくることも多くて。この曲に、私と同じような弱さを抱えている人や強くありたいと思っている人が共感したのかもしれません。それが音楽のすごいところだとも思います。自分のためにつくった曲だとしても、誰かの元気や勇気につながる。自分もそうだったから。言われる側になるのはまだ慣れないですけどね(笑)」

純粋な夢

eillにとって2019年は飛躍の年でもあった。11月には自身初となるフルアルバム『SPOTLIGHT』をリリース、12月には韓国の人気5人組ガールズグループ“EXID”のシングルで作詞作曲を務める。そんな自分自身を「21歳、成長期」と表した。

「憧れのアーティストの才能やパフォーマンスから学んで、自分の曲づくりにとり入れていきたい。韓国のアーティストのライブを見に行って口説きに行き、一緒にセッションしたこともあります。特に今一番一緒に曲づくりしたいのが韓国のラッパー・PENOMECO。音楽、ラップ、アートワークどれをとってもカッコよくて、尊敬しています。今、自分から営業をかけて猛アタック中です(笑)。

日本のアーティストでは、Official髭男dism。メロディーも歌詞もいいけど、何よりアレンジがカッコよくてポップですごく尊敬してます。アレンジの才能を吸収したい!」

成長期真っただ中なeill。最後にこれから目指すことを尋ねると、純粋な夢を笑顔で語ってくれた。

「一緒に曲をつくってくれている人たちともっと大きなステージに立ちたい。これまではそんなこと全く思ってなかった。だけど、デビューしてから大切な仲間といろんなステージを経て、大変なこと悔しいことを乗り越えながら、それでも楽しかったねって言い合う、そんな活動を1年間してきて、仲間を大きなステージに連れていきたいと思うようになりました」

「あと、すごくアニメが好きなのでアニソンも挑戦してみたいな。アニソンこそジャンルレスだし、カッコいいと思うんですよね。いつか好きな作品の主題歌を担当したい! チャンスさえあれば、声優も!」

(文・阿部裕華 編集/写真・林紗記)

プロフィール

eill(エイル)eillさん

東京出身。SOUL/R&B/K-POPをルーツに持つ新世代シンガー・ソングライター。15歳からJazz Barで歌い始め、同時にPCで作曲も始める。10代から清水翔太のコーラスやPAELLAS、SKY-HI等へ客演で参加する。Apple Music「今週のNEW ARTIST」、SPACE SHOWER「NEW FORCE」、Spincoaster「BREAKOUT 2019」、HMV「エイチオシ」に選出されるなど、大きな飛躍が期待されているアーティスト。

HP https://eill.info
Instagram  https://www.instagram.com/_eill_/?hl=ja
twitter   https://twitter.com/_eill_
staff Instagram  https://twitter.com/eill_info

ツアー情報

eill Live Tour 2020 

2020年4月29日(水・祝)
OPEN 17:30 / START 18:00
福岡 Voodoo Lounge (ゲスト有り・後日発表)

2020年5月9日(土)
OPEN 17:30 / START 18:00
名古屋ell fits all (ゲスト有り・後日発表)

2020年5月10日(日)
OPEN 17:30 / START 18:00
大阪 梅田Shangri-La (ゲスト有り・後日発表)

2020年5月17日(日)
OPEN 17:00 / START 18:00
東京 渋谷WWW X

LINE TICKET 1次先行
https://ticket.line.me/artists/10003?utm_source=Referrer&utm_content=eill
受付期間 2019/12/23 10:00AM ~ 2020/1/14 23:59迄

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PROFILE

  • 宮崎敬太

    1977年神奈川県生まれ。音楽ライター。ウェブサイト「音楽ナタリー」「BARKS」「MySpace Japan」で編集と執筆を担当。2013年に巻紗葉名義でインタビュー集『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言 (ele-king books) 』を発表した。2015年12月よりフリーランスに。柴犬を愛している。

  • 阿部裕華

    1992年生まれ、神奈川県出身。 WEBメディアのライター/編集/ディレクター/マーケッターを約2年間経験。2018年12月からフリーランスとして活動開始。ビジネスからエンタメまで幅広いジャンルでインタビュー中心に記事を執筆中。アニメ/映画/音楽/コンテンツビジネス/クリエイターにお熱。

NEOかわいいを掲げるオンナバンド・CHAI「私たち4人だから」を武器に世界へ挑む

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目標は日産スタジアム 変わり続けるポジティブ人間・眉村ちあきの譲れない信念

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