LONG LIFE DESIGN

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

長くつづく「ロングライフデザイン」をテーマとする連載の今回は、感動について、そして、最近元気な、地方で活躍するクリエーターについて。そして、最近読んでロングライフデザインに通じると感じた1冊を紹介。最後は、おばあちゃんっ子の友人を見ていて気づいたお話を書きました。

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

静岡県浜松市のみんなと。一人一人の素晴らしい点を、地方企業が面に。それを僕のような東京在住の部外者が広げていく。今や、地方と中央は事実上なくなりつつある。だからこその役割分担が見えた集まり。

 

感動するための準備

「沖縄に行ったら、どこかおすすめはありますか?」と聞かれたら、僕はひととおり商業的に好きな場所、バーとかカフェとかを教えたあと、「那覇市壺屋焼物博物館もいいよ」と伝えます。言った後で「僕は好きだけどね」と付け足す。これは「見方」の話です。

たまにがっかりされることもあります。あまりその人にとって面白くなかったようです。

要するに「見方がわからない」のです。もちろん、見方がわかれば誰でも面白がれるかという話でもないわけですが。感動するには見るポイントがわかること、もっと言えば勉強が必要です。感動ってふらっと見ただけでは、なかなか出来ないと思います。意外と何か事前に得たものが感動させていることが多いと思うのです。

僕は金城次郎という作家をきっかけに沖縄を好きになりました。金城さんのことは沖縄で商品開発をする時、沖縄らしい造形を見て回っていたときに知りました。

その土地らしい商品開発は、なにかしら「その土地に根付いているもの」を手掛かりにした方がいいと思っています。それは匂い、味、形、仕上げ、言い方、売り方、色、ツヤ、模様などいろいろあります。それはある人(作家)が土地から拾い出し、作風として表現したものが多いと思います。

だから「個人的作家の作風」と見分けられないことがよくありますが、人間国宝にもなる人とか、地域工芸や食文化を意識している人などは、やはり、伝統を意識していますから、自分らしい「土地の見方」を持ち、作品で表現していると思います。そう思って金城さんが気になり、沖縄らしい造形が気になりはじめ、その作品がある場所を調べて、壺屋焼物博物館にたどり着きました。

なので僕にとって壺屋焼物博物館は、人に勧めるに至る助走のような時間があったわけです。そこを共有したり、伝えられたなら、紹介されて初めて訪れてみた人は、ちょっとは感動してくれると思います。僕は今では壺屋焼物博物館のどこを見ても面白くて仕方ありません。

話は戻ります。僕もみなさんも「○○○に行ったら何見たらいいですか?」と人に聞くことがあるでしょう。そんな時、この話を思い出してください。つまり「見方」がわからないと面白さは伝わらないということを。僕が「沖縄らしい造形」に興味を持ったように、そこのスタート地点に立てなければ、せっかく行っても時間の無駄になるかもしれません。「どう見たらいいのか」。そこをしつこく聞かなければ意味がないのです。

僕が沖縄にハマっている理由は、説明できなくはありませんが、やはり、時間をかけて感じた「ナガオカ的沖縄の見方」があります。だから何度来ても、どこかの店などに行かなくても、部屋にずっとこもっていても、沖縄はおもしろいと感じられます。これはたまにほかの人に伝染します。すると、その人も途端に沖縄が好きになるのです。

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

大好きな沖縄。都心を離れてこうした昔からある沖縄を見ると、昔から続いているものへのリスペクトを感じる。日本の至る所では、発展を求め開発が盛んだけれど、沖縄に見る、昔から続くものを未来に繋げる意識はまだまだ少なく感じる。

 

ローカルスター

都心を離れるクリエーターが後を絶たず、様々なローカル(地方)でクリエーションが始まっています。これを東京のメディアが追いかける。それってどんな意味があるのでしょうね。

僕の結論から書きますと、そっとしておいてあげたいです。ローカルでクリエーションをするということは、都会のスピードとは違った場所で、しっかり根付く、つまり、作り手も買い手もしっかりその土地を意識していくということ。有名になって仕事をいっぱい取るとかの話ではなく、やはり「時間のスピード」への意識からその土地を選んだのだと思います。もっと言うと「健康的に過ごしやすい場所」「子育てしやすい場所」とも言えるでしょう。地方に移住したら、その様子を東京のメディアが取り上げ、中央の仕事がそこに流れこみ、結局、打ち合わせで東京出張が増えたなんていうデザイナーとか建築家を、結構見ています。

そんなローカルスターは、東京のメディアにちやほやされてもその土地を動いたりはしません。彼らには「その土地とのつながり」があり、その緩やかな自分のペースを持続できるからこそのクリエーションだという自覚があるからです。

これを書きながら思うのは、「自分のペース」に対する考えです。僕が静岡に住んだのは、東京の異常に速いスピードが辛かったからで、沖縄に部屋を借りているのは、心の支え。まさに完全に外界をシャットアウトするための避難場所にするためです。

静岡に引っ越してからは、住民票も移して、東京に用事があったらそこから通おうと思っていました。少し、東京を意識した位置として選びましたが、現実は月に4日くらいしか帰れず、半ば別荘……(汗)。東京のスピード感は、やはりその場から離れられなくします。

たまにローカルでデザインをしている友人を訪ねると、本当にうらやましい生活をしています。自然があり、家賃が安く、ゆっくりとした時間があり、誘惑が少なく、過剰に格好をつけなくてもやっていける。所得は少なくなるかもしれませんが、引き換えに、これらを手に入れられたのです。

気持ちのいい環境で、その土地で長く続いていることにコミットして、それを健やかに進化させていく、そうしたローカルスターたち。彼らをそっとしておいてあげることが、日本のクオリティーを上げることにつながるように思います。

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

上は長野県で活躍する東野さん率いる、リビルディングセンタージャパン。
下は山形県で活躍する映画監督の渡辺さんと、歌手の白崎さん。

 

ロングライフデザインを学べる本

『接客は利休に学べ』(小早川護著・WAVE出版)という本を読みました。著者の小早川さんは、大手旅行会社創業者の父と、茶道・裏千家師範の母に育てられ、様々な職業を経て、茶道にある「もてなし」をコンサルティングに取り入れた独自の指導法をあみだした方です。今、僕も「千利休」にはまっていることから、この本を知り、読み終えました。以下は読みながら考えたことです。

【三服の茶】
夏場のもてなしで、一杯目はとにかく飲み干せるものを、二杯目は少し味わいやすいもの。三杯目はしっかり味わえるものという、石田三成と豊臣秀吉の出会いのエピソードとして知られている「三服の茶」の話が出ていました。自分の会社でも打ち合わせの際、会議室のお客さんにお茶を出していますが、最初の一杯と、そのおかわりとして継ぎ足すくらいしかしていないなぁと、これを読んでやってみようと思いました。手間のかかることですが……。

【利休七則】
利休は弟子から「どうしたらもてなしが上手になるのか」と聞かれ、茶は服(ふく)のよきように、炭(すみ)は湯の沸(わ)くように、夏は涼(すず)しく冬は暖(あたた)かに、花は野にあるように、刻限は早めに、降(ふ)らずとも雨の用意、相客(あいきゃく)に心せよ。と書かれていました。詳しくは同書をお読みください。

これらは「基本中の基本」らしく、弟子が「そんな当たり前のことはわかっています」と反論したそうです。そのたびに利休は「それがあなたにできるなら私はあなたの弟子になりましょう」と言ったとか。つまり「基本」はわかっているだけではだめで、それを完璧にするのは相当難しいということでした。また、基本と言われていることをしっかりこなし続けた中に、その先が見えてきます、とも。

【お客さんの来店目的をよくよく考えよ】
この『接客は利休に学べ』は、現代の話に利休の思想をかぶせ、劇画風に話が進みます(こういうの、苦手な人いると思いますが……)。

ある章から引用します。唐突ですが、ついてきてください(笑)。利休は、あるお店のもてなしのコンサルタントの役。その利休のセリフに、僕はかなりガーンときました。日々、そのことを考えられていなかったからです。

「お客さんには『目的』がある」。そうだよなぁと思いました。その「目的」を意識も考えもせずに、ひたすらこちら側の都合(つまり、売りたいものを薦める)で接客してしまうことがあります。

この本では、「接客は対話」であると言い切っています。クレームについての章もあり、そこでも「どうして怒っているのか」を丁寧に聞き出しています。ただ、ひたすらに謝っても、相手の怒りはおさまらないのです。また、サービスの意図をちらりとでも伝えることが大切とも。対話するだけで、「気が利(き)く」と感じてもらえるという話です。マニュアルを捨てよという章もありました。対話がなくなり、人間としての接客がなくなってしまうのはダメということです。

最後に、ホテルと旅館の話が出てきました。これから「d news(d hotel)」をやっていく上で、そうしなければと薄々感じていたことでした。

ホテルにはスタッフそれぞれに持ち場があります。ドアマン、フロントマン、清掃係など。一方、旅館では仲居さんが案内から布団を敷くことまでやってくれます。何か用事ができた時に、誰に言えばいいのかはっきりしているのは、とても安心できることです。チェジュ島の宿泊付き店舗「d news」は17室くらいありますが、この「仲居さん」でやってみたいと思います。

店舗でもよく似たことが言えます。東京でいい店というと「内装や話題の店」を指しますが、大阪で同じことを聞くと「おもろいおっちゃんのいる店」となります。大阪があったかい街だと言われているのは、やはり「あそこに行くと、あの人がいる」という基本で作られた街のスケールがあるからだと思います。

どの「d news」にも、支配人が「ちゃんと」いるようにします。少し料金は高くなってしまいますが、部屋数をなるべくヒューマンスケールに収めて対話を欠かさずやってみようと思います。

ながくつづくの話 おばあちゃんっ子の友人を見ていて考えたこと

 

おばあちゃん

僕の知り合いに、おばあちゃんが大好きな人がいます。ある日、そんな彼を見ていて、その「穏やかさ」は、おばあちゃんの影響からきているのではないかと思うようになりました。

僕の母も80歳。立派なおばあちゃん。動きが遅く、耳が遠く、左足が痛くて不自由。欲がなく、ささいなことに反応し、喜んだり悲しんだりします。母と過ごしていると、その彼のような気持ちになります。母なのですが「おばあちゃん」扱いすることで、自分も少し優しくなっているように思うのです。

人は子供やお年寄りを、他の同年代の友達や会社の先輩などとは違う扱いをします。これって赤ちゃんに接したり、動物に接したりする時のような、特別な感情です。

十数年前から、他人と暮らすシェアハウスみたいな発想がありますね。お年寄りと暮らすとか、子供がいる家族と過ごすシェアもあります。それは優しさに関係することだと思います。自分より明らかに弱い人間に対して、守ってあげたり、思いやったりする。その気持ちが自分にも返ってくる。

おばあちゃんの話ではありませんが、先日、こんなことがありました。僕の母は、僕が静岡の家に1人で帰ってくると、「晩御飯作ったけれど、食べないか」「朝食、作ったけど、いらんか」「今日は何時に帰るんだ」……、とにかく干渉してきます。ある日、早朝まで仕事をしてやっと眠れると布団に入ると、ドンドンと外から戸を叩く音。「朝ごはん作ったから食べなさい」と。ちょっと疲れていたこともあって、つい「ほっといてくれないか」と、きつく言ってしまいました。母は逆ギレして「人が心配してるのに、なんだ、その口答えは」と。そして、プイッと自分の家に帰っていきました。

僕はと言うと「これで、やっと干渉されずに自分のペースで暮らせる」と、一つの屋根の下で暮らす二世帯住居の難しさを思い、ホッとしました。しかし、時間が経つにつれ、悪いことをしてしまったかなぁという思いになり、妻に相談すると「それは、親だもの、しょうがない。親ってそういうものでしょ」と。これには正直、参りました。その通りです。

母に何かがあったら、おそらく飛んでいくと思います。そういう気持ちが、両者の間にあるって、なんだか人間をあたたかくすると思うのです。

実際、人間はとっても面倒くさい生き物だと思います。だからこそ、学ぶものがある。咄嗟(とっさ)に頭にきても、しばらく時間が経つと本当の自分がひょっこり現れて、「さっきはそう言ったけれど、本当は違うんだよね」と反省したりする。

長く一緒にいるという前提があるからこその話かもしれませんが、だからこそ、全ての人との関係を「長く一緒にこれからも生きる」ことを前提としたら、なかなか楽しい人生になるかもしれません。

おばあちゃんっ子の彼は、やはり、圧倒的に「優しい」のです。そんな彼を見ていると、おばあちゃんの存在が羨ましくも思え、自分の母を思うことにつながっていくのでした。

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恥ずかしながら、僕の両親。とても尊敬しています。

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PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2ヶ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

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