私の一枚

中村ゆりの“人生のご褒美”は、スキューバダイビングとお酒の時間

注目のアーティストや俳優の皆さんに、大切な写真を見せていただきながらインタビューする連載。今回は主演ドラマの放送が始まったばかりの中村ゆりさんに、人生のご褒美だと感じられる時間の過ごし方について聞きました。

中村ゆり

いろいろ考え込んだり悩んだりして自分の気持ちがダメな回路に入ってしまいそうな時、時間を作り、大好きな沖縄や、色々な場所の海に入るようにします。初めて潜ったのは2003年。俳優として生きていく覚悟がまだ定まらずに苦しんでいた時期でした。誰からも相手にされないんじゃないかとマイナスなことばかり考えて内にこもっていた時に、沖縄好きが高じて石垣島に移住した友達に誘われたんです。

運動もあまりしてこなかったし、アクティブな楽しみをまったく知らなかったので、正直に言うと最初はすごく嫌でした。「朝起きたら風邪ひいてないかな」って思うぐらい(笑)。でも潜ってみたら、自分でもびっくりするぐらいに感動しました。世界が広がったというか、心が浄化されたというか、憑(つ)き物が落ちたというか。その夜に見上げた空も、今まで見たことがないほど無数の星がまたたいていて、よくある表現ですけど、自分はちっぽけだなって思いましたね。自然という、自分の力が及ばない世界を体感したことで、現実から離れて何かをする時間や人生を楽しむ時間がいかに大事かということに気づきました。

何もできない自分を感じたことが今の仕事に生きている

デビューは15歳の時。アイドルユニットとしてのスタートでした。まだ子供だったので自分が何をやりたいのかもわからなかったし、漠然と上京して芸能界に入って、「無理しているな」と自分で感じながら、大人がセッティングしてくれた環境の中で仕事をしていました。子供なりに「期待にはきちんと応えねば」と思いながら、今の状況は恵まれているんだ、これを頑張った後にはきっと何かいいことがあるんだ、と考えるようにして。

でも、うまくいかずユニットは解散して一人になりました。それから何年かは、それまでの人生で一番、自分の無力さに恐怖を感じた時期でした。なぜかというと、自分にできることが何もないんです。アルバイトをしてもレジ打ち一つできない。年下の子に教えてもらう今の自分の現実を知ったし、ふと芸能界から離れてみると、社会に適応できていないことを身に染みて感じました。

でも、自分に何もないことを感じたあの何年かがあって本当によかったと思います。もしアイドルとしてそこそこうまくいっていたとしたら芸能界しか知らない人生を送っていただろうし、何百円かの時給をもらうことがどれだけ大変かを知ることができたことは、今の仕事にとても生きていると思います。

地元の友人たちがわざわざチケットを買って、私の舞台を見に来てくれることがあります。1万円近いチケットを買ってくれるって、とても大きなことですよね。生活の中で芝居を観るためにこれだけお金を使ってくれていると思うと、本当にありがたいなと思います。もちろん、友人だけではなく、お客さん一人ひとりがそうして来てくださるわけだから、大げさかもしれないけれど、自分の命を削ってでも必死に、緊張感を持ってやらなきゃいけない。ずっとそう思っています。

中村ゆり

ドラマ、映画、舞台と話題作への出演が続く中村ゆりさん

周りの心地よさを考えることで自分の居心地も変わる

いろいろな役柄を演じさせてもらっていますが、「いつまで新人気分でいるの?」って自分でも思うぐらい毎回緊張します。結局は準備不足が余計に緊張を生むということもわかっているので、しっかり準備することしか緊張に打ち勝つ方法はないとも思うようになってきました。

一方で、年下の役者さんと共演する機会も多くなってきたことで、自分が若い頃、こういう言葉をかけてもらえると嬉しかったな、緊張がほぐれたなということを、今の年齢になって周りの人に対してすごく考えるようになりました。

若い頃は私もけっこう“閉ざし系”で、「現場では人としゃべる必要なんてない、仕事なんだし」なんて思っていましたけど、今は一緒に仕事をする人たちと話をして、楽しいと思ってもらえるのがうれしい。相手の心地よさを考えることで、意外と自分も心地よくなったりもします。現場では相変わらず緊張はするけれど、気持ちは楽になってきたかもしれません。

旅が非日常のご褒美だとしたら、日常のご褒美は「お酒」

1月6日深夜から放送が始まった『今夜はコの字で』というドラマも、まさに年下の子とのやりとりのお話です。会社の中でうまくやれない後輩男子をコの字カウンターがある大衆居酒屋に連れ出して、昔ながらの文化に触れさせながら気持ちを変えてあげるんです。私も昔はぜんぜんお酒が飲めませんでしたけど、酒飲みの友人が多いせいで自然と鍛えられちゃって、今ではお酒の時間が大好き。だから「この仕事ありがとう」って思いながら演じています(笑)。

中村ゆりの“人生のご褒美”は、スキューバダイビングとお酒の時間

民放連ドラ初主演となるドラマ『今夜はコの字で』は2020年1月6日深夜からスタート

古臭いかもしれないですけど、“飲みニュケーション”みたいなものってすごく大事だと思うんですよね。たまにみんなで飲んで他愛もない話をする時間って、もしかしたら私にとっては旅行と同じぐらいの人生のご褒美かもしれない。旅行が非日常のご褒美だとしたら、みんなとお酒を飲む時間は日常のご褒美。そのぐらい、大好きな時間です。

      ◇

なかむら・ゆり 大阪府生まれ。2003年に俳優デビュー。2007年に映画『パッチギ!LOVE&PEACE』でヒロイン・キョンジャ役に抜擢され、同年の全国映連賞女優賞、第3回おおさかシネマフェスティバル新人賞を受賞。以来、映画やTVドラマ、TVCM、舞台などに多数出演。ドラマ『今夜はコの字で』はBSテレ東にて2020年1月6日より毎週月曜深夜0時から放送中。

『今夜はコの字で』公式サイト
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/konoji/

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PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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