小川フミオのモーターカー

お手本は米ジープ ぎゅっとコンパクトにした「軽の4WD」初代ジムニー

スズキはぎゅっとコンパクトにするのが得意なメーカーだ。スタイルは本格的なクロスカントリー型4WDだが、サイズは軽規格。おかげで、欧州でも林道などで重宝されていると聞く。その源泉をたどると、1970年発表の初代ジムニーに行き着く。

(TOP画像:軍用車的な雰囲気もあるがメーカーではレジャーブームで需要があてこめると踏んでいた)

初代ジムニーは、当時このクルマの企画の旗振り役だった鈴木修氏(現・スズキ株式会社会長)が「よいお手本になった」としているだけあって、米国のジープによく似ている。サイズをぎゅっと縮めたようだ。

理由は簡単。ほとんど面にカーブをつけていない平板にすればコストが下がるし、組み付け精度が多少あまくてもおかしくない。機能主義の権化のようなクルマなのだ。

76年には550ccに排気量が拡大された

76年には550ccに排気量が拡大された

初代ジムニーにはベースになったクルマが存在する。1950年代に「ホープスター」という前1輪、後2輪のオート三輪を製造していたホープ自動車が60年代に発売した「ON」型である。

スズキがエンジンを提供していた「軽のオフロード車」ON型は、性能が高く、市場での可能性をおおいに秘めていると、鈴木修氏の目には映ったらしい。

はたして、戦後の経済成長期に大量生産の体制がとれず、波に出遅れたホープ自動車の社長を口説いて、製造権を譲り受けるのに成功。

内外の手直しとともに、ホープ自動車では67万円だった価格を50万円前後に抑えた価格で「ジムニー」として売り出したのが70年のことだった。

800ccのジムニー8にはドアがつき、ロールオーバーバーなど、2代目につながるデザインが見受けられる

800ccのジムニー8にはドアがつき、ロールオーバーバーなど、2代目につながるデザインが見受けられる

360cc2ストローク2気筒でスタート。やがて550cc3気筒へと排気量を拡大し、81年までのモデルライフの後半には800ccの「ジムニー8」なる車種も投入された。

ボディーは、本家ジープと同様、薄い幌(ほろ)だけの、いわばなんにもついていないクルマだった。ドアもついていない。同時に、車重600キロの車体に2ストロークエンジンの組み合わせは、瞬発力があり、軽快だった。そのためトライアル競技にも使われたほどだ。

はたして社内の反対を押し切っての発売は大成功だったようで、以降、ジムニーは今日まで続くスズキの代表車種のひとつと数えられるまでになった。スタイルだけでなく、性能がきちんとしているのもジムニー・シリーズが長命を保っている理由だ。

72年にジムニーバンが追加された

72年にジムニーバンが追加された

街中で乗るには忍耐力も必要だけれど、小さな4WDを本当に求めている人がいる。そこに向けて製品を出すのも、クルマのメーカーの使命のようなものかもしれない。ゆえに、全長3メートルを切るミニサイズのくせして、ジムニーの存在感が大きいのだろう。
(写真=スズキ提供)

【スペックス】
車名 スズキ・ジムニー
全長×全幅×全高 2995×1295×1670mm
359cc直列2気筒2ストローク 4WD
最高出力 27ps@6000rpm
最大トルク 3.7kgm@5000rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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