インタビュー

iri、25歳 葛藤の先に見える成長

1月22日にシングル『24-25』を発売するシンガー・ソングライターのiri。低音でクールな存在感のある声に、彼女の内側から溢れる歌詞が織りなすジャンルレスな音楽は聴くものの心を魅了してやまない。近年では宇多田ヒカルや椎名林檎などと肩を並べ「井上陽水トリビュート」へ参加するなど、その活躍はめざましい。

前作のアルバム『Shade』では自身の影や暗い部分を前面に出したという彼女。今作では自分の中にある葛藤と真正面から向き合った。24歳から25歳。大人だけどまだ子供でいたい。そんな気持ちの間(はざま)に揺れ、悩みながら前に進み続ける25歳のiriに、これまでと、そしてこれからのなりたい自分像について聞いた。

『Shade』

周りとのズレを感じる時がある、でもそれが自分

「あれ、もう25歳だっけ……という、年をとることに対してのちょっとした不安、まだ若くいたいという気持ちがあります。大人のスタートラインに立ったのに、まだ24歳を少し引きずっていて……。今でも頭の中は中学生のまんまですし(笑)」

新曲のタイトルに「24」を残した理由についてiriは語る。なぜか人は年齢を四捨五入してしまう。25歳は30歳に。いよいよ自分ももう大人、と感じる人も少なくはないだろう。

「周りの同級生や同世代の人たちと話していると、みんなしっかりしているなと感じます。いつまでに結婚して、子供を産んで、という今後の人生プランを明確に計画して。そういう話を聞くと、自分はものすごくいい加減だし、もうちょっと大人にならないといけないのかな、と」

「でも……これが自分だし、このままでいいんじゃないかな。無理して生きるのはつらいから」と、つぶやくように彼女は話す。

幼少の頃から周囲の輪に入ることが苦手で、それがコンプレックスだった。でも、大人になるにつれて、周りとずれている自分を徐々に受け入れられるようになった。

今では、世間で流行(はや)っているファッションを人気だからと取り入れることもなければ、「25歳の女性はかくあるべき」という社会が求めるステレオタイプな女性像に共感することもない。渋谷の街を歩いていても、自分の周りには、自分だけの空間があるように感じる。

他人との違いやありのままの自分を認めた表れか、iriの周りには自由で穏やかな空気が流れる。それは彼女の憧れの大人像にも重なる。

「大人になりきれない大人になりたい。子供心、遊び心を持っていて、落ち着いているけど計算しすぎない人。海外だと、プリンセス・ノキアというラッパーが好きです。人生を何にもとらわれずに自由に楽しんでいるのが全面に出ていて、いいなって思います」

世間の流行ではなく、自分の直感を大事にしたい

25歳を迎え、音楽活動との向き合い方にも変化が出た。

「深く考えるようになったというか、細かいところまで自分でやろうと思うようになりました。一時期、トラックメーカーと一緒にやっていたときも、もらったトラックに歌を乗せて完成させることが多かったんです。けど今はトラックも細かい音色やバランスまでを詰めるようになった。ライブも理想のスタイルをもっと追求したい」

だが、理想を追い求める気持ちにブレーキがかかることもある。原因はここでも「ズレ」。自分に対する世間のイメージや周囲からの期待に絡め取られてしまう。

「私は『新進気鋭のアーティスト』と紹介されることが多いのですが、最先端の音楽がめちゃくちゃ好きなわけでもないし、新しいサウンドばかりを追求しているわけでもありません。新しいものを作り出したいけれど、常にそれを求められるのは苦しい」

「曲作りについても、歌詞を直感でバーッと書いてしまうことが多いのですが、それがリスナーに伝わる表現になっているかはわからなくて。聴いた時にすぐわかるようにしたほうが売れるのかなとか。自分の思いがみんなに伝わっているのかな、とか悩みます」

自信は常にないらしい。だから悩む。時間をかけて冷静に自分を見つめると、答えは見えてきた。

「でも、そのズレたところにiriらしさというものがあるとも思います。周囲に求められている自分になるのではなく、自分の好きなものをどんどん追求して、その成分を濃くしていくのがカッコいい。だから私は、自分の直感を大事にしたいと思います」

iri、25歳 葛藤の先に見える成長

新曲には、自分の中の葛藤に向き合いなりたい自分になる、という思いを込めた。サビでは「ずっとずれてきた 24-5 years」と繰り返し歌われる。

「『24-25』をアッパーな踊れる曲としてとらえる人もいるだろうし、歌詞を聴いて、背中を押される人もいるかもしれない。聴いた人がどんな印象を受けるのか、好んでくれるのかとか不安だけど、自分を削り取って出てきた言葉とメロディーとイメージだから、みんなもこの曲を愛してくれるだろうと信じている、信じようと思います」

自分の直感を信じ、そんな自分の音楽を好きでいてくれるリスナーを信じるiri。音楽に対して、そして自分に対して誠実な彼女は、自身を口下手だと称しつつも、インタビューの質問一つ一つに、ゆっくりと自分の中にある言葉を探し出すように答えてくれた。

「自分の感覚が世間一般と違うと感じることはあるけど、みんなそれぞれズレていると思う」

彼女の言葉通り、みんなそれぞれの軸を持って生活している。しかし環境に合わせた格好や振る舞いを優先し、自分の心の内を抑え大勢でいることへの安心感を追い求めてしまっているのではないか。
ずっとズレてきた、だがそのズレを貫き通す、彼女の凛とした姿がまぶしく思えた。

iri、25歳 葛藤の先に見える成長

スタイリスト・入江陽子(TRON)、 ヘア&メイク・クジ メグミ(LUCK HAIR)
(文/写真・林紗記 編集・下元陽)

リリース情報

『24-25』

発売日:2020年1月22日(日)

iri、25歳 葛藤の先に見える成長

【収録内容】

M.1 24-25 
M.2 SUMMER END
M.3 Wonderland(Seiho Remix)

・完全生産限定盤(CD+Tシャツ)
価格:4100円+税(紙ジャケ仕様)

・通常盤(CD)
価格:1100円+税(初回生産分のみ紙ジャケ仕様)

・7インチアナログ 『24-25/SUMMER END』
価格:2000円+税

 

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