小川フミオのモーターカー

米映画『フォードvsフェラーリ』に登場 理詰めのスタイリング「フォードGT」

最近、米映画は1960年代を舞台にしたものが多い。モータースポーツの分野でも、66年の「フォードGT」が登場する『フォードvsフェラーリ』(2019年)がある。日本の劇場では2020年1月10日より公開中だ。

(TOP画像:485馬力の6997ccV型8気筒エンジンをミドシップしたマークⅡ。写真はセブリングでダン・ガーニーらが乗った車体をきれいにしたものと思われる)

フォードGTは、史上最も有名なスポーツカーの一台だ。レースでの活躍が若者にアピールすると考えたフォード上層部が「デイトナやルマンの24時間レースで圧倒的に強かったフェラーリをライバルに据えたクルマを」と開発したものだ。

映画にもあるように、何が魅力的かというと、このクルマにまつわるドラマだろう。

ケン・マイルズらが乗った写真のマークⅡは66年のルマンで優勝を目の前にしながら、いくつかのレース運営上のトラブルで2位になってしまった

ケン・マイルズらが乗った写真のマークⅡは66年のルマンで優勝を目の前にしながら、いくつかのレース運営上のトラブルで2位になってしまった

欧州でのスポーツカーレースの経験がなかったフォード・モーターカンパニーとその一派が、フェラーリ(後にはポルシェ)と互角に渡り合うべく、設計者、製造者、レーシングチーム、ドライバーなどを巻き込んで繰り広げた人間臭いドラマである。

そこには、エンジン開発をはじめ、シャシーやサスペンションやブレーキの開発、さらに車体のデザインが含まれる。数多くの人が、フォード本社の号令のもと、最善を尽くしたのだ。

66年ルマンで優勝することになったブルース・マクラーレンらのマークⅡ

66年ルマンで優勝することになったブルース・マクラーレンらのマークⅡ

スタイリングは好みが分かれるところだ。私は、GTのライバルだったフェラーリP3やP4の流麗なラインのほうが好みで、当時、英国フォードにいたロイ・ランが率いるチームによるGTのスタイリングは理詰めすぎるようにも思える。

とはいっても、説得力のあるカタチだ。風を徹底的に研究して作られた。エンジンの効率良い冷却と、高速でも車体が浮き上がらないようダウンフォース効果など、全てレースで勝つために考え抜かれている。

本当の意味でデザイン(設計)されているのだ。無駄に開けられた開口部はないし、スタイリストが思いつきで付け加えたラインもない。サーキットで最高の性能を発揮するために作られていることが、見た目にも大きなインパクトを与える。

夜をまたぐ耐久レースでは車体の識別が大事なので個体ごとに明確に塗り分けがされていた

夜をまたぐ耐久レースでは車体の識別が大事なので個体ごとに明確に塗り分けがされていた

目標としたスポーツカーレースでは、65年のデイトナ2000キロでの優勝を皮切りに、66年のデイトナ24時間、セブリング12時間、ルマン24時間、67年のセブリング12時間、ルマン24時間と好成績をものにした。

ここでとり上げているのは、66年のGTマークⅡだ。上記のことを勘案すると、フォードGTを代表するモデルといえるからだ。GT40はごく簡単にいうと排気量4.7リッターエンジン搭載モデルで、66年と67年のルマンで優勝した7リッターのフォードGTとは別のクルマとなる(レースの規則が変わったあとの68年と69年のルマンはGT40が優勝)。

66年ルマン24時間レースのフォードのピット(左がケン・マイルズら、右がブルース・マクラーレンらの車両)

66年ルマン24時間レースのフォードのピット(左がケン・マイルズら、右がブルース・マクラーレンらの車両)

フォードは67年に2連覇したあとレースからいちおう手を引く。でもそのあとポルシェが台頭してくるまでの2年間の好成績をみると、たいした“財産”を残していってくれたといえる。ルマン連覇を成し遂げた偉業は自動車界の伝説だ。映画がそうクルマを知らないひとたちにもウケたのは、このクルマがマーケティングから生まれ、やがて情熱のなかで成長していったさまを描いていたからではないだろうか。

フェラーリなどとはだいぶ異なる直線的なシェイプがフォードGTの特徴

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(写真=Ford提供)

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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