MY KICKS

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

今や、スニーカーは私たちの生活に欠かすことの出来ない“生活必需品”。どんな人にも愛着のある一足があり、そこには多くのこだわり、思い出、物語が詰まっているはず。本コラムでは、様々なスニーカー好きたちが「MY KICKS(=私の1足)」をテーマに語り尽くす。

蒲谷健太郎かばや けんたろう)さん
1976年東京生まれ。スタイリストを経て、ファッションブランド「BAL」のデザイナー、DJ。アメリカやヨーロッパのサブカルチャーに造詣(ぞうけい)が深く、その幅広い知識はBALのウェアだけでなく、自身のスニーカーのセレクト、クラブでの選曲にも反映されている。趣味は食べ歩きと料理で、現在ファッション&カルチャーメディア「Mastered」にてグルメコラム「うますぎる店」を連載中。

一口に「スニーカー」といっても、ランニング、バスケットボール、スケートボード、トレイル用、そしてファッションに特化したものなど用途は様々だ。国内外のスポーツメーカーはもちろん、一流メゾンが手がける高級スニーカーから、ロードサイドの靴量販店に並ぶウォーキング用“ダッド”シューズまで、価格やターゲットも幅広い。ファッションブランド「BAL」デザイナーの蒲谷健太郎さんは、そんな世にあまたあるスニーカーをフラットな視点で見つめるスニーカーファンの一人だ。

「気に入れば、値段、人気、ジャンル関係なく、どんなスニーカーでも履きます」――そう話す蒲谷さんが強い影響を受けているのは、90年代のアメリカで盛り上がった「クロス・カルチャー」ムーブメントだという。

当時のアメリカの音楽やファッションのシーンでは、異なるジャンルが相互に影響を与え合っていました。今では当たり前になっているヒップホップ・ファッションのスケーターやオーバーサイズの服を着るハードコアの人たちを目にして、とても新鮮に感じたのを覚えています。当時の僕は、アメカジもスケートボードもヒップホップも同じくらい好きで『どれか一つを選ぶなんてとうてい無理だ』と考えていました。ですから自分が好きなものを自由にミックスして着こなすスタイルが、すごくしっくりきたんです。僕が“雑食”スニーカーファンとなるルーツと言って良いかもしれない」(蒲谷さん)

雑食が選ぶ一足 ヨーロッパ別注のサロモンの魅力

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

SALOMONとTHE BROKEN ARMのコラボレーションで生まれた「S/LAB XT-4 FOR TBA」

ミタスニーカーズのクリエイティブディレクター・国井栄之さんとのタッグでリーボックの別注モデルをデザインするなど、「作る側」としてもスニーカーに関わってきた蒲谷さん。大手スポーツメーカーが避けたがるデザインについては熟知しているため、非常識だったり、新しいことをやろうという意気込みが感じられるデザインにはひかれるのだとか。そんな蒲谷さんの最近のお気に入りは、フランスのスポーツメーカー・サロモンのトレイルランニングシューズ「S Lab XT-4」。ファッション性と機能性を両立したライン「アドバンスド」シリーズで展開されているモデルで、フランスの人気セレクトショップ<ブロークンアーム>の別注カラーだ。

「とにかくたくさんのトレンドが詰まっているスニーカーです。サロモンは、最近ファッションの世界で注目が集まっている、2000年代にシュプリームでセレクトされていたメーカー。さらに少し前からスニーカーのシーンではトレイルランニングシューズが良いムードだったりもします。ただ、僕がひかれたのは、この“あり得ない配色”ですね」(蒲谷さん)

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

シューレースを引くだけで均一にホールドできる「QUICKLACE™」と呼ばれるシューレースシステムを採用

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

アウトソールにはサロモンが独自開発したグリップ力と耐久性に優れたソール「CONTAGRIP®」を搭載

アメリカとヨーロッパで異なる“スニーカーの美意識”

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

80年代後半からヨーロッパで盛り上がったレイブカルチャーをイメージさせるレインボーカラー。トゥーからヒールにかけて赤から緑へのグラデーションになっている

ブロークンアームは、トレイルランニング用シューズであるS Lab XT-4のアウトソールを黒に変更し、ミッドソールを白主体にすることで、ランニングシューズ風に見せている。が、やはり目を引くのは、サイドの華やかな配色。グラデーションの採用によって、前後左右どこから見ても印象が異なる不思議な一足に仕上がっている。蒲谷さんによれば、このカラーリングは「ヨーロッパっぽい」のだそうだ。

実はアメリカとヨーロッパでは、スニーカー配色の傾向が違います。ナイキ・ダンクのネイビー&イエローやエアジョーダン1のブラック&レッドといったカラーリングが典型的ですが、アメリカは色使いのコントラストが鮮烈で分かりやすい。対してヨーロッパは、ピンクや中間色を多用したりと配色が直球ではない。90年代後半くらいのUKのOFF SPRINGやJD-SPORTSが別注をかけたニューバランス576などを見るとイメージしやすいはずですが、アメリカのスニーカーを見慣れている人は少し抵抗を感じるかも(笑)。そんな中でも、このブロークンアーム別注のサロモンはひときわ挑戦的ですね。赤と緑をグラデーションでつなぐという配色は見たことがない」(蒲谷さん)

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

前面から見ると、レッド×ホワイト

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

後ろから見るとグリーン×ホワイト

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

さらに内側のミッドソールはブルー。「ここにこの色を置くのかと驚きました」と蒲谷さん

スニーカーは常に変化を続ける自分の感性を反映する存在

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

「スニーカーはあくまで履くためのもの」という考えもあって、所有する数は、常時200足前後に抑えているという

S Lab XT-4をきっかけに、昨年だけでブロークンアーム別注のサロモンを5足購入したばかりという蒲谷さん。だが今は登山ブーツ系のスニーカーを次々に買っているというから、気持ちの切り替えが早い。

蒲谷さん、そしてBALのベースとなっているのは、様々なサブカルチャーをミックスする「クロス・カルチャー」ムーブメントだ。とはいえ、何をどのようにブレンドすべきかは、ファッションや音楽の世界で、そして蒲谷さんの中で刻一刻と変化する。だからこそ常に新鮮な情報に触れ、感性を更新する必要がある。スニーカーの購入もその一部ということなのだろう。蒲谷さんが一貫して目指しているのは「モダンでありながら、トレンドのど真ん中とはちょっとだけ違う服」だという

「僕は中学1年のとき、当時流行っていたニューバランス『576』を避けて、あえて似た感じのサッカニー『シャドウ』を買うことにしたんです。周りに履いている人がいなかったから。下北沢のマリオ(※老舗スポーツショップ)から家に帰る途中『俺は王道とはちょっと違うものを選ぶんだぜ』と誇らしい気分になったのを覚えています。あまのじゃくといえばそれまでなんですが、あれから僕は変わっていない。BALの服でも、そういう感動が与えられたら良いなと思っています」(蒲谷さん)

蒲谷さんは「スニーカーを買わなくなったら、僕のデザイナー人生も終わり」と言い切る。蒲谷さんの足元は変化を続けながら、絶妙なバランスを提示するBALの今を反映しているからだ。現在、BALは来季のコレクションの準備と並行して、数年先の発表を見据えて新たなプロジェクトにも着手するなど、精力的な活動を続けている。蒲谷さんのスニーカーまみれの人生はまだまだ続きそうだ。

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

右もブロークンアームの別注モデル「XT-QUEST FOR TBA」。どちらも一見派手だが、履いてみると意外に合わせやすいとのこと

アメリカとは違う欧州スニーカーの美意識が詰まったファッションブランド<BAL>デザイナーがほれ込むサロモン

「ここ数年、ヨーロッパの不良カルチャーが新鮮に感じられます。フランス生まれで、フランスのショップが別注をかけたサロモンは、今の気分を象徴している一足なんです」(蒲谷さん)

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取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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