小川フミオのモーターカー

ベースは軽商用車 “レジャー時代のパーソナルカー” ダイハツ・フェローバギィ

クルマはサイズが大きく社会的な道具なので、環境保全や他者の安全への配慮が特に求められる。それを承知の上であえていうと、ダイハツが「フェローバギィ」を発売した1970年ごろは、規制が緩くて、楽しい時代だった。

(TOP写真:フェローバギィ「スピード」)

1964年に米国でブルース・メイヤーズという人が、フォルクスワーゲン・ビートルをベースに作った砂漠や砂浜で乗るバギー「マンクス」の人気を横目で見ながらの企画だろう。

軽商用車のフェローピックアップをベースに、合成樹脂製の2人乗りオープンボディーを載せたモデルで、1968年の東京モーターショーで発表され、70年に100台が限定発売された。

ボディータイプは「スピード」「ビーチ」「カントリー」の三つ。違いは、フロントグリル、ボディーのリアビューミラー、乗員背後のロールオーバーバーの形状ぐらいで、はっきりいって大きな差はない。

とはいえ、企画としては、見るべきところがある。最大の特長は、全長2995ミリとたいへんコンパクトなボディーサイズだ。車重は440キロしかない。

フェローバギィ「ビーチ」

フェローバギィ「ビーチ」

356ccと、当時のフェラーリの12気筒エンジンの1気筒(365cc)にも満たない小さな排気量だけれど、2ストロークだから瞬発力もあり、それなりに軽快に走っただろう。

フェローバギィは、当時の日本では「軽トラック」だったが、当時は「レジャー時代のパーソナルカー」とメーカーでは位置づけていた。ドアはなく、幌(ほろ)は脱着式の簡便なタイプのみ。発表された2月の時点では寒々しかったのではと想像されるが、発売は春めく4月だった。

欧州にある「ビーチカー」というジャンルに属するクルマだ。ボートのように合成樹脂を使ってサビないボディー(シャシーはサビるが)と、全長3メートルに満たないコンパクトさゆえ、海のそばで使うのに向いている。

当初はダイハツの開発陣も、スポーティーな「フェローSS」のパーツを流用するなどして、ファンカー(楽しむために乗るクルマ)の要素を強調していた。でも市販モデルは「トラック」として登録されてしまい、パーツも普通のフェローのものとなった。

フェローバギィ「カントリー」

フェローバギィ「カントリー」

私は当時プラモデルでこのクルマを知り、好きになった。車輪がむき出しで、丸形ヘッドランプが目立ち、そしてフェンダーがうねって二つの山を作っている。オープンボディーに加えて、力強さを感じさせるデザイン要素が刺激的だったのだ。車体色も派手でよかった。

私は現代もフェローバギィのようなクルマがあってもいいと思っている。もう少し内装に手をかけて洒落(しゃれ)た雰囲気のビーチカーなんてどうだろう。日本は約3万4千キロにおよぶ海岸線を持っているのだ。海のちかくの暮らしで重宝されるかもしれない。それに、こんなクルマがあると、景色が豊かになるような気がする。

【スペックス】
車名 ダイハツ・フェローバギィ
全長×全幅×全高 2995×1290×1400mm
356cc 直列2気筒 後輪駆動
最高出力 26ps@5500rpm
最大トルク 3.5kgm@4500rpm

(写真=ダイハツ提供)

あわせて読みたい

イタリアデザインを着こなした和製オープン ダイハツ・コンパーノ・スパイダー

ラグジュアリーなパーソナルカーという分野を開拓した初代サンダーバード

“素材感”がカッコ良かったダイハツ「ネイキッド」

小川フミオのモーターカー:連載一覧はこちら

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

VWビートルのシャシーに合成樹脂のボディーを載せたバギー「メイヤーズ・マンクス」

一覧へ戻る

前輪駆動化されてもスポーティー 新BMW118iに試乗

RECOMMENDおすすめの記事