小川フミオのモーターカー

前輪駆動化されてもスポーティー 新BMW118iに試乗

いま売れる乗用車といえば、SUV。でも、ハッチバックも健闘中だ。乗って楽しいクルマが出そろっている。ドイツ車をみても、メルセデス・ベンツAクラス、アウディA1、それにBMWの1シリーズが、フルモデルチェンジを受けた。甲乙つけがたい。

(TOP画像:フードとテールゲートにアルミニウムが使われ従来より30キロ軽量化)

量産型ハッチバックのルーツは、1969年に登場したイタリアのアウトビアンキA112だろう。そのあと72年にルノーが5を、74年にフォルクスワーゲンがシロッコとゴルフを、と続々とヒット作が生まれた。基本的な成り立ちはほとんど変わっていない。

変わっていないのには理由があるわけだ。コンパクトな全長に、後席を倒せば広くなる荷室と、機能主義的に設計されている。さらに、構造的にSUVより乗り心地がよい場合が多い。

ホイールベースは2670ミリと比較的長い

ホイールベースは2670ミリと比較的長い

2019年に登場した3代目BMW1シリーズ「118i」に先日、ようやく乗る機会があった。日本で発表されたのは8月29日だったが、試乗できるようになったのは、冬である。このクルマ、上記の特長に加えて、運転する楽しさを感じさせる。

全高を含めた駐車スペースの問題などを考慮し、SUVでなくてハッチバックがいいかな、と考えているひとに、私は「BMW118i」を勧めたい。クルマの楽しさとは何かを教えてくれるからだ。

新しくなった1シリーズの最大の特徴は、従来の後輪駆動から前輪駆動になったこと。前輪駆動化により、ドライブトレインがコンパクトに収まり、室内スペースが有効に使えるようになる。実際に新型は、従来の後輪駆動モデルに対して、前席と後席の間隔が40ミリほど広がっているそうだ。

荷室の容量は従来型より20リッター拡大して380リッター

荷室の容量は従来型より20リッター拡大して380リッター

前輪駆動化にメーカーが注目する理由はもう一つ。一般論だけれど、後輪にモーターを組み込んでのハイブリッド化が図れるのだ。BMWが1シリーズのシャシーを使ってすぐに同様のことをやるかは不明であるが。

一方で、効率を優先するあまり、焦点のボケた出来になったかというと、新型1シリーズに関しては、全くの杞憂(きゆう)だ。スポーティーなクルマは後輪駆動(あるいは四輪駆動)という常識など吹っ飛ばしてしまうぐらい、前輪駆動化されても1シリーズは“すごい”。

もっともいい点は、全体のバランスがいいことだ。回転をあげて走って楽しい1498ccの3気筒エンジン、エンジンの力をうまく引き出してくれる7段ツインクラッチの変速機、正確なステアリング、安定したコーナリングが出来るシャシー、そしていい動きをするサスペンション。クルマの基本が完璧に出来ていると思えるほど。

感心したのは、道路の表面がうねっていても、乗員の頭が大きく上下に動くことはない点だ。118iの足まわりは、衝撃を吸収しつつ、車体の前後左右そして対角線上の動きをうまく制御してくれる。これはなかなか難しい。高い得点をあげたくなるクルマは多くない。

10.25インチのモニターを含めた「BMWライブコクピット」を含めた「iDriveナビゲーションパッケージ」はオプション

10.25インチのモニターを含めた「BMWライブコクピット」を含めた「iDriveナビゲーションパッケージ」はオプション

全長は4.3メートルほどなので、そう大きくないため、市街地での取り回し性もよい。サイズのためにこのクルマを選んだとしても、運転の楽しさがついてくる。お買い得感がある、ということだ。

かつ、先進技術もしっかり搭載されている。リアビューカメラ、前後パーク・ディスタンス・コントロール(※)、パーキングアシスト、そしてリバースアシストが、118iの「スタンダード」と今回試乗した「Play」、そして「Mスポーツ」の標準装備(3モデルのドライブトレインは共通)だ。

※パーク・ディスタンス・コントロール(PDC)~車両の前方や後方にある障害物までの距離を信号音とビジュアル表示で知らせ、狭い場所での駐車や車庫入れをサポートする機能。

液晶の「BMWライブコクピット」はオプション

液晶の「BMWライブコクピット」はオプション

特にリバースアシストはおもしろい技術だ。時速35キロまでの走行時なら直前50メートルの軌跡をコンピューターが常に記憶していて、停止後、ギアをリバースに入れてボタンを押すと、それまでの50メートルを操舵(そうだ)したとおりに自動で後退していく機能である。

暗い雨とか電柱に囲まれたような狭い道で後退しなくてはならなくなったとき、ドライバーはブレーキペダルに気をつけているだけで、クルマが自動で後ろに下がっていく。2018年6月に登場した8シリーズで導入され、新型3シリーズやSUVのX5とX7にも搭載されている。

メーカー発表の燃費は、WLTCの総合モードでリッター13.7キロ。1.5リッターの前輪駆動車としてはそう良くはない。それでも、ドライブの楽しさを勘案すると、昨今の環境意識の高まりのなかだとやや空気の読めないことを承知であえていうが、燃費ばかりがクルマのすべてではないと思うほどだ。

Playにはパーフォレーテッド・ダコタレザーシートが標準装備

Playにはパーフォレーテッド・ダコタレザーシートが標準装備

価格は118i Playが375万円。スタンダード(334万円)に対して、レザーシートなどの装備が標準となる。Mスポーツ(413万円)は専用サスペンションと225/40R18タイヤ(スタンダードとPlayは205/55R16)が備わる。

ちなみに「Play」というグレード名をつけた背景は「楽しそうだからです」とBMWグループジャパンの広報担当者。だったら「スタンダード」と「Mスポーツ」にもひねりが欲しかったかな。2020年2月登場のホンダ新型フィットには「ホーム」とか「リュクス」というグレード名が五つも用意される。これが“いまっぽい”のだろうか。

「オーケイ、ビーエムダブリュー」で起動する会話型音声入力システムやナビゲーションシステムを含む「iDrive(アイドライブ)ナビゲーションパッケージ」は24万9000円のオプションである。

後席もおとな2人に十分なスペース

後席もおとな2人に十分なスペース

(写真=筆者)

【スペックス】
車名 BMW 118i Play
全長×全幅×全高 4335×1800×1465mm
1498cc 3気筒 前輪駆動
最高出力 103kW(140ps)@4600-6500rpm
最大トルク 220Nm@1480-4200rpm
価格 375万円

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

ベースは軽商用車 “レジャー時代のパーソナルカー” ダイハツ・フェローバギィ

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