私の一枚

『恋はつづくよどこまでも』出演の毎熊克哉 演技の原点はダンスで磨いた「真似る能力」

高校3年生の時、仲の良かった友達と2人でダンスの発表会に出た時の1枚です。ダンスを始めたのは高1の終わりごろ。母がたまたま見ていたストリートダンスのレクチャービデオに衝撃を受けたのがきっかけでした。母はもともとダンサーで、当時地元のカルチャースクールでジャズダンスやバレエを教えていました。

毎熊克哉

最初の先生はレクチャービデオ

子どもの頃の夢は映画監督。ダンスにはまったく興味がなくて、アイドルやかわいい女の子がやるものだと思っていたんです。ところが、そのレクチャービデオを見て考えが変わりました。ビデオのプロデュース、レクチャーをしていたのはEIJIさんというダンサーでした。後に日本のダンス界の大御所の方だという事がわかったのですが、とにかくそのビデオがカッコ良かった。イメージとは逆に、男の色気を感じたんです。ビデオを「先生」に、見ては真似(まね)て、真似てはまた見てといった感じでビデオの内容を全部覚えたのが最初でした。

そんなある時、母が教えていたカルチャースクールで発表会がありました。バレエやフラメンコなどいろんなジャンルの人が踊るその発表会に「出てみたら?」と母に誘われて踊ったのが、この写真の時です。地元の大きいホールで、振り付けから構成、音楽、照明まで、素人なりにこだわりました。映画を撮ることに興味があったぐらいですから、やはり昔から何かを作ることが好きだったんだと思います。

毎熊克哉

ダンスをやっていなかったら俳優にはならなかった

高校の先の進路を決める時、振付師という選択肢も頭をよぎりましたが、やはり子供の頃から憧れていた映画の道に進もうと思い、映画が学べる東京の学校に進みました。ただ、EIJIさんが東京でダンスのレッスンをされていることを知って、上京してから10年近くEIJIさんにダンスを習いました。多い時期には週3回、1日6時間ぐらいは踊っていたと思います。

もしダンスをやっていなかったら、俳優にはなっていなかったかもしれません。そういう意味では役者としての自分の原点かも。映画監督を目指して勉強したものの、俳優志望の人に演技のイメージを伝えてもなかなか思い通りにいかなくて、それなら自分で演じてみようと思ったわけですが、ダンスの経験があったからこそ、自分の体で表現することに自然に移行できたんじゃないかと思います。

ダンスが演技に影響を与えている部分も、もちろんあると思います。良い影響も悪い影響もありますね。演技を始めた頃は、形から入ろうとする部分がありました。ただ、立ち方が決まり過ぎていて、「もっと普通に出てきてよ」と言われちゃう。最初の難関はそこでした。

反面、芝居の中の段取り……例えば、まずセリフを話して、そのあと数歩移動して、何か他のことをしながら次のセリフを話すとか、そうした段取りを覚えるのが早いのは、ダンスから受けた良い影響かもしれません。段取りを覚えるのは振り付けを覚えるのと一緒ですからね。

毎熊克哉

動きの意味や理由まで考えなければ本当の真似はできない

何かを真似ることは決して悪いことではなくて、実はすごく大事な能力だと思います。形をそっくりなぞるとしても、どういう意図でその動きをしているのかまで考えなければ、本当に真似することはできません。

例えば、足を引きずるように歩いている人がいたとして、なぜその歩き方なのか。ケガなのか、病気なのか、その理由まで深掘りして考えて演じると、ただの真似がよりリアルになります。

死に方とか怒り方とか、真似したい映画のシーンがたくさんあります。そのうちの一つが、映画『プライベート・ライアン』で大尉役のトム・ハンクスが死んでしまうシーン。何もしていないのに眼から光が消えるというか、「あ、今死んでしまったんだな」とわかる。いつか死ぬ役を演じることがあったら、ああいう演技をしたいと思いますし、逆に、いつか役者として真似をされるようなことがあったら、うれしいですね。

毎熊克哉

上が見えたからこそ感じる、目指すべき場所の高さ

エキストラや名前が出ないような役もたくさん経験しながら、ギリギリのところで役者を続けてきました。その頃の自分を知っている人と現場で再会したりするとすごくうれしくて、あの時期は無駄じゃなかったんだなと思います。

ただ、今と昔でどっちが大変かと言ったら、今のほうが大変に感じているかもしれないです。上が見えていない時は「どうやったら上が見えるのか」と思い続け、それで20代が終わっていきました。30代になって『恋はつづくよどこまでも』のような連続ドラマや『いざなぎ暮れた。』のような主演映画のお話をいただくようになり、自分より遥か上の存在の人達と一緒に仕事をしてみると、演技力も立ち振る舞いも場数も、“人間力”でも素晴らしくて、上はまだまだ遠いと感じます。昔は想像もつかなかった世界がなんとなく見えたことで、その高さ、大変さを実感しているところです。

そうした素晴らしい人達と比べたらまだまだキャリアも浅いですし、積み重ねが必要ですけど、今はそうした人たちの素晴らしい演技を真似しながら、どの作品でも「今やっている役がダメだったらヤバい」という危機感を持って演じていこうと思っています。

(聞き手・髙橋晃浩、写真・森浩司)

映画「いざなぎ暮れた。」ポスタービジュアル

映画『いざなぎ暮れた。』は2月21日より島根県・松江東宝5で先行上映。3月20日より東京・テアトル新宿にて公開。

      ◇

まいぐま・かつや 1987年、広島県福山市生まれ。2016年公開の主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017 新人男優賞、第31回高崎映画祭 最優秀新進男優賞を受賞。以後、『北の桜守』『万引き家族』『空飛ぶタイヤ』などの映画、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)などのTVドラマに出演。現在放送中のドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系 毎週火曜夜10時~)では医師・来生晃一役を演じ話題を集めている。主演映画『いざなぎ暮れた。』は第11回沖縄国際映画祭、モナコ国際映画祭など世界25以上の映画祭に出品され10タイトル以上の賞を獲得している。

■『恋はつづくよどこまでも』公式サイト
https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs/

■『いざなぎ暮れた。』公式サイト
https://izanagi-kureta.com/

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PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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