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巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす人が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

MoMAに永久収蔵された名作を一般向けにリデザイン

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

「Chair X(チェア・エックス)」。座面にはキャンバス風に織った1200デニールの極厚ポリエステルを二重にして使用。堅牢性が高く、滑りにくい

日本のキャンパーがキャンプを楽しむのは年間3.7回程度だと言われている。キャンプグッズも良いものをそろえたいが、たった年数回のキャンプのためにどれほど費用をかけるかは悩ましいところ。ちょっと良いアウトドア用家具を買うならば、フィールドだけでなく自宅でも使えるものを選びたいところだ。そんな方々におすすめしたいのが、日本のアウトドア家具ブランド「オンウェー」の折りたたみチェア「Chair X(チェア・エックス)」。MoMA(ニューヨーク近代美術館)に永久収蔵された日本発の名作デザインチェア「Ny Chair X(ニイ・チェア・エックス)」を屋外でも使えるようリデザインしたアイテムだ。

創業25年を迎える「オンウェー」は、大手メーカーが展開するアウトドア・ファーニチャーの品質管理とOEM生産から歴史をスタートしている。日本のアウトドアを縁の下の力持ちとして支えてきた同社は、やがてOEM生産で蓄えた豊富な経験を生かして、2001年からはオリジナルブランドの展開をスタート。第一弾アイテムである「ディレクター・チェア」は大ヒットを記録し、アウトドアの世界だけでなくデザイン界からも高く評価された。

時を同じくして、日本を代表する家具デザイナーである新居猛は自らがデザインした「ニイ・チェア・エックス」の価格を抑えることができれば、より多くの人に手にとってもらえるのではないかと考えていた。新居が目指していたのは、一部の人だけが購入できる高級デザインチェアではなく、「カレーライスのように万人に愛されるイス」だったという。

そんな新居が白羽の矢を立てたのが、中国生産の高品質アウトドアファーニチャーで注目を集めていたオンウェーだった。2005年の夏、突如として同社の事務所を尋ねた新居は「ニイチェアを生産し、世界で販売してほしい」との依頼をしたという。

新居猛の名作チェアをアウトドアでも使えるようにアレンジして生まれた「Chair-X」

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

一般的なアウトドア・チェアの倍近い厚さ2ミリのアルミパイプを使用。簡単に地肌が見えないように、黒のアルマイト加工は厚めに施されている

もともとアウトドア用チェアを展開していたオンウェーは、ニイ・チェアを屋外でも使えるようにアレンジしようと考える。その結果生まれたのが今回紹介する「Chair-X(チェア・エックス)」だ。代表取締役の泉里志(いずみ・さとし)さんは「ちょっとした裏話があるんです」と苦笑しつつ、名作誕生の背景を語る。

「当時とある有名アウトドア・ブランドからの依頼でチェアの生産を行っていたのですが、発注ミスで良質なアルミ製パイプの在庫を大量に抱えてしまった。そこで開発を始めたのが、新居さんのニイ・チェアをアウトドア仕様にしたチェア・エックスなんです。アウトドアファーニチャーは我が社の得意分野ですし、オリジナルではステンレスだったパイプを大量に余ったアルミに置き換えれば軽くなって、簡単にアウトドア向けになるだろうと思っていたのですが……試行錯誤を繰り返していたら、完成までに3年もかかってしまいました」(泉さん)

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オンウェー株式会社 代表取締役の泉里志さん。3月に書籍『創造と進化:オンウェー25年の軌跡から概観する日本のアウトドアファニチャー』(誠文堂新光社)を刊行する

「チェア・エックス」には、インドアとアウトドアでの兼用を想定して、パイプ素材の変更以外にも、オリジナルモデルに多数の改良が加えられている。まず屋外に持ち運びやすいようにサイズは一回り小さめ。また座面が高めに設定されているため、腰やひざに負担をかけることなく、すんなりと立ち上がることができる。

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

小型化したと言っても一般的なアウトドアチェアに比べると座面が大きめなので非常に座り心地が良く、立ち上がりやすい

視線を下げると、オリジナルモデルでは直線で構成されていた四角形の脚部パイプは、安定性向上のために下にいくに従って外側に開いている。同じくフラットだった接地する部分のパイプには曲線が加えられた。こちらは接地面を「線」から「点」にすることで、屋外の凹凸のある地面でガタつかないようにとの配慮だ。

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

ふたつの変形四角形をクロスさせたシンプルな脚部。室内使用時は、接地部分に市販のパイプ椅子用保護キャップを装着しておけば、床、パイプともに傷付きにくい

より簡単に、より小さく……苦心の末、折りたたみ機構を改良

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

特殊な折りたたみユニットを採用しているため、ほぼフラットにたためる。運搬時は背もたれの後ろにあるスナップボタン付きストラップで固定可能

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背もたれの付け根部分には、独自開発したふたつの折りたたみ機構が

座面を折りたたむことができるニイチェアだったが、さらにコンパクトにするには工具を使って分解するほかなかった。しかしアウトドアで使うならば、もっと簡単に、より小さく収納できた方が良い。そこでオンウェーは、座面と背もたれの折りたたみ機構を改良することを決断する。まずオリジナルでは1本だった背もたれ部のパイプを真ん中で二分割して、前方に倒せるようにした。背もたれ部分のパイプ内部には人間の背中をしっかり支えられる強度を確保するため、スチールの補強材を二重に入れることにした。

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

背もたれ部分のパイプには前から後ろ、左右から中央に向かっていく力がかかる。しっかりと支えるために強度向上のためにスチールの芯が二重に入っている

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

ユニットには小判形の穴があけられている。座面を固定しているネジを収納時のみスライドさせることで、ほぼフラットに折りたたむことを可能に

また座面の折りたたみ機構をパイプ内部に収納することに。しかしそのためにはオリジナルの内蔵ユニットが必要だった。苦心の末、オンウェーは座面と背もたれを固定しつつも、折りたたみ時には座面を支えるパイプがほんの少しだけ可動するオリジナルのパーツを完成させる。素材はアルミの削りだしとなっているため、強度も非常に高い。

「チェアの要といって良い部分なので、かなりコストをかけて作っています。フラットに折りたたむための仕組みはオリジナルと同じなのですが、どうしてもパイプ内部に機構を収納したかった。より小さくできるだけでなく、たたんだ状態でも美しい椅子にしたかったからです」(泉さん)

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

「Ny Chair X」のアームレストの裏側にも小判形の穴があけられている。「私たちのアームレストは金属製。同じように作ってしまうと見た目が良くありませんでした」と泉さん

コストカットと意外な使い方を両立したアームレスト

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

座面を背もたれに向かって傾斜させ、脚部上側にアームレストの役割をもたせた

オリジナルモデルで木製だったアームレストは、硬めのスポンジに座面と同一のポリエステル生地を組み合わせたものに変更されている。「コストカットのためです」と泉さんは笑うが、座面にあぐらで座ったときに、太ももが痛くならないというメリットを生み出してもいる。耐荷重は一般的なパイプ椅子と同じ80キロとなっているが「十二分の安全性を考えたカタログ上の数値。全体重がかかるあぐらで座っていただいても、一般的な体重の方であれば壊れることはありません」と泉さんは語る。

「他のアウトドアファーニチャー企業と比べても、かなり厳しい耐荷重試験を行っています。オンウェーの『Chair-X』に関しては300キロのウェートを72時間載せ、25キロ のウェートを30 センチの高さから2千回落とす実験を行っています。ですから80キロとは言いつつも人間一人が乗った程度で壊れることはありません」(泉さん)

巨匠デザイナーが手がけた名作家具をアウトドア仕様にカスタムしたOnway「Chair-X」 

あぐらをかいたときにアームレストの上に太ももが乗るが、スポンジに弾力があるため不快感がない

ボルトとナットで構成されているChair-Xは比較的修理がしやすいため、オンウェーではパイプを除くパーツの交換、生地の張り替え(3500円〜)などの修理サポートも行っている。アウトドアチェアとしては若干割高感のある1万3200円という価格も、大御所デザイナーの名作にアウトドアファーニチャーの機能性と堅牢性が加えられたアイテムで、さらにアフターケアも万全であることを考えれば、十分納得できるのではないだろうか。容易に折りたためるため、自宅から屋外への運搬はもちろん、リビングからベランダへの移動も気軽にできる。軽く、持ち運びやすく、見た目も良い。オンウェーの「Chair-X」は、「まるでカレーライスのように万人に愛されるイス」だと断言していいだろう。

Chair-X
https://www.onway.jp/products_chairs/25_index_detail.shtml

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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