今日も激坂日和

最大勾配25%超え! 神域へまっすぐ上りつめる「筑波山神社直登」(茨城県つくば市)

息が切れる。ペダルが重い。足が震える。見上げれば、まだまだ続く壁のような道……。それでも人は、坂を上る。上りきった先にある爽快感、達成感、恍惚(こうこつ)感……日常生活では味わえない、脳髄を刺激するような感覚を求めて――そんな「坂マニア」と言えるロードバイク乗りが日本各地で増殖している。彼らを魅了してやまない「激坂」を巡っていこう。

最短で筑波山神社へ至る参拝道を駆け上る

【動画】筑波山神社へ至る参拝道を駆け上る

「筑波山に、ヤバい坂がある」

大学でサイクリング部に入った古賀太暁さんの耳に、そんなうわさ話が聞こえてきた。坂の名は、通称「筑波山直登」。筑波山神社への参拝道である「つくば道」の終盤にあり、ライダーは山のふもとから中腹にある神社までまっすぐ最短距離を上っていく。昔は急な石段だった道を舗装したというだけあって、勾配は最大25%を超えるすさまじい激坂だ。

「はじめて上ったときは、中盤の鳥居を過ぎたらすぐに足をついちゃいました」

あとから振り返れば、そこは直登の激坂区間がはじまる、ほんの入り口でしかなかったのだが……。

中盤の石鳥居がまさに神域への入り口

中盤の石鳥居(一の鳥居)。脇に「市営 筑波山麓(さんろく)筑波駐車場」があり、ここから歩いて上る人も多い

中盤の石鳥居(一の鳥居)。脇に「市営 筑波山麓(さんろく)筑波駐車場」があり、ここから歩いて上る人も多い

ここで筑波山直登の全貌(ぜんぼう)を見てみよう。坂自体の全長は、約1.8kmとそれほど長くはない。しかし、この距離にして獲得標高(スタート地点からゴールまでの上った高さの総計)は200mにも達する。普通なら数kmかけて蛇行しながら上る高さを、まっすぐ一気に上っていくからだ。勾配は平均でも10%を優に超える。

序盤は民家の間を抜けていくアスファルト道路で、勾配も比較的緩やかだが……「この鳥居を過ぎてからキツくなります」(古賀さん)。中盤の石鳥居を境に坂の雰囲気は一変。道幅は車一台がやっと通れるほどに狭まり、路面は滑り止め付きのコンクリート舗装に。そして勾配は、あからさまにキツくなる。

勾配15%超えがひたすら続く

見下ろすと先が見えないような坂の連続。踊るようにペダルを踏み続ける「ダンシング」が途切れた途端に足をつくこと必至

見下ろすと先が見えないような坂の連続。踊るようにペダルを踏み続ける「ダンシング」が途切れた途端に足をつくこと必至

延々と続く勾配15%超えの激坂は、ライダーにとってはまるで壁。上から見下ろせば足がすくむ。とはいえ住民の方々にとっては普通の生活道路。ときおり見ているほうがドキドキするような角度で自動車が上っていったり、地元のおばちゃんたちが談笑しながら下ってきたりする。「スゴイ坂でしょー」とニコニコ話しかけてくれたりしながら。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

のどかな雰囲気だけに、ダンシングする古賀さんの激しい息づかいが際立って聞こえてくる。

歴史情緒も吹き飛ぶようなラスト200m

終盤の直線入り口にある白壁。斜面に沿った段々が見事だが、勾配は過酷

終盤の直線入り口にある白壁。斜面に沿った段々が見事だが、勾配は過酷

最大勾配25.7%を誇る二股の交差点を上り切ると、ラスト200mの直線。道沿いに並ぶ段々の白壁が美しい。大きな農家の家や、この地を治めていた名主の家など立派な屋敷が立ち並び、歴史情緒を感じられるエリアだ。

しかしライダーにとっては、段々の白壁も勾配のキツさの証拠でしかない。「ただただ上りっぱなし。下りどころか平地もないですね」。ゴールまで容赦なく続く16〜18%の急勾配が、疲れた足に追い打ちをかける。

パワーメーターのデータをチェックしながらトレーニング

古賀さんの愛車。フレーム:BOMA VIDE Pro、ホイール:Fulcrum RACING ZERO、コンポーネント:Shimano ULTEGRA R8000、パワーメーター:Pioneer SGY-PM930HR

古賀さんの愛車。フレーム:BOMA VIDE Pro、ホイール:Fulcrum RACING ZERO、コンポーネント:Shimano ULTEGRA R8000、パワーメーター:Pioneer SGY-PM930HR

「新入生の頃は無理でしたけど、今だったら……」と古賀さん。ロードレースのインカレに出場するほど鍛え抜いた足で、この激坂を小気味よいペダリングでグイグイと上り切る。ゴールを迎え、火照った顔で、自身の成長を噛みしめるようにガッツポーズした。 

トレーニングに役立ったのが、パワーメーターだ。FTP(自分が1時間当たりに出せるパワー)やペダリングで力が入る位置など様々なデータを測れるので、ペース配分やダンシングの調子などを常にチェックしながら鍛えている。その成果は、過酷な上りがひたすら続く筑波山神社直登でも存分に証明された。

クランクに取り付けたパワーメーター(Pioneer SGY-PM930HR)。パワーメーターのデータは、ハンドルバーに取り付けたサイクルコンピューターにリアルタイムで表示される

クランクに取り付けたパワーメーター(Pioneer SGY-PM930HR)。パワーメーターのデータは、ハンドルバーに取り付けたサイクルコンピューターにリアルタイムで表示される

<今回の激坂チャレンジャー>

古賀太暁(ひろあき)さん
筑波大学 生命環境学群 地球学類3年生。体育会サイクリング部に所属し、ロードやトラックなど様々なレースに出場。2018年埼玉幸手工業団地クリテリウム 男子クラス3Bで優勝し、インカレにも出場。
取材協力:TAS CYCLE(タスサイクル)https://cycle.taspark.com/

※ロードバイクで走る際には、周辺の住民や自動車へ配慮しながら楽しみましょう。

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PROFILE

依田賢吾

photofarmer(フォトファーマー)。出版社勤務を経て、フリーランスに。アウトドア、ライフスタイル、食、農業、環境など自然系のテーマを中心に取材活動を続ける。モットーは自給自足。取材・撮影(スチル・ムービー)・執筆・編集まで自前でこなすほか、無農薬無化学肥料で米や野菜をつくる農業も営む。

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