小川フミオのモーターカー

作り手の思いと市場の期待に翻弄された「ジャパン」 日産スカイラインC210型

「ジャパン」という愛称で呼ばれた「日産スカイラインC210型」。スカイラインは、送り手の思惑と市場の期待に、少々翻弄(ほんろう)されてきた歴史を持つ。5代目はその典型だ。

(TOP写真:1980年型のフルラインナップ)

1977年に発表されたC210型は、先立つ72年発表のC110型(「ケンメリ」)が、市場の需要をかんがみた結果、大きく重くなったことの反省にたって開発されたモデルとされている。

2ドアハードトップ2000ターボGT-E・Sタイプ

2ドアハードトップ2000ターボGT-E・Sタイプ

私は当時、開発総責任者の故・桜井眞一郎氏の発言として、開発に向けての意気込みを読んだ記憶がある。「ケンメリ」は市場におもねったプロダクトで、自分的(桜井氏的)には納得がいかない、という。私は驚いたものだ。

開発者としては、68年の先代(「箱スカ」とも広告のキャッチコピーから「愛の」とも呼ばれたC10型)スカイラインが理想的。C210型は走りを追求したクルマとして開発したい、と考えていたというのだ。

1977年型のGT

1977年型のGT

出来上がったC210型は、セダンとクーペの2本立て。なかでもクーペは、スタイリングもダイナミックだった。シルエットではくさび型を強調。ウィンドーグラフィクスをはじめ、そこかしこにシャープな印象のエッジをたてて、そぎ落とされたスポーティーさを打ち出していた。

モデルラインナップを二つで構成したのも、スポーティーさを訴求しようという開発者の意向だった。ひとつは「GT」ライン。2リッター直列6気筒エンジンを搭載して、リアのコンビネーションランプもスカイラインのアイコン的な丸型4灯式である。

2ドアハードトップ2000ターボGT-E・Xタイプのダッシュボード

2ドアハードトップ2000ターボGT-E・Xタイプのダッシュボード

もうひとつは「TI」ラインだ。一般的に自動車界でTIとは、イタリア語の「ツリズモ・インテルナツィオナーレ」というレースのカテゴリー。車名にも入れられ、アルファロメオ・ジュリア1300TIとかBMW2002tiiがよく知られている。

スカイラインでは「ツーリングインターナショナル」と称していたけれど、つまるところ、同じもの。ということは、よりスポーティーな仕様と想像できた。ホイールベースも、6気筒のGTが2615ミリもあるのに対して、4気筒のTIは2515ミリとコンパクトだ。

と思いきや、1600ccあるいは1800ccの4気筒搭載の“廉価版”だった。パワーもないし、イメージまで廉価になってしまったようで、私はちょっとがっかりしたものだ。

発表当初から男女の乗員を強調していたC210型に設定された「Mr. & Ms. スペシャル」(79年)のインテリア

発表当初から男女の乗員を強調していたC210型に設定された「Mr. & Ms. スペシャル」(79年)のインテリア

ローレルと車台を共用するC210型の重要な使命のひとつは、ファミリーカーとして成功することでもあったから、仕方なかったのかもしれないが。ちょっと厳しくいえば、これがC210スカイラインの実情だったのだ。

鳴り物入りで登場したが、排出ガスのクリーン化や、走りを追求したスポーツモデルに対する規制当局からの風当たりの強さが前に立ちはだかった。加えて、日産(プリンス系販売網)の営業からの要請で広い層を狙う必要があったのだろう。はたして、本懐は遂げられなかったようだ。

77年の2ドアハードトップ2000 GT-E・Xタイプ

77年の2ドアハードトップ2000 GT-E・Xタイプ

1980年にGT系のエンジンにはターボチャージャーが搭載され、ようやく、競合他社の製品に対する商品力がアップした。ブラックボディーにイエローのラインなど、コスメティクスも派手で、“スカイラインがんばれ!”と応援したくなった。

でもそのときはすでに、次期R30型の開発が最終段階にあったはずだ。排ガス規制によるパワーダウンを技術力でカバーして、新世代のスポーティークーペへと脱皮した6代目である。このモデルから、後輪のところのエッジ、いわゆるサーフィンラインがなくなった。

当時、TIの名を冠していたモデルを作っていたアルファロメオはいまジュリアを、BMWはM3を、と各社、かなりとんがったセダンを作っている。スカイラインもかつての思いを再びよみがえらせて、目のさめるようなスポーティーモデルに変身してくれないだろうか。

(写真=日産自動車提供)

【スペックス】
車名 日産スカイライン・ハードトップ2000ターボGT-E・Sタイプ
全長×全幅×全高 4600×1625×1375mm
1998cc直列6気筒ターボ 後輪駆動
最高出力 145ps@5600rpm
最大トルク 21.0kgm@3200rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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