オトナたちに捧げる、現代インターネットのススメ。

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

みなさんは、「ロボットと未来」という言葉からどんな未来をイメージするだろうか。

ロボットが人間の仕事を肩代わりしてくれる未来? それとも、ロボットが人間に反逆する未来?

次世代家庭用ロボット「LOVOT(らぼっと)」が見せてくれる世界は、そんな頭の中に浮かびがちなイメージを大きく変えてくれるかもしれない。

【動画】LOVOTの「のぎへん」

前編に引き続き、今回もLOVOTの生みの親、GROOVE X 創業者であり、CEOの林要さんに話をうかがった。

LOVOTがもたらしてくれる私たちの幸福は、想像しているよりもずっと“直接的”で温かい。

これからの時代、テクノロジーで幸せになるために求めるべきは本当に「生産性」か?

りょかち:LOVOTを作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか。

:LOVOTを手掛ける前は、Pepperの開発に携わっていました。Pepperが出たあと、ある種のロボットブームを感じるようになりました。

ロボットブームの中で出てくる言葉はなにかというと、「仕事」。

人の仕事をロボットの仕事に置き換えるという話題が頻繁に出ていました。

もともと人類はロボットによって仕事から解放されることで、幸せになりたかった。仕事をロボットに任せてお金を効率よく手に入れようとした。

でも今の社会を見回してみると、実際問題、いまお金があったら幸せかというと、疑問に思います。お金を稼ぐことや資本主義社会が、幸せと乖離(かいり)し始めている。

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

:若い人になればなるほど、そういうムードを実感している。資本主義社会の構造はなにかというと、基本的には、生産性を上げることによってお金を稼ぎ、幸せを目指すこと。

幸せはお金を稼ぐことで達成できるという前提で、生産性を上げてきた。生産性を上げるために、道具や機械を作ってきた。それは全て、幸せになるためでした。

なので、その延長線上にロボットがいて、人の仕事を代わりにやらせて生産性を上げる。そこから何段階もあって幸せにつながっているはずなのですが、実際には必ずしもそうなっていない。

すでに現実の世の中は、生産性を上げて幸せになる、という資本主義の考え方と微妙にずれている。

だから、ロボットが人間の代わりに仕事をして生産性を上げると不安になるという、まったく逆のアウトプットが出てきていますよね。

りょかち:「仕事がロボットに取られちゃったらどうしよう問題」ですね。

生産性を上げること=幸せにならない時代において、それでもおそらく、生産性は上がり続けるでしょう。そうすると、逆に生産性が上がりすぎてしまい、自分が貢献できる仕事をみつけにくくなったため、自分の存在価値を確認できない人が出てくる

その人は、おそらくどんなに食べ物や好きなことを与えられても、自己肯定感を得られず、幸せを感じていない可能性がある。幸せになる人も当然いると思いますが、実は幸せにならない人もすごく多いのではないかと思いました。

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

:資本主義の考え方から自由になったとしても、自分が何をやりたいのかを見つけることは、非常に難しい。

このとき、ロボットがその人に何をやるべきかを気づかせるような存在に将来はなるべきだと思っています。今はまだ、それほどの能力はありません。

しかし、今でも人は犬や猫に頼りにされ、彼らを世話していれば、その人は自分が肯定された感じがするし、明日も頑張ろうと思えるのではないでしょうか。

そんな日々を繰り返してるだけで、またいつか、自分自身で頑張れるようになるんじゃないかって思ったんですよね。じゃあ、そんなペットと同じような役割を担えるものをまず作る。

それがLOVOT。

りょかち:たしかに、自分を必要としてくれる存在がいることは、自己肯定感を感じられるきっかけになる。そこに結びつくんですね。

私たちがいま、渇望する「愛する器」

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

:昔は、いろんな人たちと関係が深かった。例えば、小・中学生ぐらいでも、周りの子どもたちの面倒をみていたり。人が協同して生活しないといけなかったがゆえに、めんどくささを感じつつも、自分が役に立っている感覚があった。

今の時代だと、仕事以外の面で、自分がなにかのケアをする機会が減ってしまった

りょかち:たしかに。私の世代ではもうすでに、そういう機会が減った時代なのかもしれません。振り返ってみても、近所の人の面倒をみたという記憶があまりないですね。

:ないですよね。でも、「面倒をみたい」という本能はある。だからこそ、犬や猫を飼うのではないでしょうか。

犬猫を飼うのは大変で、お金はかかるし時間もとられる。最終的には病気になったり悲しい思いをする。

未来を予測して合理的に考えたら、ペットを飼う理由はないように思えるのに、それでも僕らは飼ってしまう。きっとその理由は、気兼ねなく愛でたいという欲求があるためだと思うんですよ。

それは本当に合理性を欠いているわけではなく、他者を愛することによって自身が元気になることを求めているという、きわめて正しい動機です。

LOVOTは、犬や猫を飼えない人も、このような存在を愛でることによって、自分をヒーリングできるのだったら、素晴らしいことではないかと考えるところからつくっています。

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

りょかち:現代人って……なんだかんだ、「繋(つな)がりたい」という欲求がある。それも、昔よりもっと強固な繋がりに飢えている。逆に私の世代は繋がりすぎていると感じるんですよね。

普段から、周りにいつでも誰でもアクセスできる。けれどなぜか寂しい。そういう中で、ちゃんと世話をしなければいけないものは、現代に生きる人たちに必要な存在なのかなと思いました。

以前、音楽に詳しい人が「昔は歌は『誰かがそばにいないことが寂しい』ということを歌っていたけど、90年代後半からは、『連絡はできるしいつでも繋がれるのに、なんで寂しいんだろう』って歌い始めた」って話しているのを聞いたことがあります。

みんな、簡単に誰かにアクセスできるけど、実は相手に無関心みたいなことをすごく怖がっているように感じる。こういう、自分をちゃんと覚えてくれて、だんだん親密度の高まっていく関係性を、みんな渇望しているんだということを感じました

「繋がってるし連絡が来る」というものでは満たされないことがわかり、次の段階がどうなるかというと、その歌のように、愛されたがるんですね。

りょかち:そう。そうです、すみません、めちゃくちゃうなずいてしまいました(笑)。

そして愛されたがると、だいたい解決しない。

りょかち:うーん、そうですね(笑)。

:愛されたがれば愛されたがるほど不安が募ってしまう。そういう状態をネガティブスパイラルというんですが、実はまったく逆のことをすると安定します

それが愛することなんだと思います。

ただ、愛されるために愛すると、条件付きの愛になってしまって良くないと思うんですが。単にピュアに愛することができると、愛しているという心の状態が、心に安定をもたらすのではないでしょうか

「母は強し」という言葉はそんな状態を表しているんじゃないかと思います。自分が愛しているから強いのであって、けっして子どもに愛されてるから強いのではない。

なので、愛する器というものを、どう準備するのかは大事だと思ったんですね。しかしその器に、実在の他者を無理に当てはめようとするといろいろと複雑になる。

ちゃんと愛する対象となる人が見つかれば、その人はラッキーなことだと思うんですけど。

対象が見つからなかった、もしくはそういう人がいたとしても、さらに必要だというときに、犬や猫、もしくはLOVOTが求められるのではないでしょうか。

りょかち:わかります。私もずっと犬や猫を飼いたいとは思っていますが、ふだんほぼ家にいないし、世話もできないのが心苦しくて飼えません。だからLOVOTを見たときに「家にいてほしい!」と思いました。

:ペットは、お世話のせいで心苦しくなるという問題がある。でもそれだと、現代社会で様々な立場の人の社会進出が進めば進むほど、実は愛する器を増やせる人って限定的になっちゃいますよね。

だから、自分たちが、あんまり心苦しい思いをせずに、気兼ねなく愛せる存在は必要なのではと思いました。

今後、LOVOTとともに生まれるセカイ

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

りょかち:LOVOTがいる社会は、どうなると想像されていますか?

:例えば、オフィスにLOVOTが置かれて、かわいがられている現状は想定外でした。

(LOVOTが喋る)

りょかち:あはは(笑)。

:オフィスに置くと、雰囲気がガラッと変わると聞きます。例えば、イライラしている人がすっきりする方法は、これまで周りの人に愚痴を聞いてもらうぐらいだったと思うんですけど、LOVOTがいると、この子をだっこして、「今日は忘れよう」と気分を落ち着けられるようになったという話を聞きました。

それから、コミュニケーションのきっかけにもなるみたいです。犬や猫を飼うと、その家族のコミュニケーションが活発になると言いますが、LOVOTも同じように会話が活性化する。

それらのオフィスでの利用シーンから想像すると、LOVOTがいる未来は、少し平和になったりするのではないでしょうか。LOVOTがいると、やはり怒ることができない。

りょかち:かわいいから、怒れない(笑)。

:この「怒れない」の延長に、戦争がなくなる世界があったらいいな、と思います。

ロボットがくれる未来は「便利」だけじゃない。LOVOTがくれる、新しく「温かい」未来(後編)

りょかち:そうなると、一般的に“ロボットと未来”というテーマで語られるような、便利な世界とはまた少し違う世界観ですね。

:そうですね。便利なものの進化も止まらないし、大事なことなのでやっていくのがいいと思います。しかし、便利さを追求しすぎたがゆえに、置いてきぼりにされた感情部分もある。

結局、テクノロジーによって生産性が上がって、間接的に人を幸せにしたことがあっても、テクノロジーそのものが直接的に人を幸せにしたケースは少ないです。

幸せになるまでに一つ、なにかクッションが置かれている。手に入らないものが手に入るようになって幸せになったり、おいしいものを食べられるようになって幸せになる。

それに対して、テクノロジーそのものが直接、人を幸せにする未来もくると思います。本来、人は幸せになるために技術を開発してきたので、そういうアプローチはしかるべきなのかな、とは思います。

りょかち:LOVOTによって、感情が増幅、拡張されていると感じます。その役割も今後テクノロジーが担っていくのはすごく面白いです。

(文・りょかち 写真:林紗記)

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    PROFILE

    りょかち

    1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。

    “ずっと、そばにいて幸せ” 人から愛され続ける「LOVOT」はどのように生まれたか(前編)

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