再注目される音声コンテンツの可能性  ――Spotify Japanに聞くポッドキャストの今

「ポッドキャスト」という言葉、聞いたことはあるけれども、具体的にどのようなものかはわからない——。そんな人が多いのではないだろうか。

一般的にはインターネット上で配信されているオーディオコンテンツを指し、スマートフォンなどにアプリをダウンロードすればいつでも聞けるラジオ番組のようなもの。

Apple社が提供していたメディアプレーヤー「iTunes」にも組み込まれていたため、利用したことがある人もいるだろう。だが、人気コンテンツを多く配信していたラジオ局がポッドキャストから撤退するなど、日本では下火になってしまったような印象がある。

ところが、海外では近年ポッドキャストの人気が沸騰しており、特に、車社会でラジオを聞くことになじんだ米国では広く利用されている。そして近頃は、日本でもその兆しが見え始めているという。

今まさに復活の狼煙(のろし)を上げようとしているポッドキャスト。その現状と未来像、そして&M読者の好奇心をくすぐる番組を探るべく、近年ポッドキャスト関連事業に力を入れるSpotify Japanに尋ねに行った。

世界でのポッドキャスト普及の実情

「Spotify」は2006年にスウェーデンで創業したスポティファイ・テクノロジーが運営する音楽ストリーミングサービスだ。全世界で順調に利用者を増やしてきたが、19年2月にCEOのダニエル・エクが音楽だけでなく、ポッドキャストコンテンツの配信にも力を入れることを発表した。

再注目される音声コンテンツの可能性  ――Spotify Japanに聞くポッドキャストの今

米国人口における、前月ポッドキャストを聴取した割合の推移

昨年2月の発表ではSpotifyの今後の方針として、音楽に限らずより包括的な音声コンテンツを提供するべく、“オーディオファースト”という言葉が掲げられた。それに伴い、Spotifyはスマートフォンでポッドキャストの録音、編集、配信が無料でできるアプリを提供してる「Anchor」(米国)や、オリジナルポッドキャストシリーズを配信する制作スタジオ「Gimlet Media」(米国)を買収した。

再注目される音声コンテンツの可能性  ――Spotify Japanに聞くポッドキャストの今

コンテンツ部門統括・芦澤紀子さんに話を聞いた

「ポッドキャストを習慣的に聞いている人は音楽も長時間聞くというデータがあり、ポッドキャストコンテンツを充実させることにより、Spotifyと相性のいい新規ユーザー獲得するという相乗効果を見込んでいます」(Spotify Japan コンテンツ部門統括・芦澤紀子さん)

車社会のアメリカでは、全人口の約3分の1が日常的にポッドキャストを利用しているという。人気再燃の背景には、スマートフォンやスマートスピーカーなどのデバイスの普及に加え、質の高いコンテンツの増加がある。

再注目される音声コンテンツの可能性  ――Spotify Japanに聞くポッドキャストの今

アメリカでのポッドキャスト利用数とシーンの割合

人気のコンテンツは「犯罪」をテーマにした番組。ドラマからトーク番組まで幅広く支持されている。

スペイン語で制作されているSpotify限定配信の実録犯罪ドラマ「FAUSTO」はメキシコを中心に爆発的な人気を獲得し、多言語化なども検討されているほどだ。

再注目される音声コンテンツの可能性  ――Spotify Japanに聞くポッドキャストの今

スペイン語で制作されているSpotify限定配信の実録犯罪ドラマ「FAUSTO」

18年初頭の段階で、Spotifyで聞けるポッドキャストの番組数は約1万だった。だが、アメリカやヨーロッパなどでの盛り上がりを受け、スポティファイ・テクノロジーは既存のポッドキャスト番組をSpotifyで聞けるように整備し、オリジナル番組も制作。現在、Spotifyで聴取可能な番組数は約70万まで増加しているという。

また音声コンテンツは映像に比べてローカライズが簡単なため、海外のヒット番組を日本向けに展開する事例がこの先増えていくだろうと芦澤さんは予想する。

また、ユーザーの好みの傾向からその人にあった音楽とポッドキャスト番組を一つのプレイリストにまとめて提示する「Your Daily Drive」というサービスがアメリカとヨーロッパの一部の国で始まっており今後、日本でも利用可能になる予定だという。

「音楽とポッドキャストが織り混ざったプレイリストは、自分だけのオリジナルなラジオ局を持てるのと同様のことかもしれません」(同)

なぜ音声コンテンツが求められるのか

映画、アニメ、漫画、SNS……現代は様々な視覚を使うコンテンツが乱立し、ユーザーの可処分時間を奪い合っている。

その中で、音声コンテンツには、通勤しながら、家事をしながら、ジョギングしながらなど、『ながら聞き』ができるという利点がある。

「満員電車の中では、スマートフォンを手に持って映像やゲームを楽しむのは難しいと思います。音声コンテンツなら、スマートフォンにイヤホンを接続すれば、通勤やペットの散歩中、寝る前など、シーンを選ばないため生活との密着度も高いです」(同)

エンターテインメントの情報量の多さにユーザーは疲弊している。だからこそ、“受動的”に享受できるポッドキャストが再注目されているのかもしれない。

また、ユーザーが求めているものが多様化していく中で、その要望にピンポイントで応える番組を配信できるというのも大きな強みだ。

「ラジオではどうしても最大公約数のリスナーに向けた番組作りにならざるを得ないかもしれません。ポッドキャストなら誰でも自由に番組を制作することができるため、ニッチな内容でも数に制限なく制作・配信することが可能です。ラジオ局などのプロが制作したポッドキャスト番組よりも、リスナー数や平均聴取時間、番組への愛着度が高いアマチュア制作のマニアックな番組もあります。更新頻度も高いため、パーソナリティーの人柄や熱量が伝わりやすいんだと思います」

SpotifyはコンテンツをSNSでシェアしやすいインターフェイスとなっているので、同じカルチャーに興味がある人同士がコミュニティーを作りやすく、それがまたリスナー数の増加につながるという流れになるという。

世界一にのぼりつめた「ヒプノシスRADIO」

日本では過去数年、地上波ラジオ局が独自にコンテンツを配信するなど、ポッドキャストを聞くプラットフォームが細分化し、またポッドキャストの番組も語学系や海外ニュースなどに偏っていた。

しかし、昨年頃よりこうした状況も変化しつつあり、Spotifyでは昨年秋にスタートした「ヒプノシスRADIO -Spotify Edition」が大きな話題を呼んだ。

これは「ヒプノシスマイク」という男性声優18人による音楽原作キャラクターラッププロジェクトのキャラクターがパーソナリティーを務める番組だ。

ヒプノシスRADIOは、“特定のポッドキャスト番組を目的にSpotifyに新規登録したユーザー数”で世界一の数字を出しており、グローバル規模で注目されている。また、ヒプマイのポッドキャストから入ったユーザーが、関連楽曲やプレイリストなど音楽を聴取する割合も非常に高いという。

ヒプマイのように熱心なファンのコミュニティを持つコンテンツが、この先増えていくかもしれない。しかし芹澤さんは、ヒットの要因をアニメや声優のコンテンツということ以外にも見る。

「ポッドキャストとヒプマイの相性が良かったのだと思います。特に、『ヒプノシスマイクの架空のキャラクターが自分の相談に答えてくれる』という特別感やリスナーとの距離の近さがファンには堪らないコンテンツとなったばかりか、ラジオ番組のオンエア後、ラジオでは流れなかった未公開パートも含めて即時に更新することでソーシャルでの盛り上がりが増し、ポッドキャストを訪れることが習慣化することが要因として考えられます」

おすすめ番組ベスト3

最後にSpotifyで聞ける、&Mの読者にオススメのポッドキャスト番組を三つ紹介してもらった。

◇フューチャートーク by News Picks

「ソーシャル経済メディア「News Picks」が制作するトーク番組。テクノロジーを中心に、最新のカルチャーやビジネスが語られます。落合陽一さんの著作を読んでいるような方にぴったりです」

 

◇三原勇希×田中宗一郎 POP LIFE:The ポッドキャスト

「モデルの三原勇希さんと、音楽評論家の田中宗一郎さんが今熱いカルチャーについて語り尽くす番組です。毎回1時間を超えるボリュームで、いい意味でダラダラしていますが(笑)、パーソナリティーの熱量も伝わってくる。こういうところもポッドキャストの良さだと思います」

 

◇サッカーを語ろう MUNDIAL JPN Podcast

「イギリス発のサッカーライフスタイルカルチャー雑誌の番組。試合やプレイのことだけでなく、サッカーにまつわるカルチャー全般を扱っているので、サッカーに関心がない人でも楽しめる、入門にも最適な内容です」

今後ますます増えていくであろうポッドキャスト番組。豊富なラインアップの中から気になるものを手繰っていけば、あなたがまさに「聞きたい!」と思えるものにきっと出会えるはず。ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

(文・張江浩司 写真・林紗記)

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PROFILE

張江浩司

1985年北海道生まれ。居酒屋店主、タレントマネージャーなどを経て、2020年よりフリーランスのライター、司会、バンドマン、イベンターとして多岐にわたり活動中。傍目からは「あの人何して生活してるの?」とよく言われる。レコードレーベル「ハリエンタル」主宰。

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