Jリーグ「FC東京」支えるボランティアと、選手にも芽生えたボランティア・マインドPR

プロサッカーJリーグの「FC東京」は22年の歴史を持つ伝統あるクラブだ。最近、ちょっとした変化が生まれている。一つは、選手らとともにホームゲームの運営を支える「FC東京・スポーツボランティア(スポボラ)※」に集まる人の多彩さ。地元の市民が中心だが、遠方から都市を「越境」してまで駆けつける人が現れた。もう一つは、FC東京を背負って立つ選手たちの新たな活動だ。選手たちは試合やトレーニングの合間を縫ってピッチを離れ、社会貢献活動に精を出す。両者は互いのボランティア・マインドを軸に、どう影響を与え合っているのか?

※2020年1月、「FC東京・市民スポーツボランティア」から改称

<トップ写真=FC東京の矢島輝一選手(左)と児玉剛選手(右)>

「日常を越境する」醍醐味を味わう

文教大学大学院生の渡部啓亮さん(25)は、大学で学ぶ傍ら、いくつかのサークル活動に所属してアルバイトにも精を出し、さらに積極的にボランティア活動にも出かけていく。そんな、ミレニアル世代の典型のような学生生活を満喫している。

ボランティア活動への熱の入れようは、相当なものだ。大学の学部生のころから、災害支援やマラソン大会のボランティアなど、さまざま経験してきた。東京2020大会では、ボランティアの育成やサポートをする事業にも携わっているという。

そんな渡部さんがハマっているのが、「FC東京・スポーツボランティア」。通称“スポボラ”だ。活動を始めて、もう4年目になる。千葉県野田市在住だが、チームの本拠地である「味の素スタジアム」(東京都調布市)まで、片道2時間半かけて通っているというから驚きだ。

Jリーグ「FC東京」支えるボランティアと、選手にも芽生えたボランティア・マインド

集合して、ボランティア活動についてミーティングするスポボラのメンバー(FC東京・スポーツボランティア提供)

「片道で2時間半だと、まるで小旅行みたいですよね」

渡部さん自身、小中学校時代はサッカー部に、高校時代は陸上部に所属していた。どちらの競技も、地域のボランティアに支えられているが、選手だったころは特に意識することもなかったという。

ところが、大学の仲間とさいたま国際マラソンのボランティアに参加してから、スポーツボランティアに目覚めた。

「選手として参加した時には、給水所の水をいかに時間のロスなく取れるかばかり気にしていたけど、後から振り返れば、その水を用意してくれていた人たちがいたよなと。僕はボランティアを『する側』になって、新しいスポーツの味わい方を知ったんです。裏方として大会を多くの人と支えるのも楽しい」

それから、「単発のボランティアだけで終わらせるのは、もったいない」と思うようになった。大学3年の時、継続できるスポーツボランティアはないかと探すうち、「FC東京の活動は組織もしっかりしていて、楽しいよ」と知人から紹介を受けた。そこで、ウェブサイトの募集ページから申し込んだ。参加してみて、何より魅力に感じたのは、「自分と違った年代の人と会えること」なのだという。

「僕が日常的に付き合うのは、学校のサークルやバイト仲間。その世界で生きていると、説明なしで何でもわかりあえる心地よさはある。でも、スポボラでは、わざと普段は身を置かなくていいような環境に自分を置いている、みたいな意識があります」

Jリーグ「FC東京」支えるボランティアと、選手にも芽生えたボランティア・マインド

ゴミ回収の協力を呼びかけるスポボラのメンバー(FC東京・スポーツボランティア提供)

FC東京のスポボラには、企業に勤める人や定年退職した人、主婦として長年地域の活動に関わってきた人など、様々なバックグラウンドの人が参加している。自分が知らない地域の歴史、住民が地元を盛り上げようとボランティア団体創設に立ち上がった当時のこと、チームとともにある街の変化――。年配の地元住民から、そんな話を聞く中で、地域に根づく生き方も知った。

さらに、スタジアムに訪れる人たちとの触れ合いもまた、刺激の連続だ。車いすの人をサポートするなかで、健常者と障がい者との壁にも遭遇する。最初は会話の糸口を探すのに戸惑うこともあるけれど、次第に壁を感じなくなり、冗談を言い合える仲になる。そんな得難い経験も重ねられる。

「自分のコミュニティの中ではなかなか関わることがない人たちと関わっていくなかで、コミュニケーションの壁を突破していく。それって、達成感があるんですよ。僕が実感しているのは、ボランティアは『日常を越境するもの』だということ」

会社帰りの「ボランティア会議」で意見飛び交う

スポボラの活動は2001年にスタートした。まだ建設中のスタジアムが、FC東京のホームになると決まったことから、府中、三鷹、調布の3市のサッカー関係者や地元住民が集まり、「地元の人は何が出来るか?」と話し合いを始めた。「市民が関わるのなら、ボランティア活動がいいね」と意見がまとまり、今の組織に。現在、10代後半から70代まで約350人がスポボラに登録し、一試合あたり平均して70人ほどが活動している。

試合開始前に観客を座席に案内する「総合案内」のほか、持ち込みが禁止されている缶やビンを回収する「飲み物の紙コップ移し替えサービス」、試合後に行うスタンドの「ゴミ拾い」……と、活動の範囲は広い。

クラブ発足時からスポボラの活動を知る、FC東京の久保田淳・地域コミュニティ本部長は、参加する市民の熱量の高さを目の当たりにしてきた。

「我々、FC東京の会議室をスポボラの方々にお貸ししているんですが、試合の数日前、お仕事帰りにもかかわらず、皆さん集まられて、侃侃諤諤(かんかんがくがく)、議論を交わしている。新しいボランティアさんが困らないように、どうやってガイドしたらよいか、とか。若いメンバーもいて、それを年配の人たちが見守りながら育てていくようなコミュニティの結束力も凄い。そんな風景を眺めていると、スポボラ自体が一つの社会になっていると感じます」

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FC東京地域コミュニティ本部長の久保田淳さん

最近、スポボラ側からは、試合の運営サポートのみならず、クラブが取り組む「社会貢献活動」にも参加したいという声が上がっているという。

「クラブとスポボラとの協働は、今後の課題の一つです。とにかくスポボラの皆さんの前向きさは、もう感心するしかないレベル。私どもも負けないようにしないと」

この「社会貢献活動」は、選手が試合やトレーニングの合間に、主にピッチの外で展開する地域活動だ。最近は復興、病気、障がいといった社会的課題を支援する活動が増えてきた。「子どもたちの未来につながる活動」と、「障がい者スポーツの支援」と、大きく分けて2つの柱がある。

新しい活動に舵を切った背景には、観客数の伸びがここ数年、鈍ってきたことも背景にあるという。

「足を運んでくれるお客さんの層を広げるには、これまでサッカーとつながりのなかった人たちへもアプローチする必要が出てきました。そのためには、地域の中で共有する話題や言葉を持つ必要があります。社会課題を起点に一緒に起きている問題を解決する中で、『FC東京さん、ありがとう』と言われる存在になれるかもしれない。『ところであなたたち、何をやってたんだっけ?』と聞かれたら、そこで初めて、『僕らはサッカーのプロ選手です』と言える。迂遠なようですが、こういう順番で興味を持ってもらえたらと考えているところです」

昨年は、被災地での復興支援活動と小児病院への訪問活動のどちらかにFC東京の全選手(怪我の選手を除く)が関わった。これは、「選手会」の活動の一環だ。

子どもたちと触れ合い、「当たり前じゃない日常」を実感

ゴールキーパーとして2019年、FC東京に移籍してきたばかりだった児玉剛選手(32)は、都立小児総合医療センターへの訪問活動に手を挙げた。

「最初は選手会としてそういう活動があるから行こうと。やれることだったり、自分が力になれることがあるんだったら、やりたいっていう気持ちは持ってたので」

10名の選手が2人組になり、5つのグループに分かれて入院中の子どもたちを訪ねた。児玉選手が触れ合ったのは、心の病気を抱えた子どもたちだ。

「できるだけ寄り添って、一人ひとりに向けて少しでも元気が出るような言葉を考え、一緒に楽しもうという気持ちで触れ合いました。自分は健康で、周りに家族がいて、毎日自分の食べたいものを食べ、サッカーができているけど、それは当たり前なことじゃないんだと再確認できました。今、僕たちはいろんな方に夢を与えられる仕事に就けているので、それを誇りに思い、少しでも夢を与えられるよう、もっと努力しなきゃいけないと感じました」

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東京都立小児総合医療センターを訪問し、子どもたちと交流する児玉剛選手(FC東京提供)

子どもたちからかけられた言葉もうれしかった。

「『応援してるよ』『サッカー大好き』って言ってくれる子どもたちも多かったです。普段スタジアムに来てくれてる人だけでなく、そこに足を運べない子どもたちの顔も、浮かぶようになりましたね」

病院で長時間子どもに付き添う親たちからも、新たな刺激を受けた。

「病院にいる時間は当然長くなるだろうし、生活リズムは病院に合わせなくちゃならない。入院先から学校に通っているお子さんもいて、お母さんお父さんは調整が大変だろうなと。そういう苦労があるのに、すごい笑顔で僕たちに接してくれて、本当に強いんだなって」

児玉選手は、活動の意義をこう語った。

「選手会として決められた活動もあるのですが、それにとらわれず、個人でやれることが目の前にあれば、やりたいと思う。幅広くいろんなことに興味を持って、人の役に立てれば、相乗効果で選手たちの気持ちもよくなっていくと思う。それによって、クラブとしても強くなっていき、結果にも結びつくと僕は信じているんです」

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インタビューに答えるFC東京の矢島輝一選手(左)と児玉剛選手(右)

選手会の会長を務める矢島輝一選手(24)は、試合やトレーニングの厳しいスケジュールの合間を縫ってでも、社会貢献活動に参加しようという気運が、チームの中に高まっていると話す。

「どんなにスケジュールが詰まっていても、『こんな活動があるんですが』と提案すると、『あ、いいね!』と、まずは古くからいる先輩の選手が話にのってくれる。そうすると、後輩たちが『じゃあ、僕はこれに参加します』と手を挙げてくれて。無理に意識を形成しなくても、僕らはやれることをやるんだというモチベーションが今、このチームにすごいあると感じます」

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FC東京の矢島輝一選手(左)と児玉剛選手(右)

地域に根ざして活動を継続することの大事さ

FC東京が、地元の自治体や学校、企業などと連携して取り組んできた地域貢献活動としては、地元の中学生を対象に行うサッカー教室がある。2001年から続けてきた。最近では、知的障がいのある子どもたちを対象にしたサッカー教室も開催している。

その延長線上で、4〜5年前からは少年院でサッカー教室を行うようになった。昨年からは、「出院後も地域で活躍してほしい」という地域の人々の願いから、在院生の社会復帰をサポートする目的で法務省と連携し、少年院の子たちを練習場に迎え、職場体験してもらう取り組みも始めた。

久保田本部長はいう。

「20年の歩みの中で、長いこと地道に続けてきた活動が形を変えながら、今につながってきたと実感しています。点と点がつながり、それぞれの活動が線になっていくような。新しいことに踏み出すにも、地域に根ざして一つひとつの活動を継続することが大事だと、改めて感じています」

FC東京(正式名称:東京フットボールクラブ株式会社)
創立:1998年10月1日
代表取締役社長:大金 直樹
住所:東京都調布市下石原1-2-3 TSOビル
URL:https://www.fctokyo.co.jp

FC東京・スポーツボランティア
代表:吉田 英樹
URL:https://www.fctokyo.gr.jp/


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