ロジスティクス+SDGsで新たなビジネスを。イノベーションで社会課題を解決PR

外出しなくてもネット通販などを利用すれば、商品や食事が届けられる便利な時代。一方で、ドライバー不足などの問題が起こり、物流の現場は疲弊している。そのひずみを実感させられたのが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響だ。マスク以外にも意外な生活用品が店頭から消え、十分にあるはずの品物が買えない状況に社会が陥っている。

私たちの生活を巡るモノの流れにはどのようなイノベーションが求められるのだろうか。物流やロジスティクスの専門家で、「Meiji.net(メイジネット)」やさまざまな媒体などで積極的に活動する明治大学専門職大学院の橋本雅隆教授に解説してもらった。

サプライチェーンの分断が人々の混乱を招く

私の専門を中高生向けに説明するとすれば、「わたしたちの日常生活に必要で便利な商品がどうやってコンビニの棚にいつも並んでいるのか」「ネット通販で注文すると、なぜ家に翌日届くのか」ということに対して、その背景にはどんな社会の仕組みがあるのか、どんな仕組みにすればよりよく実現できるのかを研究する分野です。

物流やロジスティクスを知ると面白いのは、社会の中でマッチングがうまくいっていないと、物流に表れるということ。不良在庫の問題がまさにそうです。「必要なモノやサービス」と「それを満たすモノや能力」のバランスがうまくコントロールできていないと、そうした問題が表面化するのです。

サプライチェーンというのは縁の下の力持ちのような存在で、私たちは普段あまり意識することはありません。コンビニに行けばいろんなモノが24時間あって、ドラッグストアに行けばマスクがあるのが当たり前。ところが、今回の大きな地震や台風、新型コロナウイルスのような災難が起こり、サプライチェーンが分断されると、人々は生活に困ってしまい、その存在をあらためて意識することになります。

「物流危機」は、今まさに目の前の危機として迫っています。運送業のドライバーは鉄道貨物協会によると2028年に約28万人不足すると言われていますが、既にさまざまな問題が起こっています。東京五輪で多くの人々が国内外から集まったときにも、ドライバー不足や交通渋滞の中で選手や観光客に食事や日用品をきちんと供給できるのか、その対策が検討されているところです。

ロジスティクス+SDGsで新たなビジネスを。イノベーションで社会課題を解決

生活のあり方を変え、維持可能な社会と経済を

災害などによってサプライチェーンに破たんをきたすのは、モノだけではありません。生活を支えるエネルギーも同じです。2019年9月に千葉県が台風15号で被害を受けた際には、長時間の停電によって大きな損害を受けた企業がありました。リスクに備えて非常用のバッテリーを確保するなどのBCP(事業継続計画)を普段からしっかり立てて備えておくことが、企業には求められています。

災害に伴う流通の混乱に対しては、行政も企業も、一般家庭も、このような事態を想定したシナリオをかならずしも十分に準備できていなかったのではないでしょうか。便利さを追求するあまり、緊急事態へ備えは手薄になっていたといわざるを得ません。東日本大震災などの災害を経験して一時的にはリスクへの意識が高まりましたが、それを常に持ち続けるのはなかなか難しいのかもしれません。

しかし、私は、問題のより深い根源にあるのは時代の大きな変化にあると思うのです。以前のように、ひたすらモノを作って売って消費する、それによって資源を大量に消費し、経済を拡大することがもはや許されなくなっている時代になったのではないでしょうか。資源には限りがあり、過剰に資源を浪費することは環境破壊につながります。また、日本ではこれから労働力が減っていきます。便利で安いものをどんどん作って経済成長を追求するのではなく、どうやって自然環境やこの社会を維持していくのか。それを社会や経済の目標にしなければなりません。

考えてみれば、私たち生活者は現在、消費者として非常に便利な生活を享受する一方で、働き手(労働者)としてはそうした便利なサービスを実現するために疲れ切ってしまう、そのような大きな矛盾を抱えているように思うのです。もう一度、真に幸福な生活とは何かを考え直し、便利さ・快適さと適度な労働条件のバランスをどのようにとるか、生活者としての在り方を見直すべき時に来ていると思うのです。

モノを作って届けるというサプライチェーンは、ロジスティクスの一つの側面に過ぎません。モノやインフラを「どうやって長く、事故なく使うか」という、メンテナンスやサポートの仕組みがロジスティクスのもう一つの側面です。これをライフサイクル・サポートといいます。

たとえば社会インフラでは、高度成長期に続々と作った道路が今、老朽化して問題になっています。もはやスクラップ・アンド・ビルドの時代の考え方では難しく、今ある道路や建物をメンテナンスしつつ長く使い続けることに取り組まなければなりません。そうしたライフサイクル・サポートの技術やビジネスがより重要になってくるのです。

ロジスティクス+SDGsで新たなビジネスを。イノベーションで社会課題を解決

社会課題はイノベーションを生み出すチャンス

生活を変えるという話をすると、将来が大変だと思われるかもしれませんが、実はこれは大きなビジネスチャンスでもあるのです。世の中には今、有効に使われていないモノがいっぱいあります。シャッターの下りている商店街や、大量に廃棄されている弁当、私たちの空いてしまったコマ切れ時間。これらの使われていない社会的資源と、不足しているモノやサービスとうまくマッチングさせる新しい仕組みを生み出すことです。これはヨーゼフ・シュンペーターという著名な経済学者が言ったことですが、革新を意味する「イノベーション」は、世の中になかった全く新しいものを生み出すことだけを指すのではなく、今あるモノや技術の新しい組み合わせを作り出す“新結合”にその本質があるのです。

こうした新しいマッチングを生み出す上で大切なのが情報です。生活者の空き時間に、自分の近所の宅配の仕事があるという情報を見て請け負うといった仕組みも導入され始めようとしています。災害で物資が不足している際にも、サプライチェーンがどういう状態にあるかを情報として可視化できれば、必要な物資を不足している場所に供給し、混乱を少なくすることができるかもしれません。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む今、それはけっして実現できないことではないはずです。

このような“新結合”をビジネスとして実現しようという人が、既存の企業に限らずいろいろなところから登場し始めているようです。

SDGsにも通じる「善き目的」のビジネス

新しい革新を起こそうという人には、どのような能力が求められるでしょうか。それは、社会を俯瞰(ふかん)的に眺め、多様な人々とコミュニケーションして問題点を発見し、どのようにすれば解決できるかを論理的に考え、粘り強く、なおかつ柔軟に実現化の努力を惜しまない人でしょう。これにもう一つ加えるとすれば、「善き目的」を持つことではないでしょうか。新しいビジネスモデルをデザインするときに、儲(もう)けを考えることはもちろん大切ですが、「多くの困っている人を助けたい」といった社会的な動機も重要です。多くの人々の共感を得て支えてもらえるような「善き目的」がないとビジネスは成功しないと思うのです。

最近、国連が取り決めた、世界で取り組むべき社会的な目標にSDGs(持続可能な開発目標)があります。ビジネスとの関連が薄いと考えている人も多いかもしれませんが、実は、サステナブルな社会をつくるということは、ビジネスに最も直結していると言えます。環境や人手不足などの解決すべき社会課題はたくさんあり、それらはビジネスと結びつけることができます。社会経済、私たちの暮らしを末永く維持するという「善き目的」を持ったビジネスは、誰からも支持され、多くの需要があるからです。そうした新たな仕組みがビジネスとして成立するための工夫が求められているのです。

身近なことで考えてみても、今年のように学校が突然休校になると、親が働いている子どもたちの面倒を誰が見るのかという問題が起こります。そこで、元気な地域のお年寄りや若い学生さんたちに面倒を見ていただければ、多世代共生にもつながります。お年寄りにはその分のポイントを地域通貨などで支給して、自分が将来に介護を受ける際にそのポイントが使えるとか、学生さんの進学や就職の推薦ポイントになるといった仕組みを 、DXをうまく使って実現できれば面白いと思うのです。そうした新しい仕組みに出資する人がいて、人材紹介、医療・介護、保険、教育ビジネスと連携すれば新たなビジネス・プラットフォームが形成されて、財政負担も軽減できるかもしれませんし、社会の維持に役立つでしょう。

社会やビジネスには「サステナブル」が求められています。自然環境や地域を大切にしてきた伝統があり、高齢化の最先端を進む日本には、新しいビジネスや社会のモデルを生む土壌があります。そして、サステナブルという意味では、次世代の人を育てる「教育」も重要です。「財を遺(のこ)すは下、事業を遺すは中、人を遺すを上とす」という言葉があるそうです。私も教育現場を通じて貢献していきたいと考えています。

ロジスティクス+SDGsで新たなビジネスを。イノベーションで社会課題を解決

橋本 雅隆(はしもと・まさたか)
明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
[研究分野]流通論、物流論、ロジスティクス論、サプライチェーン・マネジメント
1979年に早稲田大学理工学部卒、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。明治大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。博士(商学)。東京都庁、横浜商科大学教授、目白大学教授、一橋大学客員教授などを経て現職。日本物流学会副会長。『現代物流システム論(共著)』(有斐閣)、『自動車部品調達システムの中国・ASEAN展開(共編著)』(中央経済社)、『ロジスティクス概論(共著) 』(実教出版)など、著書論文多数。

提供:明治大学
明治大学の情報発信サイト「Meiji.net」では、ビジネス、国際、IT、教育などの社会のあらゆるテーマについて、明治大学の教授陣が独自の専門的な視点からわかりやすく解説しています。

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