今日も激坂日和

短距離に濃縮された達成感にハマる! 「牧馬峠」(神奈川県相模原市)

「あそこの坂はエグいですよ」

そんな言葉とは裏腹に、どこかうれしそうな中山洋一さん。東京西部から神奈川、山梨にかけての坂という坂を上りまくっている八王子のロードバイク専門店オーナーだ。ライダーたちと全国の激しい坂を巡る連載「今日も激坂日和」。今回は中山さんが憑(つ)かれたように何度も上っているというお気に入りの激坂「牧馬峠(まきめとうげ)」を紹介する。

疲れているときほど足が向く魔性の坂⁉

【動画】坂マニアが自転車で上る「牧馬峠」

ヒルクライムレースで何度も表彰台に立っている中山さんが、もっともレースに出ていたのは30代の頃。脱サラしてロードバイク専門店をオープンして、激動の日々を送りながらも、坂を上りまくっていた。

「ロードバイクは楽しんで乗るもの」がモットーの中山さんだが、仕事で疲れたときなど練習に出るのがキツいと思うときはもちろんある。そんなときに決まって足が向くのが、牧馬峠だという。

「いや、めちゃくちゃキツい坂ですよ。でも距離は短いし、短時間でも結構ハードな練習になるんです。それに途中で足をついたら、そこから続けることはできないと思うから、休まず上るしかない。練習いやだなーって気分のときほどここに来て、自分を追い込むんです」

のどかな里山風景が豹変する

暗い林道に“激坂印”とも呼ばれる丸い滑り止めが出現。勾配「12%」の標識があるが……

暗い林道に“激坂印”とも呼ばれる丸い滑り止めが出現。勾配「12%」の標識があるが……

牧馬峠は、神奈川県相模原市藤野地区と「道志みち」(国道413号)との間に位置する峠道。道志みちは東京2020オリンピックのロードレースコースにも選ばれているメジャーな道なので、そちらから上ってくるローディ(ロードバイクユーザー)は結構多い。でも中山さんが上るのは、決まって藤野側からだ。

「こっちから上っていくのは、いわゆる“坂バカ”と呼ばれる方々が多いですね」

スタート地点は民家が点在するのどかな里山風景。ところが、1.5kmほど走ると雰囲気が豹変(ひょうへん)する。路面は激坂につきものの丸い滑り止めが刻まれたコンクリ舗装になり、勾配はいきなり10%オーバーに。以降600m、距離としては短いものの、足と心臓を痛めつける上り坂がひたすら続くのだ。

勾配「12%」の標識が信じられない

すぐ隣に頭上を走る坂が見える。勾配も当然のようにキツい

すぐ隣に頭上を走る坂が見える。勾配も当然のようにキツい

激坂区間に突入すると、路肩に「12%」と勾配を示す標識がいくつも現れる。これを見た中山さんは、「いやぁ、12%ってことはないでしょ。もっとあるはず」。

確かに、実際に勾配を測ってみると最大勾配は15〜16%ある。さらに数々の坂を上ってきた中山さんの実感では、10%以上の勾配がほぼ緩むことなく続く過酷さや、ヘアピンカーブを越えた先の道が頭のすぐ脇を通っていることから、標識やデータ以上に精神面でキツさを感じるらしい。

テクニックはもちろん、メンタルが鍛えられる

10%オーバーの勾配をグングン上っていく中山さん

10%オーバーの勾配をグングン上っていく中山さん

峠の頂まで上りつめると、道志みち側へ下る手前に大型車を制限するゲートがある。おかげで牧馬峠は交通量が非常に少ない。

「車と出合うことはめったにないから、走りやすいのもいいんですよ」

中山さんが営むロードバイク専門店の走行会(2020年4月現在、新型コロナウイルス感染拡大予防のため休止中)でも、牧馬峠は走りやすくて激坂を楽しめると人気のコース。中山さんは、ロードバイクのスキルを上げて、レースやロングライドに挑戦したいという仲間は、必ずここに連れてくるという。

「『え? こんなキツイ坂あるの?』って経験しておくと、本番でも気持ちが折れないんですよね」

レースの表彰台クラスになると、テクニックはもちろんのこと、メンタルの強さも求められる。そんなことを伝えるには、キツい激坂を走ってもらうのが一番なのだ。

強いヒルクライマーほど下りは安全第一

最後のヘアピンカーブまで心を折るような激坂。メンタルまでしっかり鍛えられる

最後のヘアピンカーブまで心を折るような激坂。メンタルまでしっかり鍛えられる

「1日に2回、3回上ることもありますよ」という中山さん。上っているときは間違いなくキツい。けれども短距離なので、ついつい「もう1本行ってみようか!」となるらしい。苦労して上った分、爽快な下りも楽しんでいるのかと思いきや……。

「いや、下りはとにかく安全第一。ブレーキかけまくりです」

まさに上るために下る、生粋の坂マニアである。じつは強いヒルクライマーほど、下りでリスキーな走りはしないのだとか。そんな中山さんお気に入りのブレーキシューは、BBBウルトラストップハイパフォーマンス。「とにかくよく止まる」ので、牧馬峠クラスの激坂でも安心して下れる。

短距離ながら、ヒルクライムに欠かせない様々な要素を濃縮して学べる。それが牧馬峠なのだ。

ブレーキシューBBBウルトラストップハイパフォーマンス。高い制動力で激坂の下りでも安心

BBBのブレーキシュー、ウルトラストップハイパフォーマンス。高い制動力で激坂の下りでも安心

<今回の激坂>

「牧馬峠」
神奈川県相模原市
全長:約2.3km
獲得標高:158m
最大勾配:15%

 

<今回の激坂チャレンジャー>

中山洋一さん
八王子市のロードバイク・マウンテンバイク・クロスバイク・BMX専門店のオーナー。毎週土日にお客さんとの走行会を開催、東京西部・神奈川・山梨の坂を上り続けている。Mt.富士ヒルクライム、東京ヒルクライムなど数々のレースに出場、入賞経験も多数あり。
Firstbikes International (ファーストバイクス インターナショナル)

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PROFILE

依田賢吾

photofarmer(フォトファーマー)。出版社勤務を経て、フリーランスに。アウトドア、ライフスタイル、食、農業、環境など自然系のテーマを中心に取材活動を続ける。モットーは自給自足。取材・撮影(スチル・ムービー)・執筆・編集まで自前でこなすほか、無農薬無化学肥料で米や野菜をつくる農業も営む。

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