CROSS TALK ―クロストーク―

佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略

各界の第一線を走るクリエイターやアーティストらによる対談シリーズ「クロストーク」。今回登場するのは、『奇界遺産』シリーズをはじめ国内外の奇妙な光景を撮り続ける写真家・佐藤健寿さんと、「ヒューストン・バレエ団」のプリンシパルを務めるバレエダンサーの飯島望未さんです。

互いに「全く接点のない世界の人」と感じながら始まったこの対談。話していくうちに「閉鎖的な業界で活動している」という共通点が見つかり、それぞれの仕事についてたっぷり語り合う展開に。好きなことと売れることをどう両立するか? コア層とライト層、どちらに向けた活動に力を入れるべきか? 2人の話は白熱します。

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  • 佐藤健寿×飯島望未

    佐藤健寿×飯島望未「自分のスタイルを確立していくより、いつまでも柔軟でいたい」

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    佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略

    佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略
    佐藤健寿(さとう・けんじ)

    写真家。世界の自然物・人工物・タブー・奇習などを対象に撮影、取材、執筆を行う。世界80カ国以上を巡って撮影された写真集『奇界遺産』(エクスナレッジ)シリーズは異例のベストセラーに。著書に、『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『SATELLITE』(朝日新聞出版)、『奇界紀行』(角川学芸出版)、『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』(朝日新聞出版)など。テレビ朝日『タモリ倶楽部』などテレビ出演も多数。
    WEB:kikai.org Instagram: @x51

    佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略
    飯島望未(いいじま・のぞみ)

    バレエダンサー。15歳で単身渡米し、ヒューストン・バレエ団と当時最年少契約でプロデビューを果たす。スイスのチューリッヒ・バレエ団への移籍を経て、再びヒューストン・バレエ団に戻り、2019年3月より同バレエ団トップのプリンシパルを務める。ファッション関連の活動も多く、VOGUEやHarper’s BAZAARなど名だたるモード誌に登場。18年よりCHANELと契約し、現在同ブランドのビューティーアンバサダーを務める。
    Instagram:@nozo0806

     

    身体表現をめぐる2人のコンプレックス

    佐藤健寿(以下、佐藤) ぼくが飯島さんのことを知ったのは本当偶然なんです。たまたま東京でロケハンをしていたとき、スタッフから「ここどうですか?」って動画が送られてきて。新宿に軍艦マンションっていう有名な建築があるんですけど、そこで踊ってるかっこいい映像が飯島さんだったんですよね。

    飯島望未(以下、飯島) 『VICE Japan』と『i-D』、それにシャネルの香水のコラボレーション映像ですね。

    佐藤 映像もそうなんですけど、踊ってる飯島さんがかっこいいなと思って。僕は実は昨日まで、飯島さんはコンテンポラリーの変わった踊りをする人なのかなって思ってたんですよ。それで印象に残ってて、今回女性との対談というお話をいただいたので、お相手は飯島さんがいいなと。

    飯島 お知り合いにダンサーは?

    佐藤 いないんです。僕は美術大学の映像学科の出身で、その時一緒のチームにバレエをやっていた人がいたくらいです。よくつま先立ちなんかを撮ってました。ウィリアム・フォーサイスってわかります?

    飯島 よく踊ります。コンテンポラリーダンスの巨匠ですよね。

    佐藤 僕が大学にいた2000年前後って、「身体表現と映像」みたいな作品がメディアアートの世界では結構流行(はや)っていて。フォーサイスとか、あとはバレエではないですけど京都にもダムタイプというパフォーマンスアーツのグループがあって。その頃から体の動きとかダンスってなんだろうという疑問がずっと自分の中にありました。

    僕は写真、音楽、文章、映像と、自分の手を使って表現することはひと通りできるという自負がありますが、その一方で、体を使って何かを表現するとか、ましてやそれを人前で見てもらうことは今後も絶対にやらないだろうなと思います。今日のちょっとした撮影だけでもあがっちゃってダメなんですよ。身体表現に対してコンプレックスがあるから、だからこそ飯島さんが気になりました。

    飯島 純粋に「(対談相手が)なぜ私なんだろう?」って思いました。全然接点もないし。ただ、あのダンスの映像を見て、私がコンテンポラリーダンサーだと思ってる方が結構多くて、実際あれからユニークな撮影やお仕事を依頼されることが増えました。

    私自身はクラシックバレエでずっとやってるから、逆にコンテンポラリーの人に憧れというかコンプレックスがあるんです。それで一時はヨーロッパに行ったんですけど。

    佐藤 コンテンポラリーの勉強に?

    飯島 ダンサーとしてもっと表現の幅を広げたくて。アメリカのコンテンポラリーってウィリアム・フォーサイスとかイリ・キリアンというバレエベースの作品はいっぱいあるんですけど、マイナーなハードコア作品はなかなかないので。ただヨーロッパで挑戦したものの、「バレリーナすぎる」と言われて、やっぱりそうなんだなって。

    佐藤 (ポップスを歌ったときの)演歌歌手みたいな感じですかね。

    飯島 なんでもこぶしがきいてしまうみたいな(笑)。それで「やっぱり自分はクラッシックやわ」と再確認してアメリカに戻ったんです。だから佐藤さんにコンテンポラリーダンサーと思われていたのはすごくうれしい。まあ「ふたを開けたらちゃう(違う)か」ってなるわけですが(笑)。

    佐藤 でもそれがいいんじゃないですか? 素人意見ですけど飯島さんにはクラッシックがベースにあるから、いきなりコンテンポラリーをやってる人とは基礎が違う。

    飯島 ベースがないと型を崩せない面はありますよね。

    佐藤 ぼく自身コンテンポラリーをわかっているのかあやしいですが、でもあの映像は全体の印象と飯島さんの存在感がとても良かった。今こうして目の前で見ると、当然女性なんですけど、映像の中だと中性的どころか無性的で。

    飯島 ああ。顔が薄いからか、メイクや衣装、髪形ですごく変わるって言われます。「自分てなんやろ?」って思うんですけどね(笑)。

     
     
     
     
     
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    閉鎖的な業界の裾野を広げるために

    佐藤 モデル活動もされてるのは依頼があるから? それとも自分でもやりたいと思ってですか?

    飯島 最初は依頼でしたけど、それがきっかけでバレエを知ってもらえたり、SNSを通して「バレエ観(み)に行きました」と言ってくれる人が増えたんです。だから今はバレエに貢献する意味でやってる面がありますね。

    ただ、こんなこと言うとあれかもしれないですけど……私はバレエがめっちゃ好きですし踊ることにも情熱はすごくありますが、将来的には裏方のほうが向いてる気がしているんです。日本のバレエってすごく閉鎖的だし、チケットが売れないからダンサーにも販売ノルマがあったり、お給料も歩合制だったりして。

    佐藤 バレエで食べていける人はほんの一握り。

    飯島 本当にそう。だからこの状況がもう少し改善できればいいなと。せっかく日本で生まれたのに、日本で踊りたいと思えるカンパニーがない。なんかもったいないなって。

    佐藤 裏方に回るって後進の育成のことかと思いきや、もっと別の話なんですね。

    飯島 私、教えるのがめっちゃ下手なんで、先生ではないですね。環境作りに協力できたらいいなとか、日本でバレエ団以外の舞台を作ってとか、もっとパフォーマンスする環境を作りたい。会場も少なくなってきてるから。

    佐藤 海外だとあるんですか? 自分のカンパニー以外でも。

    飯島 ありますね。私のヒューストン・バレエ団もシアターを持っているんですけど、他にもパフォーミングアーツシアター(芸術劇場)が周りにいっぱいあるので。

    佐藤 それだけファンの層が厚い。

    飯島 むしろ「今日初めてバレエを観にきました」みたいな人もすごく多いんです。特にヒューストンはアートへの関心が高いなと感じています。アーティストのサポートをする人もすごく多いですから。

    佐藤 実は写真業界も似たような状況です。ぼくがテレビに出たり、インスタをやったりするのも、それによって多くの人が興味を持ってくれたらいいなと思うから。

    実際、写真業界ってすごく狭いんですよ。例えば日本の写真界の一つのゴールという意味でいうと、「木村伊兵衛写真賞」が日本で一番権威のある写真賞だとされていますけど、去年その大賞を取ったのが誰だったのか、街の人に聞いてもたぶんほとんど言えないと思います。文学の芥川賞とか直木賞も話題にならなくなったと言われて久しいですけど、その比ですらない。

    飯島 確かに。

    佐藤 賞金も100万円。閉鎖性といい賞金といい、すごく夢のない世界だなって思って。僕は一般大学から美術大学に入ったんですけど、美術の世界もすごく閉鎖的で、たとえば友達が映画を撮ったりすると、友達しか見に来ない。詩の雑誌も書き手しか読まない。写真展も撮ってる人しか見に来ない。どれも絶対にペイしない世界というか。そういうのをずっと見てきたから、やりたいことをやりながら、どれだけマスに広げられるかというか、間口をでかくするか、ということをこの10年やってきたんです。

    好きなことと売れること 両立の難しさと葛藤

    飯島 日本のバレエと同じですね。でも最近コンテンポラリーが流行ってて、それこそ音楽のプロモーションビデオでコンテンポラリーダンサーを使ってみたりとか、その流れはすごくいい。

    ただ、さっきも知り合いと話していたことなんですが、玄人目線で頑張っていくのか、それとも一般の人にむけて何かを感じてもらいたいから表現するのか……理想はどっちにも響いたらいいんでしょうけど……。見方が全然違うから、どうすればいいんだろうね、というのが最近の悩みです。

    佐藤 僕も同じです。この数年はテレビとかメディアにすごく出て、フォロワーもたくさん増えたんです。でもそうなってくると、だんだん彼らの望んでいるものを出さないといけなくなる。たとえば写真集を出そうってなった時も、部数のことを考えなくちゃいけないとか。こっちが本気でやりたいことをインスタに出しても意外と反響がないみたいな。やりたいことと、ついてきてるファンとの間に乖離(かいり)が出てきて、どこでバランスをとったらいいのかというのを絶えず考えてます。

    飯島 売れなくても困るし、好きなことができなくなるのも困りますよね。

    佐藤 そもそも日本の美大は良くも悪くもピュアというか。作家として成立するとかそういうことを抜きに、とにかくいい作品を作ろう!という世界なんですよね。僕はアメリカの美大にも通いましたが、写真の授業でもその評価点が日本と全然違う。

    僕が通ったアメリカの美大では、テーマは学生それぞれの思いがあるからほぼ問題としない。それよりも額装が1ミリずれているとか、それが商品として成立するかを厳しく見られます。ただ作家になることが目的ではなく、作家として継続していくためのより実践的な指導内容でした。 日本だと芸術家は商売ではないみたいな謎の信仰が根強くあって、その結果として、いい作品を作っているのに食えない作家がたくさんいる。

    飯島 私もインスタとかで知らない人に「モデル活動されてますけど、バレエの世界はそんなに甘くないですよ」とかって言われて、「はぁ……忠告ありがとう」って(笑)。

    佐藤 そういうねたみをぶつけられること、結構ありそうですね。

    飯島 佐藤さんは売れるものとやりたいことのバランスをどう取っていますか?

    佐藤 僕の場合は本当にちゃんとやることをやってれば、あとはもう何をしててもいいやと。誤解されればされるだけ面白いかな、とも思っています。だから仕事の依頼がきた時は、ピュアな写真業界のことを想像して、「業界の人たちは絶対にやらなそうだな」と思ったらやろうみたいな。実際、賞をもらうよりテレビに出た方が写真集は断然売れるんですよ。そういう売れ方を良しとしない考えもありますが、僕はいいかなと思います。

    飯島 テレビの影響は大きいですよね。

    佐藤 裾野が一気に広がりますよね。テレビに出るといきなり離島のコンビニとかで声をかけられたりする世界になるわけですよ。おばちゃんとか子供に「いつも見てますよ」「好きです」なんて言われて。この人たちの期待や関心に沿うものが僕の作品にあるかわからないんだけど、どっちにしても放っておいたらただ閉鎖した界隈(かいわい)の中でぐるぐる回るだけなので、外に開かないといけないとずっと思っています。

    飯島 私も日本で踊るときとアメリカで踊るときは全然違って、でも私も自分の表現したいようにしていれば、結果はついてくるし評価してもらえると思ってるところは佐藤さんと同じかもしれません。ただ、アメリカでは演技力が受けるというか、私もそちらを得意としているし見てほしいんですけど、やっぱり日本ではテクニックがすごく受けるので、そのバランス配分が難しいですね。

    (構成・熊山准 撮影・関めぐみ)

    佐藤健寿×飯島望未 「閉鎖的な業界」で活躍する2人の葛藤と生存戦略

    トークはまだ続く

    対談の後編は&wにて! 時間の使い方や心身のととのえ方など、2人が仕事を充実させるために大切にしていることを明かします。

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