日本はウマい

<02>下関なら絶対にフグ? いや、アンコウと鯨も食べてほしい。そのうまさに驚くから

全国の飲食店巡りをライフワークとするグルメジャーナリスト・マッキー牧元さんが、2019年に訪れた300軒近くの中から、心に響いた地方の飲食店を紹介します。今回は下関の「AKAMA布久亭」です。

     ◇◆◇

下関「AKAMA布久亭」(以下、布久亭)で鯨を食べた。ん? 下関なら、フグだろうって? そう下関は、フグがおいしいところで知られている。

しかし、瀬戸内海、日本海、関門海峡という三つの異なる自然条件の海に囲まれた下関が、豊富で質の高い魚種に恵まれていることは、あまり知られていない。「三海の極味」とうたい、自らの産物を誇っていることも、あまり知られていない。

ここに来たら、フグだけでなく、様々な魚を食べなくてはいけない。中でもアンコウがおいしいと聞いて、この店にやって来た。ところがアンコウ料理の前に是非とすすめられたのが、鯨料理である。

鯨の尾の身に宿る「生命として譲れない風味」

<02>下関なら絶対にフグ? いや、アンコウと鯨も食べてほしい。そのうまさに驚くから

鯨刺し身盛り合わせ

下関は、近代捕鯨の発祥地で、大洋漁業、大洋ホエールズも、下関で創業したという。鯨の刺し身はなんと生で、しかも希少なミンク鯨である。

尾の身(尾の付け根あたりの肉)は、馬刺しのような、軽やかな鉄分が口の中に広がり、嚙(か)んで温まってくると、ほわりとした優しい甘みと、相反する凜々(りり)しさが一体となった一筋縄ではいかないうまみが出てくる。それは動物的でもあり、生命として譲れない風味なのかもしれない。

<02>下関なら絶対にフグ? いや、アンコウと鯨も食べてほしい。そのうまさに驚くから

鯨のベーコン

片やベーコンは、脂の部分を嚙むと、すっと歯が入っていく。そして香りをそっとしのばせる。肉は歯を押し返しながら、塩気の中に甘みを漂わせる。肉質がいいミンク鯨でしかできないという、厚切りがうれしい。

 

さえずり(舌)の肉の部分は上等なハムである。品のいい甘い香りがあって、美しく、脂は、ザクッと歯が入り、2〜3回目でふんわりとなって、10回目から溶けていく。そしてもう、自分の舌かクジラの舌か区別がなくなる。こんな色気のあるさえずりは、初めて食べた。

 
<02>下関なら絶対にフグ? いや、アンコウと鯨も食べてほしい。そのうまさに驚くから

鯨のさえずり(舌)

 

アンコウの魅力は抜群の歯ごたえにある

鯨を堪能したら、今度はアンコウをいってみよう。アンコウの胃袋とタケノコのあん肝味噌(みそ)和えに始まり、9種類の料理をいただいた。

下関の人たちは、アンコウをよく食べるのだという。たとえば唐揚げといえば、フグかアンコウで、たまに鶏だというし、スーパーでも一年中、フグかアンコウの唐揚げが売っているという。

アンコウの唐揚げ

アンコウの唐揚げ

アンコウの魅力とは、まず、その歯ごたえにあるのではないだろうか。張った身の中に潜むたくましい歯ごたえや、歯を押し返す骨周りの透明なコラーゲン、軽快に弾む胃袋、皮、腸、肝など、様々な歯ごたえが、命を食べている感を加速させるのだ。

アンコウの唐揚げは、ぐっと歯を入れて嚙みちぎる勇猛さを搔(か)き立てられるのがいい。胸ビレは、ツルッと唇に甘えてくる。一番おいしいのが骨つき肉で、骨の周りに透明な筋というかコラーゲンが、みっちりとついていて、それを歯でむしりとる喜びがある。

あん肝ソテー

あん肝ソテー

アンコウ料理の中で、最も良かったのが、肝のソテーだった。血抜きしたあん肝をいったん昆布を敷いて酒蒸しにし、冷ましてからソテーし、玉ねぎ、酒、しょうゆなどによるジャポネソースを絡めたものである。下には、昆布だしで炊いた大根を敷いてある。

蒸したあん肝より味わいに膨らみがあり、また肝のいやらしさがみじんもなく、周囲の焦げた香ばしさと中のムースのような甘みが合わさって、白ワインが恋しくなる料理だった。

下関のアンコウは優しい。目の前で捕れて、すぐに使い切るからだろう。味が澄んでいる。だからいけないことに、いくらでも食べられてしまうのだった。

<02>下関なら絶対にフグ? いや、アンコウと鯨も食べてほしい。そのうまさに驚くから

アンコウ鍋

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旬楽館2号店AKAMA布久亭

フグ料理、鯨料理、アンコウ料理と下関ならではの魚料理が食べられる店。アンコウ料理のラインアップは以下の通り。
 ・「アンコウの胃袋と筍(たけのこ)のあん肝味噌(みそ)和え」
 ・「あん肝と菜の花の奉書巻」
 ・「アンコウの煮こごり」(スッポンに味わいが似ている)
 ・「アンコウのたたき」(ぐっと力を入れた歯が包まれ、嚙み続けるとほの甘いような味が滲み出てくる)
 ・「あん肝ソテー」
 ・「アンコウの杉板焼き、木の芽ソース、こごみ」(加熱するとうまみが増し、コラーゲンのたくましさが目覚める)
 ・「アンコウの唐揚げ」
 ・「アンコウの肝味噌」(すりつぶしたあん肝と肝のみじん、みそ、一味を合わせて、寝かせたもの)
 ・「アンコウ鍋」

■店舗情報
山口県下関市阿弥陀寺町7-8
083-242-0772
営業時間:平日 11:00~15:00(L.O.14:00)/ 17:00~22:00(L.O.21:00)*日・祝は21:00(L.O.20:00)まで
定休日:月
公式サイトはこちら

布久亭より新型コロナウイルス感染対策についてのお知らせ

◆店舗の消毒について
当社では、お客様に安心してご利用いただけるよう、店内を消毒するなど新型コロナウイルス対策を徹底しております。

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店頭にお客様用アルコール消毒液を設置しております。ご自由にご使用ください。

◆当社の従業員について
当社では出勤時に必ず健康チェック(発熱、嘔吐、家族の体調不良者)を行っています。手洗いは、石鹸液と消毒液による洗浄と殺菌を徹底し、こまめに行っています。予防対策として、マスクを着用し、ご対応させていただく場合がございます。

◆営業時間について
営業日・営業時間の変更をさせていただく場合がございます。営業時間の変更状況は各店にお問い合わせください。

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PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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