インタビュー

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

芸歴25年を超えるベテランのお笑いコンビ「アンジャッシュ」。ツッコミの渡部建は多趣味で博識な芸人として知られ、情報番組のMCなどで広く活躍する。一方、ボケの児嶋一哉も“いじられキャラ”として全国ネットのバラエティー番組ですっかりおなじみの存在となっている。

そんな2人の唯一の冠番組が千葉テレビ『白黒アンジャッシュ』だ。視聴できるのは千葉テレビのほか地方の独立局など15局と限られているため、見たことない方もいることだろう。2人のフリートークや注目の若手芸人を交えたコントなど、今やキー局では見られないアンジャッシュの“素”が全面に出ている番組として人気がある。

昨年10月、同番組は放送開始から15周年を迎えた。様々な番組が立ち上がってはすぐに消える中で、『白黒』がここまで続いた秘訣(ひけつ)は何だったのか? アンジャッシュの2人に聞くと、うそとも本当ともつかない意外な言葉が返ってきた――。

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『白黒』で若手芸人と絡んでおくと、全国ネットで共演したとき楽

――『白黒アンジャッシュ』はお二人にとってどういう番組なんでしょうか?

渡部建(以下、渡部) 2人でしゃべるための場という感じですね。近況報告みたいなトークをしたり、即席でコントをやったり。僕らがそういうことをやるのはここだけなんです。

児嶋一哉(以下、児嶋) 1カ月に1回収録があるんですけど、こんなことがあった、今こういう仕事してるっていうのを渡部にはここで話しています。楽屋ではわざわざそんな話をしないじゃないですか。そういうのを発表する場として普段からちょっと意識しているところはありますね。これ、『白黒』で話せるな、とか。

――キー局ではそれぞれお一人での出演も多くなりました。それもあって、『白黒』でお二人だけでトークしている姿が新鮮な感じがします。

渡部 そうですね、2人で出る番組も減っているし、2人でトークするっていうことはもうほとんどないので。

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

――ゲストが幅広いというか、結構若手の芸人も出たりしますよね。

渡部 吉本芸人に関しては、幕張の劇場(よしもと幕張イオンモール劇場)に来ている芸人を捕まえる感じです。劇場の出演情報を調べて、「あっ、この日来てるな」ってブッキングするんです。ここ(千葉テレビ)まで来てもらうのも大変ですからね。

児嶋 若手の芸人とはだいたいここで初絡みして、全国ネットや東京の番組でまた会うんです。ここでガッツリ絡んでるから、次に会ったときに結構やりやすいんですよね。

――確かにゲストのことを結構深く掘り下げていますよね。

渡部 30分番組で2週分撮るので、しっかりコンビの成り立ちを聞いて、僕らとの接点を聞いて、4人で企画をやることになりますからね。

例えば初対面だと、そもそもなんて呼べばいいかっていうところから始まるんですよ。ミキだったら「亜生(あせい)くん」「昴生(こうせい)くん」って呼ぶことになるけど、それだとちょっと距離が遠いじゃないですか。でも、1回絡んでいると2回目からは「おい、亜生、昴生」っていきなりいけるんですよ。その方が向こうもやりやすいと思います。

児嶋 こっちが先輩だから、向こうも初対面だとイジりづらいんですよね。でも、1回絡んだことがあれば結構ポンとイジってくれるので助かりますよ。

渡部 後輩任せじゃん(笑)。

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

――いわゆる「第7世代」(*1)と呼ばれるような最近の若手芸人と接していて、自分たちの世代との違いを感じることはありますか?

渡部 どうでしょうね。世代でくくられるのはかわいそうだとも思いますけどね。第7世代ってあそこまでパッケージされちゃうと、勢いがあるときはいいけど、失うときも速いと思うので。

そういう意味では僕らは結構ラッキーだったんです。『ボキャブラ』(*2)の世代がいて、その下に『オンバト』(*3)とか『エンタ』(*4)の世代がいて、僕らはその真ん中ぐらいでふわっとしていたんですよ。だから、『ボキャブラ』にも出ていたし、その後はパッと下の世代のところに入って、『オンバト』や『エンタ』にも出られたんです。

*1
「お笑い第7世代」=主に平成生まれのお笑いタレントの総称。霜降り明星、ハナコ、ミキ、四千頭身などが代表的な存在とされる

*2~4
『ボキャブラ天国』=1992年~99年放送/フジテレビ系
『爆笑オンエアバトル』=1999年~2010年放送/NHK *後継番組『オンバト+』(オンバトプラス)が2010年~14年放送
『エンタの神様』=2003年~10年(その後は不定期放送)/日本テレビ系

『白黒』は全く反響がない番組

――『白黒アンジャッシュ』がこれだけ長く続いている理由は何だと思いますか?

児嶋 不思議なんですよね。スポンサーが一つもついていない時期があったり、終わる終わると言われたのに終わらなかったり。

――ずっと人気があって続いているわけではないんですか?

児嶋 いや、人気がないっていうわけではないんですけど、「『白黒』見てます」とか聞いたことないんですよね。

――視聴率もあまり良くない時期もあったそうですね。

児嶋 良くないどころか、僕はここのスタッフに「数字が出ないんです」ってウソをつかれていたことがありました(笑)。今でもあんまり教えてくれないんですよね。

 

――長く続いている理由について、渡部さんはどう思われますか?

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

渡部 気負いがないことじゃないですかね。スタッフも僕らも「絶対に続けてやる」って思っている人間がマジで1人もいない。視聴率を取ろうとか、そういう目標がないんですよね。志がない。これのためにこれをしないといけない、っていうのがないから、余分な力みがないんです。単に2人が会ってしゃべる場であり、ゲストが来てくれたらうれしい、ぐらいのことなので。

児嶋 たまにスタッフに「何かやりたいことある?」って聞かれるんですけど、「いや、特にないです」って答えちゃいますね。本当にそんな感じなんです。スタッフがいろいろやろうとすることもあるんですけど、「別にこのままでいいです」っていつも言ってます。

――打ち合わせもそんなにしないと聞いたんですが。

渡部 一応、台本を見るぐらいですかね。とにかく番組の反響がないんですよ。反響があったらちょっとは気にするじゃないですか。あれが良かったな、良くなかったな、って。そういうのがないですからね。千葉でよくロケをするんですけど「『白黒』見てます」って1回も言われたことないですよ。

反響がないし、やりがいもないんです。でも、だから続いたんだと思います。もっと真剣に向き合っちゃってたら、逆に終わっていたと思います。

――でも、それだけ続けてこられたっていうのは、やめようとは思わなかったということですよね。忙しい時期であれば、千葉まで来て収録するだけでも大変だったのではないかと思うのですが。

渡部 やめようっていう気も起きないですね。「がんばろう」もないから「やめよう」もない。今はまだましですけど、死ぬほど忙しかった時期もこの番組はずっとやってましたからね。振れ幅がなくて、凪(なぎ)がずっと続いてるんです。

児嶋 やめようとは思わないですよ。やめるのは結構なパワーが要りますからね。

――「やりがいは何ですか?」っていう質問も聞こうかと思っていたんですが、さっきの話だとそれもないということですよね。

渡部 この番組に関しては達観していて、悟りの境地に入っています。ギャラもずっと変わってないですからね。ギャラを上げようっていうバイタリティーもないです。

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

児嶋 普通15年やってたらギャラって結構上がるもんですけどね。

渡部 ウソでも上げようとする姿勢はあるものじゃないですか。こんなにネット局は増えているのに何も変わらないです。

――逆にそれが良かったんですかね。

渡部 本当にそうです。感情とモチベーションが変わらないので。

児嶋 変に力を入れたら終わっちゃっていたんじゃないんですかね。これぐらいのかかわり方がちょうどいいんじゃないかな。

――ある意味では、一番普段の状態に近いお二人が見られる番組でもあるのでしょうか。

渡部 そういうことかもしれないですね。タレントさんがたまに「見てるよ」とか言ってくれるんですけど、嫌ですからね(笑)。あんまり見てほしくない。恥ずかしいです。

――15年続いて、800回を超えて、これからどのぐらい続くのかも気になりますが「1000回を目指してがんばる」というような意識はありますか?

渡部 あんまり意識したことないな。1000回ってことはあと4年後か。まだやってそうだな。

児嶋 逆にいつどう終わるんだろうって思いますね。まあ、でも、一応「1000回目指してます」って言っておいた方がいいのかな。いや、急にこういうこと言ったら終わるのかな?(笑)

(聞き手/ラリー遠田 撮影/野呂美帆)

★後編はこちら

「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

アンジャッシュ
1993年結成のお笑いコンビ。児嶋一哉と渡部建による緻密に作られたコントが高く評価され人気を博す。2010年以降はそれぞれ単独での活動も増え、児嶋は俳優業で注目を集める一方、渡部は番組MCや小説を発表するなど多方面で活躍する。

■番組情報

白黒アンジャッシュ
アンジャッシュの初&地上波唯一の冠番組! 他局では見られないアンジャッシュの白(表)と黒(裏)がここに。

千葉テレビ 毎週火曜 23:00~23:30/土曜 24:30~25:00(再)
番組公式サイトはこちら

<千葉テレビ以外の放送局>
札幌テレビ放送/秋田放送/とちぎテレビ/群馬テレビ/テレ玉/TOKYO MX/tvk/三重テレビ/広島ホームテレビ/西日本放送/テレビ金沢/サンテレビ/静岡第一テレビ /KBS京都 /熊本放送(2020.4月現在)

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