インタビュー

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

お笑いコンビ、アンジャッシュへのインタビュー企画。前編では、昨年15周年を迎えた冠番組『白黒アンジャッシュ』(千葉テレビ)が、今の2人にとってどんな意味を持つのかを聞いた。

後編では、コンビの足跡を振り返る。緻密に作り込まれた“すれ違い”コントで知られるアンジャッシュは、その芸風や端正な佇(たたず)まいから、デビューからしばらくスタイリッシュで知的なコンビという印象を強く残してきた。

だが、この10年でツッコミの渡部建はマルチタレントとして活躍し、ボケの児嶋一哉は俳優業で注目を集める存在に。コンビで出演するときも、渡部が児嶋の天然キャラを際立たせるなど、若手時代からは想像もつかないかけ合いで笑いを生み出している。

こうした立ち位置の変化が生まれた背景にあったものとは何だったのか。そして今や2人の鉄板ネタとも言える「児嶋だよ!!」をバラエティー番組で繰り出すようになったきっかけとは――。

【関連記事】
「目標もないし、やめようという気も起きない」 アンジャッシュが悟りの境地に達した冠番組

2007年からコンビの暗黒期が始まった

――『白黒アンジャッシュ』が始まったのは2004年ですが、その頃と比べるとお二人の芸能界でのポジションも大きく変わったのではないでしょうか。当時のご自分たちを振り返ってみるとどう思われますか?

渡部建(以下、渡部) 僕らは2004年ころからしばらくはネタブームに乗って調子が良かったんですけど、07年ぐらいからダメになってきたんです。世間ではそんな印象ないかもしれないですけど、07年~09年は暗黒期で、10年ぐらいからまたちょっと忙しくなってきたって感じですかね。決してずっと順風満帆ではないです。

もともと正統派コントグループだったのに、今はこういうふうになって、芸能界でこんなポジションにいるわけじゃないですか。いろいろ紆余(うよ)曲折があった16年だなと思います。「シュールでスマートなインテリジェンスあるボケみたいなイメージでしたけど、今は真逆になっちゃった」って児嶋のことをイジってたら、僕も全然違う感じになっていて。僕だって今はほとんどお笑いの仕事をしてないですからね。

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

――07年ころから低迷していたというのは、具体的にはどういう状態だったんでしょうか?

渡部 ネタ番組以外の仕事がなくなってしまったんです。僕は帯で生放送のラジオをやるようになって、児嶋は1人で単独ライブをやったりしていました。本当に「どうしよう、どうしよう」みたいになって、とにかく時間があるからいろいろやんなきゃと思って、僕は資格をたくさん取ったりしていました。

――そのときは何とかして次の武器を見つけたい、という感じだったんでしょうか。

渡部 何かをしないと仕事が来ないっていう感じですよね。その頃、同世代の芸人とテレビに出たときに、明らかな力不足を感じたんです。だから、何か武器を持たなきゃって漠然と思っていました。

――渡部さんは今ではグルメ情報に精通しているとか、高校野球に詳しいというキャラクターを確立していますが、その頃から意識的に情報を集めたりするようになったんでしょうか?

渡部 そうですね、ちょうどSNSが出てきた時期で、自分の好きなことを発信できるようになりました。そうしたらちょっとお仕事を頂けるようになったので、やるからには超真剣にやろうと思ったんです。

――今では仕事の予定よりもグルメ関係の予定の方を優先しているそうですね。

渡部 それも当時からですね。ただ、今はグルメのことをテレビで発表する機会もなくなっていて、SNSとかオンラインサロンとか、テレビ以外のところで発信することが増えたかもしれません。もともとはテレビに出るためにグルメをやっていたんですけど、逆に今は普段食べているものをメディアで紹介できる機会がないんです。

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

「え? これウケるの?」 きっかけは芸人たちの意外な反応

――児嶋さんの方は、11年ぐらいから、わざと名前を間違えて呼ばれて「児嶋だよ!」と返すイジられキャラとしてテレビに出るようになりました。

児嶋一哉(以下、児嶋) そのぐらいの時期でしたっけね。もともと楽屋ではそうやってイジられていたんです。それがだんだんバレていったというか。同世代の芸人や渡部からイジられて、そのとき大声でツッコんだらウケて。「え、これウケるの?」みたいな。それでだんだん自分でも「この感じで行った方がいいんだな」と思い始めたんです。

――それまではなぜそういう部分を表に出せなかったんでしょうか?

児嶋 だって、僕はダウンタウンの松本(人志)さんに憧れてましたから。松本さんはそんなことしてないじゃないですか。だから絶対にそんな部分は見せちゃいけないんだと思ってました。でも、自分と松本さんは全然違うんだな、っていうのにようやく気付きました。

――児嶋さんがテレビでもイジられるようになったきっかけはあったんでしょうか?

児嶋 たぶん、くりぃむしちゅーさんとか、バナナマンとか、アンタッチャブルとか、楽屋で僕をイジっていた同世代の芸人たちとテレビで絡むようになったからだと思います。その人たちは収録中も楽屋そのままの感じでやるじゃないですか。それを見たダウンタウンさんや(明石家)さんまさんが「こいつ、こんなやつなんだ」ってイジってくれるようになったんだと思います。

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

――そういう部分を表に出したことで、気持ちが楽になったりしましたか?

児嶋 それこそ04年~07年の頃って、テレビに出ても居場所がなかったんですよね。MCの人も、僕のような見た目も普通でどうイジっていいかわからないやつには触れないじゃないですか。

かといって僕は自分からワーッと行くのもそんなに得意な方じゃないし、なかなか前に出ていけない。けど、イジられるっていうキャラが1個見つかってからは、「あ、ここは俺の出どころだな」っていうのが見えてくる。そうすると、番組に貢献できた気がしてだんだん楽しくなってきました。

――その辺りからご自分でもバラエティー番組になじんできた感じがあったんですね。

児嶋 それが素の自分ですからね。もともと持ってないものだったら続かなかったかもしれないですけど、自然にできることだったからどんどん出していけたんだと思います。

――お二人は最初コントで出てきたという印象がありますが、最近ではコントをやる機会が減っているのではないかと思います。またやりたいという気持ちはありますか?

渡部 もちろんやりたいし、やらなきゃなっていう思いはありますね。ただ、すぐにはできないと思います。やると決めたらちゃんと調整しなきゃいけないですからね。

児嶋 ライブがいいのかどうかわからないですけど、何かやらなきゃなっていう思いはあります。でも、今の若手のネタとか見たら「うわ、すげえな」って圧倒されちゃうし、いろんな思いがありますね。

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

――渡部さんは最近、ご自分のYouTubeチャンネルを立ち上げていましたが、あれはどうして始めたんでしょうか?

渡部 あれはSNSを始めるくらいの感覚でのんびりやろうかなと思っていたんですけど、登録者数が思ったように増えなくて、のんびりできない状況になっていて……(笑)。もがいてますね。

――『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)でも登録者数の少なさをイジられたりしていましたね。

渡部 まあ、ありがたいですけどね。イジられると登録者数が増えるんで。新しいことを考えたりやったりするのは楽しいですよ。これからもYouTubeではいろいろやろうかなと思っているので、宣伝しておいてください。

――例えば、コンビとしてお二人で新たにYouTubeを始める可能性はありますか?

渡部 そうですね、そういうのも考えていかないと、と思いますけどね。いろいろやり方があるみたいなので、検討中です。

(聞き手/ラリー遠田 撮影/野呂美帆)

>>前編はこちら

「松本人志への憧れ」が気持ちにブレーキをかけていた 「児嶋だよ!!」誕生の背景とアンジャッシュの紆余曲折

■プロフィール

アンジャッシュ
1993年結成のお笑いコンビ。児嶋一哉と渡部建による緻密に作られたコントが高く評価され人気を博す。2010年以降はそれぞれ単独での活動も増え、児嶋は俳優業で注目を集める一方、渡部は番組MCや小説を発表するなど多方面で活躍する。

■番組情報

白黒アンジャッシュ
アンジャッシュの初&地上波唯一の冠番組! 他局では見られないアンジャッシュの白(表)と黒(裏)がここに。

千葉テレビ 毎週火曜 23:00~23:30/土曜 24:30~25:00(再)
番組公式サイトはこちら

<千葉テレビ以外の放送局>
札幌テレビ放送/秋田放送/とちぎテレビ/群馬テレビ/テレ玉/TOKYO MX/tvk/三重テレビ/広島ホームテレビ/西日本放送/テレビ金沢/サンテレビ/静岡第一テレビ /KBS京都 /熊本放送(2020.4月現在)

あわせて読みたい

「総合力で澤部に勝てる芸人はいない」ハライチ岩井勇気の相方論

「“最大瞬間風速”を更新し続けるのが天才の宿命だ!」水道橋博士が語る天才論

劇団ひとりは、なぜ「天才」と呼ばれるのか? テレビ東京・佐久間宣行プロデューサーが語る「天才」の条件

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

「日常と自由を手放さぬために、映画の灯を取り戻す」 想田和弘監督、ミニシアターを救う“仮設の映画館”を始動

一覧へ戻る

活動30年スカパラ流チーム結束のコツ リーダー立てず、コラボプロジェクト、海外進出成功へ〈前編〉

RECOMMENDおすすめの記事