小川フミオのモーターカー

コンパクト車の特性を追求した“5平米カー” 初代ダイハツ・シャレード

ダイハツは小型車の分野でいい仕事をしているなあと思わせるメーカーだ。軽自動車を得意としてきたが、いわゆる普通乗用車の分野でも、使い勝手のいいクルマを作っている。私がとりわけ記憶しているのは、「シャレード」だ。

(TOP写真:1980年10月のマイナーチェンジまでは丸型ヘッドランプで個性を演出)

77年に発売された初代シャレードの特筆点は、パッケージング。中は広く外は小さくと、使い勝手の面から、コンパクト車の特性を追求したのだ。

全長3460ミリと、4ドアハッチバックボディーは比較的コンパクト。「5平米カー」といわれた。メーカー自身は発表当時この言葉は使っていなかったと思う。なにはともあれ、これは「路面投影面積」のこと。軽自動車のそれが4.8平米とされていた。

マリンウィンドーを備えたクーペ

マリンウィンドーを備えたクーペ

軽自動車のサイズをほんの少し超えるだけの大きさ(実際のシャレードは5.2平米)であるものの、55psのエンジンは当時世界唯一の993ccの3気筒4ストローク(いまは欧州にも多い)なので、28psの547ccエンジンを積んだダイハツの軽自動車「MAXクオーレ」と比較してもはるかにパワフル。

後席空間はやや狭いとはいえ、大人が乗るには、軽自動車よりはるかに快適であった。シャレードの成功は他社を大いに刺激し、リッターカーというジャンルが生まれたほどだ。

MAXクオーレの上級グレードが69万7000円(77年)であったのに対して、シャレードはほぼ10万円高ぐらい。もちろん軽自動車には自動車税が安いなど優遇措置があるので、どっちが高いかなど単純な比較は出来ない。でも、シャレードは“クルマ”としての価値が高かったといいたい。

ハッチゲートの切り欠きは上のほうで、実用上はやや不便

ハッチゲートの切り欠きは上のほうで、実用上はやや不便

 

シャレードの大きな魅力だった「路面投影面積」のことをもう少し。あまり使われない概念だけれど、クルマが道路をどれだけ占有するかを指している。大雑把にいうと、全長×全幅だ。これが小さければ、狭い場所で扱いやすい。渋滞緩和にも役立つ。

昨今は自動車のボディーサイズが大型化しているけれど、当時、シャレードで“ちっさいなあー”などと思うことはなかった。2人乗りが多いなら、今でも十分なはず。

フォルクスワーゲン車を思わせるチェック模様のシートなど、いい意味でカジュアルで、欧州的なデザインが散見された。そこもよかった点。

面の作りこみに個性はないけれどバランスのとれたプロポーションを持つ

面の作りこみに個性はないけれどバランスのとれたプロポーションを持つ

当時、クルマを買う“若者”は、走りで選ぶか、スタイリッシュさで選ぶか、いくつかの選択肢を持っていた。前者を重視する人は、たとえば翌78年にトヨタが発売した「スターレットKP型」を好んだ、といった具合。

スターレットは小さなボディーなのに後輪駆動。ゆえに操縦性の高さが評価された。ダイハツは一方で、効率重視でシャレードを前輪駆動にした。これも一つの見識だ。

弱点をみつけるとしたら、個性に乏しい機能主義的なボディースタイルだ。ダイハツの販売現場でもおそらく同じように感じていただろうか。78年に2ドア「クーペ」が登場。

初代は82年いっぱいまで生産された

初代は82年いっぱいまで生産された

個性を出すため、クーペでは、リアクオーターパネルに「マリンウィンドー」と呼ぶ丸い窓を開けていた。確かに、今シャレードというと、このクーペがすぐ頭に浮かぶほど視覚的なインパクトはあった。

地味といえば地味。でも私たち(と社会)が必要としているものはなにか、と考えたとき、これが一つの解なのだ。小さなクルマの存在感は決して薄くなることはなさそうではないか。

(写真=ダイハツ提供)

【スペックス】
車名 ダイハツ・シャレード
全長×全幅×全高 3460×1510×1360mm
993cc直列3気筒 前輪駆動
最高出力 55ps@5500rpm
最大トルク 7.8kgm@2800rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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