小川フミオのモーターカー

いかにもフランスという造形美の商用バン シトロエン2CVフルゴネット

クルマというとイコール乗用車、と捉えられがちだけれど、機能を追求している商用車にも、みるべきモデルが少なくない。例えば、街中で活躍するデリバリーバン。

後席から後ろの窓をふさいだいわゆるパネルバンなど、荷物を運ぶ車で、今はミニバンがベースになっている。でも、シトロエンが51年に発表した「2CVフルゴネット」はいかにもフランス的な乗用車である2CVがベース。強い個性を感じさせるモデルだ。

(TOP写真:シトロエン2CVフルゴネット。1975年の「AKS400」というモデル)

AK400のコード名にあるとおり最大積載量は400キロ

AK400のコード名にあるとおり最大積載量は400キロ【もっと写真を見る】

フルゴネット(fourgonnette)は英語にするとデリバリーバン。配達用に使われるコンパクトサイズの商業車を指す。今でこそ、貨物用のパレットのサイズに合わせて車体が大型化しているけれど、2CVフルゴネットの時代はこぢんまりしていた。

かまぼこ形のルーフがユーモラスにみえる

かまぼこ形のルーフがユーモラスにみえる【もっと写真を見る】

2CVフルゴネットは、78年までと長寿を誇ったクルマであるだけに、80年代前半まではフランスのいたるところで出くわした。郵便局が使っていたり、農家が収穫物を組合まで運んだり、工事会社の作業員が道具を搭載していたり、といった光景はしょっちゅう見たものだ。

あるいは、あのフルゴネットは何を運んでいるんだろう、と荷室の中身を想像する楽しみもあった。私は子どものときから今にいたるまで、路上でトラックを見るとそう思う。積み荷は何だろう。どこから来て、どこまで行くのだろう。異国の地で見かけるこのクルマも同様の楽しみを与えてくれた。

初期のモデルはステアリングホイールもスチールむきだし

初期のモデルはステアリングホイールもスチールむきだし【もっと写真を見る】

ベースの2CVは、シトロエンが、出来るだけ多くの人に乗ってもらうことを目指して48年に発表した、コンパクトな4ドア車だ。前輪駆動の利点を生かして、さまざまなボディーバリエーションが作られたクルマである。

シトロエンでは、フランスにおける比較的小さなサイズのフルゴネットの需要は高くなっていくと、30年代から考えていたという。2CVの開発過程で、フルゴネットの計画も同時に進められたようだ。

51年のパリ自動車ショーで発表された

51年のパリ自動車ショーで発表された【もっと写真を見る】

全長3805ミリとかなり小さなボディーだが、運転席の後ろに取り付けられたかまぼこ形の荷室は可能な限り大きくしてある。実際に、使っている人が「何でも積める」と言っているのを、私は聞いたことがある。

資料で数字をみても、荷室内部は、高さ1170ミリ、奥行き1480ミリ、幅1000ミリとある。一枚の鉄板をぐるりと回したような形状で、シンプルな設計。大きなトラック的な姿だが、工作精度があまり高くなさそうな形には、手作りを思わせる温かみがあるのだ。

このように荷室に補強用のリブを入れた仕様もある

このように荷室に補強用のリブを入れた仕様もある【もっと写真を見る】

エンジンは小さな2気筒で、当初は375ccしかなかった。それが425cc、さらに602ccまで上がった。とはいえ、めいっぱい回して走らないと交通の流れに乗れない。

そのときの「バタバタバタッ」とでも表現したくなる空冷エンジンの音もかわいらしく、全体としてユーモラスで、見ただけで笑顔になってしまう。商業車は日常的に出くわすクルマなので、こういうの、大歓迎だ。

【フォトギャラリー】はこちら

(写真=PSA提供)

【スペックス】
車名 シトロエン2CVフルゴネット400
全長×全幅×全高 3805×1500×約1640mm
425cc空冷水平対向2気筒 前輪駆動
最高出力 12馬力(9.3kW)@3200rpm
最大トルク 19.6Nm@2000rpm

あわせて読みたい

コロナ禍が「省力化、時短」を後押し デジタル技術で進化した自動車デザイン現場

世界一魅力的なトラック「シトロエン・タイプH」

究極のベーシック「シトロエン・メアリ」

小川フミオのモーターカー:連載一覧はこちら

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

コロナ禍が「省力化、時短」を後押し デジタル技術で進化した自動車デザイン現場

一覧へ戻る

開発者の心意気が伝わった マツダの救世主「初代デミオ」

RECOMMENDおすすめの記事