THE ONE I LOVE

日本人が誇れるアーティストを目指して 本格派シンガー・遥海が選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回はシングル「Pride」でメジャーデビューを果たした期待の本格派シンガー・遥海(はるみ)がセレクトした5曲を紹介する。

挙げられた楽曲群に共通しているのは、いずれも「I Love You」的なラブソングではない点。日本とフィリピンをルーツに持つ彼女はこれらを「魂が求める曲」と表現し、その選曲にまったく迷いはなかったと断言した。23歳の大型ルーキーが思い描く“愛の形”とは。

<セレクト曲>
1 Matisyahu「One Day」
2 Justin Bieber「Purpose」
3 Andra Day「Rise Up」
4 Tori Kelly「Funny」
5 遥海「Pride」

■Matisyahu「One Day」

マティスヤフはアメリカのレゲエシンガーなんですけど、この曲をブゴイ・ドリロンっていうフィリピン人アーティストがカバーしているのを聴いて知ったのが最初です。ブゴイのことは生まれ育ったフィリピンで小さい頃からずっと見ていて、大好きで。そこからオリジナルの音源もダウンロードして聴くようになりました。でも、この曲が自分の中で特別になったのは日本に来てからですね。自然に囲まれた野外のライブに出ることになったとき、これを歌いたいなって思ったんです。

レゲエって、独特のリズム感がたまらないですよね。自然とビートに体が乗るような、誘ってくるような感じで。悩みが一瞬でどこかへ飛んでいくみたいな感覚を初めて味わった音楽だと思います。歌詞はものすごく重いことを歌っているんですけど、このリズムのおかげで軽く聴けるというか、ピースフルに響く。レゲエならではの魅力ですよね。

「One Day」は人と人との間にある平和について歌っていて、コロナ禍に見舞われた今だからこそ聴きたくなりますね。アジア人というだけで差別される海外の友達の話も聞いたことがありますけど、その状況が変わる日はいつか必ず来る。そう希望を持って信じることがどれだけ大切かを教えてくれる曲なんです。とても大きな愛が歌われていると思います。

 

■Justin Bieber「Purpose」

私、ジャスティンがアマチュア時代にYouTubeでカバー曲をやっていた時期から知っていて、ずっと追ってたんです。彼はそれこそ男女の恋愛とかを歌ってきた人ですけど、この「Purpose」を聴いたときに「全然違う!」と感じました。とてもパーソナルな部分が出ている曲で、美しく並んだ言葉の裏側にある苦悩のようなものが感じられる。ここまで自分をさらけ出した曲をリリースするには、かなりの勇気が必要だったと思います。でも、彼がこれを出してくれたことで救われた人もいると思うし、私もその1人です。

ジャスティンはローティーンの頃からどんどん有名になっていって、アイデンティティーを見失うようなこともあっただろうと思うんですけど、この頃に何か明確になったものがあったんじゃないかな。生きる目的みたいなものにしっかりたどり着けたんだろうなって、親のような目線で見てました(笑)。私もこれからプロフェッショナルのシンガーとして生きていきますけど、やるからには上を目指したいじゃないですか。その中で見失ってはいけないものがあるっていうことを常に教えてくれるというか、道しるべになってくれる曲だと思っています。

 

■Andra Day「Rise Up」

これは私が初めてワンマンライブをやったときに歌わせてもらった曲です。本当はイギリスのオーディション番組「The X Factor (UK)」に出たときに歌おうと思ってたんですけど、途中で落ちてしまって歌えなかった(笑)。そういう大事な舞台で歌いたいと思えるくらい、私にとって重要な1曲なんです。すごくパワーのある曲で、歌っていると心が苦しくなるんですけど、「苦しい」イコール「生きてる」みたいな感じで、普段なかなか得られない感情になれるんですよね。

この曲、ミュージックビデオを見る前と後で解釈が大きく変わったんです。音だけで聴いていたときは、今の自分が昔の自分へ向けて歌っているように感じていたんですけど、MVでは車椅子の旦那さんを支える女性が描かれていて。「これ、恋愛ソングだったんだ!」とわかった瞬間に鳥肌が立ちました。自己愛だと思っていたものが、実は他者への思いやりの心だったんだって。「人生に困難は付きものだけど、何千回でも立ち上がるんだ」という言葉が、受け取り方によって意味合いが全然違ってくるっていうことに衝撃を受けました。

ボーカリストとしてのスタイルでいうと、アンドラはリアーナに近いなって感じていて。私もリアーナにはすごく影響を受けているので、似ている部分を感じますね。彼女も私も、大事にしているものが同じようなところにあるなって。アティテュードが似ていればスタイルも似るものだと思いますし、会って話したら仲良くなれるかも……年は10歳以上離れてるんですけど(笑)。どんな人生を生きてきたのかすごく聞いてみたいし、まずは共演を目指してがんばりたいと思います。

 

■Tori Kelly「Funny – Live」

この曲って、弾き語りのライブ音源しかないんですよ。スタジオできっちり作り込まれた作品としてはリリースされてないんですけど、ライブとは思えないくらい完璧にコントロールされた歌声に「なんだこれは!」と衝撃を受けました。もう、笑っちゃうくらいすごい(笑)。そういうテクニックの部分ももちろんなんですけど、生き方がすごくいいなと思っていて、本当に大好きな人です。残念ながら初来日公演はコロナの影響で中止になってしまったんですけど、絶対に行くつもりでした。

歌詞もすごく考えさせられるというか、難しい言葉は使ってないんですけど哲学的で。じっくり読んでみると、「歌い手として目指すところを改めて考えたほうがいいよ」って問われているような気持ちになる。歌をやっていると、すごくチヤホヤしてもらえるときもあるんですよ(笑)。でも、そうやって調子に乗せられっぱなしでいると、根本の部分を見失ってしまうこともあって。私にとって2019年はそういう年だったというか、「私は何を表現したかったんだっけ?」と迷子になっていたような部分があったんです。そういうときに、頭の中を正常に戻してくれる曲ですね。

そうして改めて自分を見つめ直してみて、私は「人の日常、喜怒哀楽に寄り添える存在でありたい」って思いました。この「Funny」の歌詞に「あなたにとってスーパースターとは何? 美しさかお金か権力か名声か?」みたいな問いかけがあるんですけど、そのどれでもなく、ただただ空気みたいに存在すること。それが私の目指したいシンガー像です。

 

■遥海「Pride」

この曲は、何を歌ったらいいのか迷っていた自分に答えを出してくれたんです。2019年は自分に足りないものを痛感してばかりの、本当にハードな1年で。歌がうまいとは言ってもらえるけど、「その“歌がうまい”というブランドを取り払ったら一体何が残るんだろう?」とひたすら自分に問いかけ続ける日々でした。歌えば歌うほど、自分が空っぽのように感じてしまって。そういうときにいただいた曲で、「歌いたい気持ちがこれだけあるということは、何かを伝えたい気持ちがあるってことだ」と思えたんですね。私は空っぽなんかじゃないんだって気づかせてくれた。“これまでの遥海”がすべて凝縮された1曲になっていると思います。「I Love You」の歌ではないですけど、私にとってはとても大事なラブソングです。

こうやって選んだ5曲を並べて聴いてみると、意外とこの「Pride」も負けてないですよね(笑)。日本の音楽はもっと世界で戦えると思ってますし、音楽には壁がないはずだとも思っていて。私自身もジャンルを限定しない、壁のないシンガーになっていきたい。日本語の歌も英語の歌も両方歌っているのは、そういう思いの表れでもあるんです。J-Popしか聴かない人に英語の曲の良さを知ってもらいたいし、洋楽しか聴かない人には日本人シンガーの素晴らしさをもっとわかってほしいなって。

私がこれまでに投げかけられた褒め言葉の中に、言われて悲しかったものが二つだけあるんです。「歌がうまいのはフィリピンとのハーフだからだよね」と、「歌がうまいんだから海外へ行ったほうがいい。日本にいると腐るよ」です。私の歌をいいと思ってくれる人がどうしてそんなに日本を悪く言うんだろう、って日本人としてのプライドをすごく傷つけられました。そういう悔しい気持ちから、私は日本人が誇りに思えるアーティストになろうって決めたんです。

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

 

■遥海セレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

 

■遥海『Pride』

 

■Profile
遥海
日本人の父とフィリピン人の母を持つ、1996年生まれの4カ国語を操るシンガー。フィリピンに生まれ育ち、13歳で日本へ移住。高校生時代に参加したオーディション番組「X Factor Okinawa Japan」で注目を浴び、その後本家イギリスの「The X Factor 」にも挑戦。2019年には初のワンマンライブや東名阪ツアーを実施し、20年5月にテレビアニメ「波よ聞いてくれ」(TBS系)エンディング主題歌「Pride」でメジャーデビューを果たした。ソウルフルなスモーキーボイスを持ち、精密なピッチや声量の制御にもたけた本格派として期待されている。

【関連リンク】

遥海(HARUMI)公式サイト
https://www.harumiofficial.com/

遥海 (@thisis_harumi) · Instagram
https://www.instagram.com/thisis_harumi/?hl=ja

遥海 (@thisis_harumi) · Twitter
https://twitter.com/thisis_harumi

あわせて読みたい

「マジカルな気配が漂うリアル」にひかれる cero・髙城晶平が選ぶ愛の5曲

Daichi Yamamoto 自分を縛る「他者の視線」から抜け出す戦い

岡山弁で書く新鮮な歌詞 令和の日本の音楽界に風穴を開ける藤井風

THE ONE I LOVE:連載一覧はこちら

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

「マジカルな気配が漂うリアル」にひかれる cero・髙城晶平が選ぶ愛の5曲

一覧へ戻る

「唯一の正解は、どんな手を使ってでもいい曲を作ること」 岡田拓郎&duennが選ぶ愛の5曲

RECOMMENDおすすめの記事