小川フミオのモーターカー

開発者の心意気が伝わった マツダの救世主「初代デミオ」

企業の救世主という言葉がある。大ヒットして業績を大きく向上させた製品を指すことも多い。ちょっと古くは、富士フイルムの「写ルンです」(1986年)やアップルのiPod(2001年)。クルマだと、マツダにとっての初代「デミオ」(1996年)などが思いつく。

(TOP写真:全高を高めにしたクロスオーバースタイルが特徴)

これらの共通点はコンパクトだということだ。「『小さく見えて、大きく乗れる』をコンセプトに、コンパクトカーの枠を超えたスペースと実用性を確保」したことが成功の理由だと、マツダはホームページで記している。当時、マツダはバブル期の拡張路線がわざわいして倒産もささやかれていたが、デミオの大ヒットに救われた。

ルーフレールを備えSUV的な雰囲気を演出

ルーフレールを備えSUV的な雰囲気を演出

まわりのクルマが大型化し、従来日本で重用されてきたコンパクトカーの市場が空洞になる中、開発されたのも評価されたはず。マツダはデミオをして「常識を打ち破る挑戦」と書いているが、実はこれこそ求められていたクルマだったのだろう。

バンパー上から開くテールゲートをもっていた

バンパー上から開くテールゲートをもっていた

実際にデミオが発表されたとき、市場の“常識”はミニバンとSUVだったともいえる。これらの市場はどんどん広がりつつあったからだ。デミオと同じ96年だけとっても、「トヨタライトエースノア」「同ランドクルーザープラド」「同メガクルーザー」「日産テラノレグラス」「三菱チャレンジャー」「ホンダステップワゴン」が発売されているのだ。

外寸はコンパクトでも、MTB(マウンテンバイク)が2台積めると喧伝(けんでん)された

外寸はコンパクトでも、MTB(マウンテンバイク)が2台積めると喧伝(けんでん)された

そこにあって、全長3800ミリのデミオは、大胆なプロダクトだったともいえる。小ささをセリングポイントにしていたからだ。ただし、全高を1535ミリと少し高めに設定。たんにハッチバックというより、ステーションワゴン的でもあり、SUV的でもある。

1300LXのダッシュボードはシンプルだが質感がある

1300LXのダッシュボードはシンプルだが質感がある

シャシーを共用したコンパクトセダン「(オートザム)レビュー」(90年)もまた、ラウンドシェイプによる個性的なスタイリングだった。コンパクトカーのユーザーは、コンセプトに共感して、商品を選ぶようになっていたのに、マツダの開発陣は気づいたのだろう。

1300LXのインテリアには雰囲気のある仕様もあった

1300LXのインテリアには雰囲気のある仕様もあった

エンジンは1323ccと1498ccが用意されていた。軽快に走るというよりは実用的な運動性能だったが、外板色は品がよく、シート表皮を含めた内装などに上質感があって、当時、欧州車を好んだ人にも評価されていたのを思い出した。

フルフラットになるシートアレンジメントも特長のひとつ

フルフラットになるシートアレンジメントも特長のひとつ

発売3年後に月販目標を大きく拡大。通常、新車は時間の経過とともに売れ行きが鈍るものだが、デミオは、期待以上の売れ行きをみせた。パッケージのよさに加え、開発者の心意気のようなものが消費者に伝わったのが、ヒットの理由になっているのでは、と私は思ったものだ。

2トーンのカラースキームは当時マツダと資本提携の関係にあったフォード車を思わせた

2トーンのカラースキームは当時マツダと資本提携の関係にあったフォード車を思わせた

(写真=マツダ提供)

【スペックス】
車名 マツダ・デミオ LX1300
全長×全幅×全高 3800×1670×1535mm
1323cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 83ps @6000rpm
最大トルク 11.0kgm@4000rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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