キャンピングカーで行こう!

国産キャブコンのベース車 なぜトヨタ・カムロードの独走状態なのか

依然として、自由にお出かけできない日々が続いています。「自由に動けるようになったら、あそこへ行こう。あれを食べよう」と期待は膨らみます。今回はそんな未来を夢に見つつ、人気の国産キャブコンのベース車について、ちょっと勉強してみましょう。

今夏にはマツダ・ボンゴトラックの生産終了が予定されています。これにより、国産キャブコンのベース車両としては、事実上トヨタ・カムロード一択になります。

いすゞBe-camという選択肢もありますが、現状、この車両は日本特種ボディー社にしか供給されていません。今後は、フィアット・デュカトの導入を決めたバンテック社以外、ほぼカムロードの独占になるでしょう。どうしてこうなったのでしょうか。

(TOP画像=キャブコンのベース車両として、ほぼ唯一の選択肢になったトヨタ・カムロード。弱点もあるが貴重な存在だ/Photo:VANTECH)

4ナンバートラックから生まれた専用シャシー

まず、キャブコンのベース車両を理解するためには4ナンバーについての説明が必要です。

国産キャブコンのベース車両の多くは1~1.5トン積みの小型トラックです。これは「小型貨物自動車」=4ナンバー車に相当します。

この枠組みでは、
・全長4.70m、全幅1.70m、全高2.00m以内
・排気量2千cc以下(ディーゼルエンジンは排気量制限なし)
と規定されています。

元々が業務用の貨物車両ですから、経済性が最優先。4ナンバー車は1ナンバー車に比べて保険料は安く、高速道路料金も普通車料金になります。

カムロードはトヨタがキャンピングカー専用(キャンピングカー特装)としてビルダー各社に販売している車両で、もとになっているのは4ナンバー車のトヨタ・ダイナです。

さて、ここでひとつ問題があります。

カムロードベースのキャンピングカーに乗っているオーナーさんの多くから「走り」に対する不満が聞かれるのです。

カムロードに用意されているエンジンは、ガソリンなら2千cc。ディーゼルを選ぶと3千ccです。

さて、キャンピングカーには居室が載っています。つまり、荷物を積みっぱなしにしているトラックと同じ。商品にもよりますが、それ相応の重さがあります。それに対して2千ccのガソリンエンジンでは、正直なところ力不足なのです。

ガソリンエンジンよりもハイパワーが望めるディーゼルエンジンでも、カムロードに搭載されているエンジンはずっとモデルチェンジをしておらず、デビューは20年以上前の古いタイプのもの。やはり3千ccあっても力不足の感はいなめません。

なぜ、他のベース車両にしづらいのか

国産キャブコンの登録ナンバーは、ベースの車両が4ナンバー相当であっても、8ナンバーです。8ナンバーはサイズ、排気量ともに制限はありません。

そうなると、もとが4ナンバーだったカムロードで我慢していないで、もっと大きいトラックをベースにすればいいじゃないか、と思いますよね? でも、それがなかなか実現しないのには、わけがあります。

まず、カムロードの名誉のために言っておくと、決してカムロードは劣っているわけではありません。4ナンバークラスのトラックはいすゞにも日産にもありますが、条件はカムロードと同じでエンジンは2千ccですから、メーカーを変えたからといってカムロード以上のパフォーマンスは期待できません。ましてやカムロードはキャンピングカー用に特別仕様にした「キャンピングカー特装」なので、キャンピングカーの特性に合わせてサスペンションなどもセッティングされています。4ナンバークラスの中ではカムロードがベストなセレクション、ということになります。

1970年代にごく短期間だけ販売されたいすゞのエルフ・マイパック。いまのところ日本で販売された唯一のFF小型トラック。今、これがあればベース車として最適だったと思われる

1970年代にごく短期間だけ販売されたいすゞのエルフ・マイパック。いまのところ日本で販売された唯一のFF小型トラック。今、これがあればベース車として最適だったと思われる

じゃあ、いっそもっと大きい車にすれば、居室も大きくてエンジンパワーも上がるのでは?

そう考えると、候補になるのは2トン車になります。2トン車の多くは1ナンバーになりますが、1ナンバーはサイズ・排気量ともに上限はありませんから、パワフルなエンジンが搭載されています。

しかし、ここで問題があります。1ナンバー車は大きくてパワフルな一方、車両価格も4ナンバーよりも高価です。さらに現時点ではキャンパー特装はありませんから、サスペンションのチューニングなどの手間も必要です。当然、それらはすべて、キャンピングカーの価格に跳ね返ってきます。

これが、現在カムロードがほぼ独占状態になっている一番の理由なのです。

理想的なベース車両を妄想すると……

現実はさまざまな事情のもとに成り立っていることが、おわかりいただけたと思います。こうした事情をちょっと無視して、性能ありきで理想のベース車両について考えてみると、以下のようになります。

【エンジン】
・車両の重量を考えたら、2500~3千ccぐらいのエンジンが欲しい
・ディーゼルなら3千ccぐらいのターボディーゼルが理想

【サイズ】
・ホイルベース(前後軸の距離)はカムロードより200mmほど長く
・トレッド(左右輪の距離)は2トンクラス程度に

これなら、積み荷(居室)が重くなりすぎることもなく、重量バランスも良くなるはずです。

【エンジンの駆動形式】
・エンジンと後軸をつなぐプロペラシャフトのないFF(前輪駆動)に

シャフトがないため低床化が可能で、重心が下がることで走行性が安定し、居室の設計の自由度も増します。

……こんなベース車両があれば、日本のキャブコンももっと自由に、パワフルになれるのではないか、と妄想します。

ここに挙げたスペックを考えると、実はそれをすべてかなえている車両があります。それはフィアット・デュカト。パワフルなターボディーゼルエンジン、低床でレイアウト自在なFF方式、モジュラー構造でホイールベースが自由自在。ヨーロッパでキャンピングカーのベース車として70%以上のシェアをあっという間に獲得したのもうなずけます。

ヨーロッパのデファクトスタンダード、フィアット・デュカト。FFの特徴を生かし、運転席周りだけ(カラーの部分)で出荷される無駄のない設計(Photo:FCA International)

ヨーロッパのデファクトスタンダード、フィアット・デュカト。FFの特徴を生かし、運転席周りだけ(カラーの部分)で出荷される無駄のない設計(Photo:FCA International)

日本の技術でこのようなスペックの車両を作ったら、国内はもとより、ヨーロッパでも売れると思います。トヨタ、日産、マツダ、いすゞ、どこでもいいので、日本の自動車メーカーで作ってくれないかなあ……などと思うのは私だけでしょうか?

妄想ばかり広げていても仕方がありませんね。ですが、カムロードが独占状態なら、せめてエンジンのパワーアップを図ってもらえないものか、と思います。

現行のカムロードのガソリン車には1TR-FE型2千ccエンジンが搭載されていますが、これを同系列の2TR-FE型2700ccエンジンに変えれば、かなり走りは改善するはず。エンジンのサイズは2千と2700とでまったく同じなので、積み替えるのに設計変更は不要だと思ってしまいます。

トヨタさん、なんとか検討いただけないものでしょうか?

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PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹と妻ひとり。

・YouTubeチャンネル「キャンピングカー坊主めくり」開設!
https://www.youtube.com/channel/UCZzeJtgZFLR0yJLkr052kug

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