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パタゴニア社員が必ず持っている? 水陸両用ショートパンツ「バギーズ・ロング」

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす人が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

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パタゴニアには、スタッフはもちろん古参ファンが揃(そろ)って太鼓判を押すマスト・オブ・マストなアイテムがある。今回紹介する多機能型ショートパンツ「バギーズ・ロング」もそのひとつだ。パタゴニアでマーケティングを担当する加藤学さんは次のように語る。

驚くほど何にでも使えるショートパンツですね。丈が2インチ短い『バギーズ・ショーツ』と合わせれば、ほとんどの社員が所有しているのではないかと思っています。夏の仕事着としてはもちろん、ランニングや自転車で職場に通っている社員は通勤ウェアとしても活用しています。もちろん自宅でリラックスウェアとして使っている者もたくさんいるようですね」(加藤さん)

パタゴニアの社内では、使わなくなったバギーズ・ロングを後輩にプレゼントする習慣もあるという

パタゴニアの社内では、使わなくなったバギーズ・ロングを後輩にプレゼントする習慣もあるという

多彩なカラーバリエーションもバギーズ・ロングの魅力。これまでに少なくとも100色以上は発売されているという

多彩なカラーバリエーションもバギーズ・ロングの魅力。これまでに少なくとも100色以上は発売されているという

デパートで見かけたマカオ製ショーツのシルエットと素材をアップデート

すそにはパタゴニアのアイコン「P-6ロゴ」が光る

すそにはパタゴニアのアイコン「P-6ロゴ」が光る

バギーズ・シリーズの原型となる「バギーズ・ショーツ」が誕生したのは1982年のこと。パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードは、とあるデパートでたまたま目にしたマカオ製のショーツを購入する。ナイロン素材のショーツは機能的に見えたが、アウトドアスポーツを通じて太ももを鍛え上げていたイヴォンにとっては、いささか細身。帰社した彼は商品開発チームにそのショーツを渡し、ルーズフィットのショートパンツを作るよう依頼する。こうして誕生したのが、今日も愛される名作「バギーズ・ショーツ」だ。

平置き裾幅は約32センチ。「バギーズ・ショーツを太いとおっしゃる方も多いのですが、実は昔のものに比べるとかなり細くなっています」と加藤さん(※画像はバギーズロング)

平置き裾幅は約32センチ。「バギーズ・ショーツを太いとおっしゃる方も多いのですが、実は昔のものに比べるとかなり細くなっています」と加藤さん(※画像はバギーズロング)

イヴォンからの「より機能的な生地を」とのリクエストに応える形で、開発チームはオリジナルの混紡生地「ベンチュラ・クロス」を採用する。こちらはサプレックスナイロン、コットンをブレンドすることで、耐久性、速乾性、肌触りの良さを同時に実現した革新的な素材だったという。なおバギーズ・ショーツの素材は、現在は機能性の追求と環境への配慮からリサイクルナイロンへと変更されている。

「速乾性に優れた素材にDWR(耐久性撥水<はっすい>)加工をかけているので、非常に乾きやすいです。夏ともなれば半日もかからず乾いてしまいます。昼に活動して汚れたら洗濯して干しておけば、次の日の朝には穿(は)けます。ですから毎日ハードに使っていただければ嬉(うれ)しいですね」(加藤さん)

少しだけたけの長いモデル「バギーズロング」の誕生

「バギーズ・ロング」はオリジナルモデルであるバギーズショーツよりも丈が2インチ(約5センチ)ほど長い

「バギーズ・ロング」はオリジナルモデルであるバギーズショーツよりも丈が2インチ(約5センチ)ほど長い

そんなバギーズショーツの丈を2インチ(約5センチ)延長したアイテムが、今回紹介する「バギーズ・ロング」。僅(わず)かではあるが丈を長くしたことで、コーディネートの幅が広がり、さらに着用する人を選ばないベーシックなショートパンツへと進化している。

「バギーズ・ロング」が誕生したのは1991年のこと。コットンとサプレックス・ナイロン混紡生地を採用していた当時のバギーズショーツとの差別化を図るために、素材をサプレックスナイロン100%に変更。より軽量で速乾性の高いモデルへとアレンジした。見た目、機能とも水辺での使用を強く意識したアイテムで、デザインのインスピレーションとなったのも、丈の長いスイムショーツを好んで穿いていたカリフォルニアやハワイのサーファーだったという。

 

なお「バギーズショーツ」にも同じくサポーターが付いている

なお「バギーズショーツ」にも同じくサポーターが付いている

発売と同時に、サーフィンやカヤックなど水辺でのアクティビティーを楽しむ人々から爆発的に支持された「バギーズロング」。その人気の秘密はインナーに縫い付けられているメッシュ素材のサポーターにある。そう、バギーズロングはスイムショーツとしても使える水陸両用パンツなのだ。

「ショートパンツの下にインナーショーツを穿いて水に入ると乾きが遅いです。その一方で一般的なスイムトランクスはデザイン的に街中では使いにくい。そこで我々は両方の “いいとこ取り”をして、水辺と街で兼用できるアイテムを作ることにしました。結果、このパンツで出かけて、そのまま海に入り、家に戻るという使い方もできるようになりました」(加藤さん)

メッシュ部分を最小限にすることで、鍵など引っかけて破損するリスクを軽減している

メッシュ部分を最小限にすることで、鍵など引っかけて破損するリスクを軽減している

通常のショートパンツでプールや海に入ると、ポケットに水が入り込み、動きにくくなるだけでなく、水から出たあとの乾きにくさにも繋がる。そこでバギーズロングは、ポケット内側下部をメッシュ仕様にすることで、水の出口を確保している。ちなみにポケットは非常に深いつくりで意外なほど物が入ることも付記しておこう。加藤さんの話によれば、開発時にイヴォン・シュイナードが「テニスボールが二つ入るように」とのオーダーをしたのだとか。

右のポケットには鍵などをつけておくための伸縮するキーループが付いている

右のポケットには鍵などをつけておくための伸縮するキーループが付いている

後ろ側にはスナップボタン付きのヒップポケットが一ヵ所

後ろ側にはスナップボタン付きのヒップポケットが一ヵ所

ヒップポケットは全面メッシュ仕様

ヒップポケットは全面メッシュ仕様

『取り去るべきものが無くなった時に完成する』というブランドの哲学を体現

「思い切って街でも下着なしで穿いていただきたいです。夏の清涼感にも繋(つな)がっていくはずです」(加藤さん)

「思い切って街でも下着なしで穿いていただきたいです。夏の清涼感にも繋(つな)がっていくはずです」(加藤さん)

バギーズロングは、メッシュサポーターが縫いつけられていること以外は、とにかくシンプルなショートパンツだ。にもかかわらず、不思議と毎日でも穿きたくなるのは、耐久性が高く、多機能であるから。さらにいえばシルエット、風通し、穿き心地、何もかもがちょうど良いからだろう。しかし、その絶妙なデザインは一朝一夕に出来上がったものではない。バギーズショーツから数えれば40年近い年月をかけて、少しずつ改良を繰り返してきたからこそ、たどり着くことの出来た「境地」なのだ。加藤さんはこんな言葉でインタビューを締めくくってくれた。

「パタゴニアには『製品は取り去るべきものが無くなった時に完成する』というデザイン哲学があるのですが、バギーズショーツは、その考え方を体現するアイテムの一つです。なんでもないショートパンツに見えますが、とにかく考え抜かれている。これ以上いじる所はないように思います」

「バギーズロング」は一見なんでもないクラシカルなアイテムだ。しかし、ここまで洗練されたショートパンツはなかなかない。実際に穿いていただければ、その機能と使い勝手の良さに魅了されるはずだ。

ウエストはゴムとドローコードで調節する

ウエストはゴムとドローコードで調節する

メンズ・バギーズ・ロング 7インチ
7,700円 (税込)

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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