シネマコンシェルの部屋

#01 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには(コンシェルジュ:LiLiCo)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、カラテカ・矢部太郎さん、Base Ball Bear・小出祐介さんの4人です。初回のコンシェルジュはLiLiCoさんです。

#01 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには(コンシェルジュ:LiLiCo)#01 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには(コンシェルジュ:LiLiCo)

#01 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには(コンシェルジュ:LiLiCo)

LiLiCo

映画コメンテーター/タレント。スウェーデン・ストックホルム生まれ。スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳の時来日、1989年から芸能活動スタート。TBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとして出演するほか、フジテレビ「ノンストップ!」やJ-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」など、レギュラー出演番組も多数。イベント出演や映画・アニメの声優などマルチに活躍。ファッションにも意欲的に取り組み、バッグやジュエリーのデザイン、プロデュースも手掛ける。

(TOP画像:© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.)

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〈依頼人プロフィール〉
岡本俊幸さん(仮名) 30歳 男性
東京都在住
編集者

大学2年生のときから卒業まで、今はもう無くなってしまった大手塾の神戸校でアルバイトをしていた。大学から近いこともあって学生が数多く勤めていた。私は中国地方出身ということもあり、最初は関西という土地に馴染(なじ)めなかった。そんな私をサポートしてくれたのが同級生であり友人だったAくん。この仕事は恩義ある彼の誘いで始めたが、存外悪くなく、例えるなら、学校終わりの放課後に集まって、サッカーなどのスポーツをやっていた小学生の頃に似ていた。

私はその職場がとても好きだった。それほど高くはない給料だったけれど、結局、卒業までずっとその職場で過ごすこととなった。今思い出せば、交通費を出してもらった記憶がないので、手取りの額がびっくりするほど少なかった。けれど、それでいいのだ。楽しい時間を過ごせていたのだから。

大学3年生のあるとき、手を抜いて仕事をしているAくんを見つけて、そのときは見て見ぬフリをしていたが、だんだんとその姿を見る機会が増えてきた。せっかくアルバイトに誘ってくれたのだし、普段から仲の良い相手に注意をするのはとても勇気がいる。だが思い切って、「手を抜いて仕事をしたり、社員や生徒とおしゃべりばかりしたりするのは良くないのではないか」と至極まっとうな(だと思った)注意をした。するとAくんは少しシュンとした顔をして「……わかった、でもお前もたまに手を抜いてるやろ」と言った。私は、少し感情的になって「他人になすりつけるのはよくない」ということを強く伝えた記憶がある。そのときに流れていた空気は少し張り詰めていて、長年培ってきた関係性が、崩れる直前のそれに思えた。

以来、同じシフトでアルバイトをしていても一切話すことがなくなり、就活が始まるとバイトに顔を出すことが減ったせいか、あるいは互いを避けているせいかはわからないけれど、卒業式が終わって、就職し、社会人になって友人の結婚式でたまたま遭遇しても、目も合わさなくなった。

そういえば、ぼくたちは些細(ささい)なことで喧嘩(けんか)をしてから、一度もごめんなさいを言わなかった。卒業してから約10年、どこで何をしているのかわからない。ここで和解というと大げさかもしれないけれど、疎遠になってしまった友人と、また、とりとめのない会話で笑っていたようなあの頃に戻りたいと、30歳になった私は思うのだ。

なにかを捨てる勇気も大切

岡本さん、こんにちは!……と言いながら、いきなり言っていい?

女性の悩みかと思いました。30歳の男性がこんな気持ちになるのはなんだか驚きだけど嬉(うれ)しい。

でもその友達をそんなに追い掛ける必要ありますか?

もうかなり時間も経ってますし、Aくんのように「でも」とか「だって」という言い訳を言う人、わたしは友達として信用できません。

アルバイトをサボリ気味だと指摘されて彼がシュンとしたのは図星だからです。

注意する勇気があるあなたは素晴らしいと思う。

多くの人はきっとその気持ちを心の中に仕舞い込んで、ほかの友達に吐き出すと思います。

だからわたしはあなたをまず褒めたい。あなたは友達として信頼できる。

でもどうしてもその友達とまた会いたいのならば、あなたの個性を消さないほうがいい。あのときなんであんなことを言ったのかを説明してあげることをお勧めします。

そこでまた友達がスネたりしたら正直、縁を切ったら?と思う。

友達は選べるし、あなたも選ばれる存在。30歳ならほかにも友達がいるでしょう?

確かにわたしも30代前半はちょっぴり嫌でも会っていた人もいます。

37歳になった頃から”本当に合う友達”がわかるようになって、一緒にいて疲れる人とは連絡を取らなくなりました。

そういう縁を切る勇気も必要だと思います。

そして、ちょっとスピリチュアルに聞こえるかもしれないけど、縁のある人とはまた必然と会ってしまうもの!

でもわかりました。その友達にやっぱり会いたいのよね?

岡本さんの人柄も考えて、キャピキャピの友情を描いた『セックス・アンド・ザ・シティ』みたいなものじゃなくて、多少シブくいくぞ。

ロバート・ロレンツ監督作品、クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』はいかが?

© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.

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頑固な野球のスカウトマン「ガス」が主人公。今の時代はなんでもコンピューターで、選手の投げる球のスピードや安定感を測れるし、成績もボタンひとつ押せばデータを出せるけど、ガスは全国をひとり車で横断してでも“本当”の選手の実力をチェックする。

才能だけでなく、その“人柄”も直接会えば簡単に読み取ることもできますよね。

でもどれほど伝説のスカウトマンとして有名なガスであっても老いには勝てない。身体にガタが……。

そんな彼の状態を仲間がひとり娘のミッキーに報告する。ミッキーはお父さんの身体が気になって、スカウトの旅に勝手に着いて行きます。でも頑固なガスは「自分は大丈夫」だと言い張ります。

そこには心配する娘と頑固な父親という関係性だけではなく、親子であっても心が繋(つな)がってない寂しい気持ちも見え隠れしています。

特にミッキーにとっての父親は、母親が亡くなってすぐ自分を親戚の家に預けた存在。父娘の関係性が深く繋(つな)がっていない。

「いつも野球ばかりに夢中でわたしを見てくれない……」

そんな思いを抱いていました。

もちろんそのお陰でミッキーは野球にかなり詳しく、ガスが年を取って目が見えにくくなったぶん、最強のコンビとしてミッキーが目を光らせます。

もしかしたら岡本さんはこのキャラクター二人ともの性格を持ち合わせているかもしれませんね。

気にしなくてもいいのに強く友達に会いたい気持ち、そしてガスみたいにしっかりと監視をしてアルバイトをサボっている友達を注意する。さらには、日本でもよく話題にあがる“隙が ない”性質も持ち合わせているかもしれないですね。

仕事(当時はアルバイト)を完璧にこなし、友達とのお付き合いも大切にして、その友達を思うあまり、つい注意してしまった……ミッキーにそっくり。

© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.

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けしてそれは悪いことではないけど、たまに疲れませんか?

スポーツ映画ではあるけど、人の関係性をとても素晴らしく描いている作品。この二人だけではなく、さまざまな登場人物がいます。

みんな、なにかしら葛藤を抱えて生きているので寄り添ってみて。

岡本さんにこの映画を通して伝えたいのは“なにかを捨てる勇気も大切”ということ。

この作品もラストに近づくにつれ、どうしてこの二人がこうなったのかが明らかになります。かわいい娘のミッキーを親戚に預け、“捨てられた”と感じさせてしまったのには驚きの理由が。

そして隙のない女になってしまったミッキーはなぜバリバリのキャリアウーマンにまで上り詰めて頑張ったのか。

この胸中にはわたし、痛いほど共感できました。

30歳の岡本さんはイーストウッドが演じた『ダーティハリー』の世代でもないと思いますが、もしかしたらテレビで若き頃のイーストウッドを見たことあるかも。

個人的には今の彼のほうが好きで、人生経験が顔に出ています。

そしてミッキーを演じるのはエイミー・アダムス。シリアスからコメディーまでなんでもこなす役者。

© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.

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“人生の特等席”に座れるのは亡くなる直前でいいとわたしは思います。

若いときにそんな素敵な場所が来てしまったら満足してしまいそうで、怖い。

その席にいつか辿り着きたいから人は頑張る。そしてときには失敗をしてそこからまた学ぶ。

岡本さんの友達は幸せ者だ。こんなに思われているなんて。

今は彼がどこでなにをしているのかがわからないみたいなので、連絡先がわからないってことですよね。

どれだけそのお友達が大事か、もう一度考えてね。

あなたはとても熱い人間で、その気持ちが伝わって、相手がトゥーマッチと思わなければ、また素敵な関係性がもてると思います。

頑張ってね。

『人生の特等席』 ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税 ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント © 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.

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ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.

PROFILE

「シネマコンシェルの部屋」ライター陣

LiLiCo、FROGMAN、矢部太郎、小出祐介

新連載「シネマコンシェルの部屋」が始まります

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#02 中年になっても終わらぬ自分探しの「旅」(コンシェルジュ:FROGMAN)

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