THE ONE I LOVE

「確固たるものを追い求めるより、変わり続けることを受け入れたい」次世代を担うポップスの新星・Laura day romanceが選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、6月10日に初の全国流通盤1stアルバム『farewell your town』をリリースした若手バンド・Laura day romanceから、ツインボーカルの井上花月(Vo, tamb)と川島健太朗(Vo, G)の2人が5曲をセレクト。独特のフックを持つ不思議なメロディーセンスや王道のギターポップサウンドで、東京のライブハウスシーンに独自のポジションを確立している彼らが、「愛を歌うとはどういうことか」を丁寧に語ってくれた。

〈セレクト曲〉
01. 初恋の嵐「真夏の夜の事」
02. アナログフィッシュ「No Rain (No Rainbow)」
03. LOVE PSYCHEDELICO「fantastic world」
04. 吉澤嘉代子「よるの向日葵」
05. Laura day romance「rendez-vous」

「確固たるものを追い求めるより、変わり続けることを受け入れたい」次世代を担うポップスの新星・Laura day romanceが選ぶ愛の5曲

(左・井上花月 右・川島健太朗)

■初恋の嵐「真夏の夜の事」

井上 “愛の曲”と言われて最初にパッと浮かんだのがこの曲です。歌詞で感情を動かすことがすごく上手だなと思っていて。Bメロの「次第に溶け出して消えるんだ 次第に溶け出して」から、メロディーに合わせて感情が流動的になっていく感じや、そこからサビで「これは想像のストーリー 意味など無い」と歌い、現実ではなく想像の物語だと、グッと止めちゃう感じとか。

かと思えば、曲の最後の最後で急に「これは想像のストーリー などでは無い」と今までの流れをひっくり返すのですが、すごく愛に溺(おぼ)れている感じがするんです。世代的にはもちろんリアルタイムではないんですけど、初めて聴いたときは衝撃でした。

この曲では個人的な感情が1人の視点で描かれていて、そこが私たちのバンドのやり方とは正反対だなと感じています。今回のアルバムはとくに、いろいろな人の視点で語ることをコンセプトにしていますし。

ただ、自分の感情を描くにせよ、他人の感情を描くにせよ、「自分」というフィルターを通す以上は、どうしても主観が反映されてしまうんですよね。その中で、自分をどう出すかを考える上で、この曲がひとつのケーススタディーとして参考になっている部分はすごくあると思います。

■アナログフィッシュ「No Rain (No Rainbow)」

川島 言葉に衝撃を受けた曲のひとつですね。「No Rain No Rainbow」という表現自体はありふれた言い回しですけど、この曲では虹は雨に対する対価ではなく、ただそこにあるだけなんだというように、深いところまで踏み込んでいます。当然のように見返りを求めてしまう、等価交換的な思考を無意識にしてしまっている自分に気づかされるというか。そのことが直接的な言い回しではなく、考えさせられる表現で描かれていて、そこに感銘を受けました。

僕らのバンドのメーンソングライターである鈴木(迅 / G)もアナログフィッシュがすごく好きで、バンドとしてもけっこう影響を受けているんです。感情の起伏をメロディーで直接的には出さず、ありきたりな“エモい音”にはしない部分とか。時期によってまったく違う音を出す柔軟性もすごいですし、そういうバンドのあり方には憧れます。

井上 うちのバンドはメンバーみんなギターポップが好きということもあって、今はギターポップ全開でやっていますけど、アルバムごとに全然色の違うものを出していけたらいいな、とは思っていますね。

■LOVE PSYCHEDELICO「fantastic world」

井上 冒頭に「I give you everything / You bring me everything」という歌詞があって、結局これがすべてなんじゃないかと。最近、いろいろな人の本を読んだりしては「“愛する”ってなんだろう?」ってドツボにハマっていたんですけど、なんとなく「人として成熟していないと愛することはできないんじゃないか?」という、答えにたどり着きつつあったところだったんです。

この曲の詞からは、もう好きとか嫌いの次元じゃない、見返りのあるなしにかかわらずどんどん与えてしまう姿勢が読み取れて、これこそが愛するということなのかもしれないと。中学生くらいの頃からずっと好きな曲なんですけど、改めてすごい歌詞だなって思います。

LOVE PSYCHEDELICOの歌詞は、言葉の意味合いだけじゃなくて、音としての響きやリズムをすごく大事にしていると感じます。私たちの「FAREWELL FAREWELL」という曲のサビには「FAREWELLする」っていう奇妙なフレーズがあるんですけど、正しい意味よりも、完全にメロディーの乗り方を優先しているんです。ここは迅くんが最初に作ってきたものがとても良くて、そのまま採用しているのですが、そういう意味ではすごくデリコ(LOVE PSYCHEDELICOの略称)っぽい……ということに今初めて気がつきました(笑)。

川島 僕らの曲って、そもそもメロディーの音数がすごく多くて、譜割りがとても細かいんです。鈴木がリズムを意識してメロディーを作っているので、そこに乗る言葉も必然的にリズムが強調されたものになっているんじゃないかと思います。

■吉澤嘉代子「よるの向日葵」

川島 普段は強気な女の子の片思いをいじらしく歌った曲ですね。こういういたいけな女性像に対して、僕は単純に「いいな」と感じてしまうところがあって。でも、「それって女性というものを男性の視点から消費しているだけなんじゃないか?」という後ろめたい気持ちにもなったんです。その感情の根源を突き詰めてみたところ、「同化したい」と思うくらいの、強い憧れがあることが分かったので、これは差別的な感情ではないだろうと思えました。

吉澤嘉代子さんは、誤解を恐れずに言えば、“女の子らしさ”をとてもうまく表現されているアーティストだと思います。自分が女性であることにすごく自覚的だと思うし、世の女性が社会的にどう見られているのかを踏まえた上で、あえて“女性”を押し出しているというか。

だから自分の中にある問題意識を刺激されたりもするんですよね。登場人物になりきってフィクションとして描くストーリーテリングの手法もすごくうまいなと思いますし、単純にめちゃくちゃ好きなアーティストです。

■Laura day romance「rendez-vous」

井上 この曲を書いていたときは「続く」ということ、「物事はすべて移ろいながら連綿と続いていく」っていうことをかなり意識していた時期だったんです。確固たる何かというより、刹那(せつな)的であってもそこに絶対愛はあるっていうことを歌いたくて。

それは刹那主義的な意味ではなく、「変わり続けることを受け入れるのも愛だよね」っていう意味。この曲は本当に長い時間をかけて、登場人物の設定なども細かく考えて作ったもので、情景描写的な表現だけで、どこまで語れるかということにも挑戦しています。「語らずに語る」というか。

川島 余白を持たせているイメージです。コロナ禍以前にできた曲ではあるんですけど、ライブ初披露が、ちょうどコロナが猛威を振るい始めた時期。ステージで演奏していたら歌詞の聴こえ方が全然違ったんですよ。そういう意味で、ポップスとしていい形を成していると思います。

あと、よくセブンスと間違われるんですが、もう少し複雑なディミニッシュという特殊な和音を使っているところも僕らならではの特徴かなと思っていて。今のJ-POPシーンでディミニッシュの響きを取り入れているアーティストって意外と少ないので、今後そういう面でもいろいろチャレンジしていけたらいいなと思っています。

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■Laura day romanceセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

■Laura day romance『farewell your town』

■Profile
Laura day romance(ローラデイロマンス)
井上花月(Vo, tamb)、川島健太朗(Vo, G)、鈴木迅(G, Cho)、礒本雄太(Dr)からなる、2017年結成の男女ツインボーカルバンド。東京のライブハウスシーンを中心に活動し、18年にリリースした1st EP『her favorite seasons』が話題を呼ぶ。同年には大型ロックフェス「SUMMER SONIC 2018」に「出れんの!?サマソニ!? 2018」枠で出演。以後、自主企画ライブをソールドアウトさせるなど着実に動員を伸ばし、20年6月10日に待望の1stアルバム『farewell your town』をリリースした。きらびやかでさわやかなギターポップサウンドを武器に、文学性をはらんだ歌詞やクセのあるメロディーセンスで注目を集めている。

 

【関連リンク】
Laura day romance 公式サイト
https://www.lauradayromance.com/

Laura day romance / ローラデイロマンス (@lauradayromance) · Instagram
https://www.instagram.com/lauradayromance/?hl=ja

Laura day romance / ローラデイロマンス (@Lauradayromance) · Twitter
https://twitter.com/Lauradayromance

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