今日からランナー

新型コロナの制限下で、ランニングがもたらす「自由」

みなさん、走ってますか?!

筆者などは新型コロナウイルスを口実にすっかりサボり癖がつき、体重もちょっと他人に言えないくらいに増えてしまった。これはまずい、明日から復活しよう!と何度も一念発起しているが、なかなかエンジンがかかってこない。とくに気温が上がってきてからは、マスクランがキツくてキツくて……。これからの季節はやはり、人のいない時間と場所を選んでマスクなしで走るしかないと思っている。

筆者自身はそんな体たらくだが、世の中的にはそうでもないようだ。前々回の連載でインターネットマラソンの話を書いたが、それとは別に、ごく内輪のランナー仲間で毎週の走行距離をフェイスブックで報告し合い、1カ月で締めて誰がいちばん走ったかを競うお遊びをやった。筆者は前述のようにダメダメだったが、驚いたことに参加者の多くはコロナ前より距離を走っているという結果になった。中には、初めて月走400kmを超えた強者も出る始末だ。

報告し合うことが刺激になってライバル心を燃やしたのかと思ったら、それだけではない。在宅勤務で通勤時間がなくなったため、コロナ前より走る時間ができたというのだ。なるほど、そういうことかと納得した。実はこれ、世界的な傾向のようなのだ。

グローバルに展開しているスポーツ用品メーカー大手のアシックスが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて世界12カ国の週1回以上エクササイズをしている一般人を対象に「ランニングに関する意識調査」を行ったところ、約36%の人が外出自粛前よりも活発に運動しているという結果が得られたと発表した。

アシックスが実施した「ランニングに関する意識調査」より

アシックスが実施した「ランニングに関する意識調査」より

さらに、同社が提供しているランニング用アプリ「ASICS Runkeeper」(アシックスランキーパー)のデータを解析したところ、あらゆるレベルのランナーがより頻繁に、より長い距離を走っていることがわかった。さらに、ランキーパー利用者のうち、週に1度以上ランニングする人が世界で62%(日本では118%も!)増加したことが明らかになったという。

調査対象となったのは、日本、中国、インド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、オーストラリア、ブラジル、イギリス、アメリカに住む18歳から64歳までの男女で、週に1回以上の運動習慣のある人たちだ。インターネットを使った調査で、期間は2020年4月1日から5月末まで、回答者は1地域1000人(イギリスとアメリカは2000人)で合計1万4000人だった。

新型コロナによるランナーのニーズの変化を詳しく理解して、サポートすることを目的に実施されたというが、こうした世界規模の調査は筆者が知る限り初めてではないか。

調査では、さらにランニングの効果や新型コロナ後の運動習慣についても質問している。

興味深いのは、約3分の2の回答者(世界で67%、日本で41%)が現在のような困難な状況では、問題に対処する際にランニングなどの運動が精神面で役に立ったと答えていることだ。また、10人に8人(世界79%、日本65%)がランニングなどによって気分が晴れ、自分自身をコントロールできると実感したと答えている。

どうやら新型コロナ下でランニングの機会が増えたのは、身体面での健康維持だけが理由ではないようだ。

世界で81%、日本で84%の回答者がランニングは頭をスッキリさせるのに重要な役割を果たしていると述べ、約3分の2(世界65%、日本67%)が、ランニングは精神面におけるメリットがあると答えている。また、4分の3近く(世界73%、日本75%)が、新型コロナウイルスが収束した後も、現在と同じようにランニングを継続すると回答した。

走った後に「気持ちがいい」「サッパリした」という経験をしているランナーは普通にたくさんいると思う。それが調査によってより可視化されたということだ。

米スタンフォード大学のケリー・マクゴニガル博士

米スタンフォード大学のケリー・マクゴニガル博士(15年11月、西田裕樹撮影)

健康心理学者で米スタンフォード大学教授のケリー・マクゴニガル博士は、新型コロナ下でもランニングを続けることを「とても自然だと考えます」と言い、「現在のように制限の多い環境下でも、ランニングは多くの人々に直接的な身体の『自由』をもたらしている」とコメントしている。

ランニングが「自由」をもたらすとは、なかなかにいい話ではないか。

ところで前回、東京五輪・パラリンピックの開催時期に関する記事を書いたが、6月18日に告示された東京都知事選挙でも候補者によって意見が割れている。

・山本太郎氏「特効薬もワクチンもなく、来年の開催は現実的でない。中止にすべきだ」
・小池百合子氏「来年夏の開催に向けて安全安心な環境を確保し、簡素化に取り組む」
・宇都宮健児氏「専門家が困難と判断した場合は、IOCに中止を働きかける」
・小野泰輔氏「公衆衛生が優れていない国では感染拡大が止まらない。2024年に延期する」
・立花孝志氏「4年後、あるいは2年後に再延期。IOCに判断させ、費用負担を求める」

一見バラバラなようだが、現職の小池氏以外は「来年の夏は無理」だと言っている。そりゃそうだろう。日本はやや落ち着いたのかもしれないが、世界的にはまだ感染拡大期にある。選手は十分な練習もできなければ、選考会もままならない状況だ。

にもかかわらず、発言を聞く限り、どの候補者もアスリートのことに考えが及んでいないように思えた。小池氏の主張は論外(簡素化したオリンピックに意味があるのか?)だが、他の候補もオリンピックのことを議論するなら、アスリートの事情も視野に入れるべきだと思うのだが……。

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PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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