小川フミオのモーターカー

伊ブランドの自動車パーツが魅力 ダイハツ・シャレード「デトマソ・ターボ」

1980年代まで、日本の自動車メーカーは、自動車ファンとおなじ視線を持ちながら、クルマづくりをしていたのではないだろうか。2代目「ダイハツ・シャレード」(1983年)はそう思わせてくれるモデルだ。

とりわけ84年1月に追加された「デトマソ・ターボ」。70年代後半の「スーパーカーブーム」の渦中にいたクルマ好きたちが好んだ、イタリアのスポーツカーメーカー「デトマゾ」にプロデュースを依頼したモデルである(本連載は「デトマゾ」と表記しているが、ダイハツでは車名を「デトマソ」と表記した)。

この記事では、「デトマソ・ターボ」のことを書かせていただく。なにしろデトマゾといえば、私にとっても、思い出がいろいろあるメーカーだ。好きなクルマもいろいろある。大好きなのは、「デトマゾ・バッレルンガ」(64年)。1.6リッターのフォードエンジンを搭載しながらも軽快なハンドリングと、美しいスタイリングを持った1台だ。

ダイハツ・シャレード・デトマソ・ターボ

ダイハツ・シャレード・デトマソ・ターボ

デトマゾは、そののち「マングスタ」(66年)や「パンテーラ」(71年)を出し、世界中のクルマ好きの興味をおおいに惹(ひ)きつけるようになる。日本のスーパーカー少年にも人気があったモデルだ。

デトマソ・ターボは、993cc直列3気筒ターボエンジンを搭載したシャレードターボがベース。パワフルなことに加え、デトマゾが外装と内装に手を入れたスペシャルモデルだ。

車体側面にでかでかと「DETOMASO」というデカールが貼られていた。それだけでも十分カッコよかった。もちろん、それだけでは終わらない。さらに、レッドを主体にブラックのアクセントカラーを入れたカラーリング、フロントバンパー下のエアダム、リアクオーターピラーに装着されたエアスポイラーなど、他にない雰囲気を特徴とした。

デトマソ・ターボのベースになったシャレードターボ(ドルフィントップ装着車)

デトマソ・ターボのベースになったシャレードターボ(ドルフィントップ装着車)

当時、日本の自動車好きが憧れていた海外の自動車部品がいろいろ装着されていたのも魅力である。ゴールドのホイールはカンパニョーロ、タイヤはピレリ、ステアリングホイールはモモ。どれもイタリアのラリー車などでおなじみのブランドだった。

タイヤを換えたり、空力パーツを付加すれば、走りの性能が上がるのはよくあること。このクルマの場合、デトマゾがどれだけベースのターボ車の性能を引き上げるのに貢献したか、残念ながらはっきりとわからない。けれど、雰囲気というのも、自動車には大切だ。

ダイハツで企画を担当した人は、単なる自動車好きだった私たちとおなじような目線で、このクルマを作りあげるのを楽しんだのではないかと、当時、うらやましく思ったものだ。

ダイハツではこのシャレードにモータースポーツ向け高性能版「926ターボ」も設定。シャレードの若々しいイメージは強かった。そののち、86年と93年のモデルチェンジを経ても、「デ・トマソ」モデルはラインアップに残った。

モータースポーツのために開発された「926ターボ」

モータースポーツのために開発された「926ターボ」

93年のモデルチェンジでシャレードの排気量が大きくなった。これが中途半端と、マーケティング的には裏目に出た。加えて、当時ダイハツのラインアップが拡充していくなかで、RVやスポーティーなコンパクトカーのなかに「デトマソ」は埋もれていってしまった。

デトマゾの名にときめいたクルマ好きのためのモデルだったが、スーパーカー少年だって大人になる。デトマゾのパワーも、そうそう長続きするものではなかったのだ。デトマゾ好きとしては、コンセプトカーで終わってしまったミドシップの「デトマソ926R」(85年)を、製品化してほしかった。

(写真=ダイハツ提供)

【スペックス】
車名 ダイハツ・シャレード・デトマソ・ターボ
全長×全幅×全高 3600×1575×1390mm
993cc直列3気筒 前輪駆動
最高出力 80ps@5500rpm
最大トルク 12.0kgm@3500rpm

あわせて読みたい

コンパクト車の特性を追求した“5平米カー” 初代ダイハツ・シャレード

ベースは軽商用車 “レジャー時代のパーソナルカー” ダイハツ・フェローバギィ

“素材感”がカッコ良かったダイハツ「ネイキッド」

小川フミオのモーターカー:連載一覧はこちら

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

華美を廃したことで強烈な存在感を生み出した 4代目リンカーン・コンチネンタル

一覧へ戻る

RECOMMENDおすすめの記事