原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

原田泰造とコトブキツカサ 自宅でゆっくり楽しむオススメ映画作品2本 ~後編~

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画好きなオトナのお二人が、新作や印象に残る名作について自由に語る対談企画。今回はステイホームの期間中にお二人が自宅で鑑賞した名作を前編・後編の2本立てでご紹介。前編は原田泰造さんオススメの『牯嶺街少年殺人事件』、後編はコトブキツカサさんオススメの『ウォールフラワー』について深掘りします。

監督・脚本・原作  スティーヴン・チョボスキー

出演  ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー

(TOP画像:『ウォールフラワー』©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.)

 

◇◆◇

コトブキ 僕が今回チョイスしたのは『ウォールフラワー』です。泰造さんはご覧になったことあります?

原田 いや見てなかったんだよ。だから初見だったんだけど、見て本当に良かったと思える作品だったね。

コトブキ 僕は公開された時から大好きな作品なんですよ。いま僕の家には、映画のポスターが3作品だけ貼ってあるんですけど、『2001年宇宙の旅』『市民ケーン』、それと『ウォールフラワー』。

原田 そんな名作と匹敵するくらい、思い入れがあるんだ。

コトブキ ジャンルとしては青春映画になるんですかね。チャーリーという、高校に進学した少年が主人公なんですけど、ちょっと消極的な性格なので、学校に馴染(なじ)めない。そんな彼がパトリックと義理の妹のサムという、上級生の兄妹に出会ったことで世界が開けていくというストーリーです。

『ウォールフラワー』 価格:¥1,143(税抜) 発売・販売元:ギャガ ©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

『ウォールフラワー』 価格:¥1,143(税抜) 発売・販売元:ギャガ ©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

原田 チャーリーを演じたローガン・ラーマンが繊細な演技で良かったよね。それと、サム役のエマ・ワトソンも輝いてた。

コトブキ チャーリーはサムに恋心を抱くんですけど、チャーリーより、サムがちょっと年上というのがいいんですよ。上級生に憧れるというシチュエーションは、このジャンルでいえば鉄板じゃないですか。

原田 ふたりのキスシーンもドキドキするし、これは青春映画のマスターピースだなと思って、普通に映画に入り込んで見てた。でも、終盤あたりから、シリアスな秘密が次々と明かされていくから、これは思ったより深い作品だぞって驚いた。

コトブキ それぞれが秘めていた悩みが表面化していくんですよね。

原田 この年代が抱えてる友情や恋愛がテーマなのかなと思ったんだけど、ちょっと待てよ、あの叔母さんのエピソードはなんだったんだろうということになって、それがだんだんわかってくる。最初は椅子に深く腰掛けて見てたけど、終盤は前のめりになってた。

コトブキ この作品は、もともと小説が原作で、それがまず大ヒットしたんですよ。それで映画化の話になって、制作陣が原作を書いたスティーブン・チョボスキーに許可をもらいにいく。で、たぶん「俺がやるならいいよ」ってことになって、チョボスキーが脚本と監督をすることで映画化が実現したんです。原作を書いた人が監督もやるっていうパターンは珍しいですよね。

原田 自分で書いた原作を、他の誰かに撮らせたくなかったんだろうね。

コトブキ そこなんですよ。これを誰かに預けたら単なる青春映画になっていたかもしれない。チャーリーと叔母さんの話とか、パトリックの性的指向の部分とかがカットされる可能性もあったわけですよ。

原田 パトリックが隠れて付き合っていたブラッドという男が、みんなの前だと冷たい態度を取って、チャーリーがそれを知って殴りかかるという、あのランチタイムのシーンはこの作品の山場。あれをちゃんと描かないとダメだよね。

コトブキ ドラッグとかも自然に描いてるから、それでレーティング(鑑賞者の年齢制限)も変わってくる可能性があるんですよ。でも、それは原作にもある要素だし、いまの若者のリアルなんでしょうね。

原田 周囲の大人の描き方もリアルだった。学校の先生とか、精神科の先生とか、子供たちを見守る距離感が絶妙でね。

コトブキ 僕にとっての、この映画のベストシーンはチャーリーがサムとパトリックと打ち解けて、3人で車に乗ってトンネルを走り抜けるところ。サムが車から身を乗り出して風を受けて、そこにカーステレオからデヴィッド・ボウイの『ヒーローズ』が流れて、チャーリーが『永遠を感じる』とつぶやく。青春映画とは何かって聞かれたらね、このシーンのことだと思うんですよ!

原田泰造とコトブキツカサ 自宅でゆっくり楽しむオススメ映画作品2本 ~後編~

『ウォールフラワー』というタイトルの意味なんですけど、直訳すると「壁の花」じゃないですか。だから、パーティーに行っても誰にも話しかけられずに壁を背に小さく立ってるみたいな存在。チャーリーは、最初はまさにコレだったんですよ。

原田 僕もパーティーに行くといつも「ウォールフラワー」だよ。ああいう雰囲気が苦手で、ずっと壁に背を着けて飲んでる。その時いつも考えるんだけど、いまこうして壁背負って飲んでるところを俯瞰(ふかん)で撮ったら、僕だけジッとしてて、周りがチャカチャカ動くようなシーンが撮れるんじゃないかなって。

コトブキ よく、待ちぼうけみたいな時に使われる映像表現ですよね(笑)。それを言うなら、これ信じてもらえないと思うんですけど、僕もすごい人見知りで、ウォールフラワー側の人間なんですよ。自粛期間中もずっと家にいましたけど、全く苦じゃなかったですから。

原田 そこは共通するかもね。だからこそ、チャーリーの気持ちがわかるし、こういうタイプの映画が好きなのかもしれない。

コトブキ 今回は何にも打ち合わせもせずに1本ずつ挙げましたけど、どちらも青春モノでしたね。

原田 青春モノは郷愁も感じるけど、思い返すと痛いような部分も刺激されるから、なんともいえない気分になるよね。オジサンはずっと家にいるとこういう映画を見たくなっちゃうのかな。

コトブキ 時代背景も作風もぜんぜん違う作品ですけど、意外と共通点もありましたよね。奥手な主人公が、ちょっと進んだ女性に憧れて、理想と現実を知る、というか。結末はぜんぜん違いますけど。

原田 追い詰められてるのは同じなんだけど、『牯嶺街』は周囲の大人や友達から疎外されていたから、ああいう結末を迎えてしまった。『ウォールフラワー』は周りが助けてくれた。主人公を取り巻く環境が違っていたから、結末もああなったのかもしれないね。

コトブキ いまこの年齢だからこそ、青春時代の甘さも苦さも受け止められるっていう部分もありますよね。恋愛についても、もっとこうすればなんて思うけど、自分がその年齢だったら、そうするなっていうのもわかるんですよ。あの頃は、どうしてあの娘は、あんなヤツと付き合ってるんだ、とか思ってしまうものじゃないですか。

原田 くりぃむしちゅーの上田くんが言ったんだけど、付き合うくらいまでいくってことは、やっぱりいろんなレベルが同じなんだって。だから、相手に対して「なんだよ」って思うことがあっても、それは自分に言ってるようなものだと。

コトブキ 上田さんはよく「合わせ鏡の法則」って言ってますよね。これは仕事でも同じで、くすぶってるやつには、くすぶってるスタッフが集まってくる。ウチのマネジャーが使えないんだよ、なんて文句言ってるやつには、仕事ができないマネジャーがつくものなんだ、と。

原田 そうなんだよ。それを言ったらおしまいなんだよね。

コトブキ 自分を上に置いて、周りを見下すから文句が出るんですよ。全部同レベルと考える。それで文句を言うってことは、鏡に向かって自分に文句を言ってるってことになりますから。

原田 やっぱり嫉妬っていうのも、そういう目線のギャップから起こるものじゃない。『牯嶺街』も『ウォールフラワー』も、嫉妬っていうのがポイントになってくるよね。僕は、若い頃は嫉妬の塊みたいな人間だったんだよ。彼女が他の男と話してるだけで「うぉぉ!」ってなったり。でも、大人になるにつれてそういうのがなくなってきたから、それだけでも年取って良かったなと思って(笑)。

コトブキ 泰造さんでもそんな感じだったんですか。

原田 あのままで来てたら、しんどかったと思う。若い時に嫉妬の炎を燃やし続けたから、だんだん火力が弱まった。年取ってから燃え出したら、ほんとにヤバかったと思うよ。

コトブキ 独占欲というか、自分の思い通りにならないイライラみたいな感情は、若い時のほうが強いんでしょうね。『牯嶺街』も『ウォールフラワー』も、主人公がヒロインに「僕が君を支えてあげる」みたいなこと言うんですよ。これ、純愛みたいに聞こえますけど、わりと上から目線ですからね。そのおこがましさを、相手は敏感に感じとるんでしょうね。でも、あの頃の僕らは本気でそういうこと言っちゃうんですけどね……。

原田 青春映画は家でじっくり見て、こうやって語りあうのに向いてるかもね。今回は自分を振り返る時間がもらえたから、家にいるというのも悪くなかったかもしれないね。

『ウォールフラワー』 価格:¥1,143(税抜) 発売・販売元:ギャガ ©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

『ウォールフラワー』 価格:¥1,143(税抜) 発売・販売元:ギャガ ©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

(文・大谷ゲン 写真・林紗記)

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&編集部からのお知らせ

2019年2月27日より連載を開始した『原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」』は今回をもちまして終了とさせていただきます。みなさま、長らくのご愛読ありがとうございました。

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PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

原田泰造とコトブキツカサ 自宅でゆっくり楽しむオススメ映画作品2本 ~前編~

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