小川フミオのモーターカー

機能主義的な2ドアハッチバック フォード・フィエスタ

自動車業界にはゴルフスクールという言葉がある。それは、フォルクスワーゲン・ゴルフが開拓した機能主義的なハッチバックの路線に乗ったクルマを意味する。ここで紹介する「フォード・フィエスタ」は、その一例だ。

素人目には、フォルクスワーゲン車と区別がつかないようなスタイルのフィエスタ。初代は1976年に登場した。

(TOP写真:英国で開催された初代フィエスタを中心としたオーナーミーティングのひとコマ)

ちょっとぜいたくな「ギア」仕様

ちょっとぜいたくな「ギア」仕様

ゴルフが74年発表なので、フィエスタを開発したドイツ・フォードは、その成功を待って開発したのではない。並行して開発していたのだ。着手した時期とか社内の調整とかで、フォルクスワーゲンより時間がかかってしまったのだろう。

私はこのクルマのスタイルが好きだった。前後輪をなるべく車体の外側に押し出したような、力強さを感じさせるプロポーションが理由のひとつ。

「サンドパイパー(鳥の“イソシギ”)」と呼ばれた2トーンの限定車

「サンドパイパー(鳥の“イソシギ”)」と呼ばれた2トーンの限定車

さらに、ルーフの前後長を短めにしてハッチゲートを寝かした、少しスポーティーなプロファイル(側面からのスタイル)や、控えめだけどバランスがとれたフロントグリルのレイアウト(ヘッドランプとグリルの配置)など、小型ハッチバックのお手本のようだ。

コストダウンを狙って2ドアのみというのも、割り切りがいい。当時の欧州では、全長3.5メートルという、日本の軽自動車規格(3.4メートル以下)よりごくわずか大きいだけの車体なら、2ドアでよい、という考え方が主流だった。

あえて華美を排したモダンデザインが好ましい

あえて華美を排したモダンデザインが好ましい

生産も同様に効率主義的である。フォードがフィエスタを作ったのは、当時流行しはじめた、世界各地の工場を使った効率重視のワールドカー構想にのっとったもの。フィエスタはドイツ・フォードが設計したが、生産は英国とスペインで行われた。

当初はベーシックカーとしてスタートしたが、やがて変わる。コンパクトカーのマーケットに、競合メーカーがスポーティーな仕様を投入し、大きな販売が見込まれるようになると、フォードもそこに追随。81年には「XR2」というパワフルなモデルを追加した。

これは後にカスタマイズされた仕様

これは後にカスタマイズされた仕様

思い起こせばこのころ、フォードは「エスコート」というラリーでも知られたモデルに「XR3」、上級車種の「シエラ」に「XR4i」とスポーツモデルを設定。日本には正式輸入されなかったのを残念に思ったものだ。とりわけ「XR2」は800キロの車体に、82馬力の1.6リッターエンジン搭載と、おおいに興味を引かれたのを覚えている。

フィエスタは、日本が海外と貿易摩擦を起こしていた時期に、国内販売された。自動車メーカー各社は、摩擦解消に協力を、ということで、海外のクルマを販売した。フィエスタを担当したのはホンダ。でも、「HISCO」と呼ばれたホンダ系列店のステッカーを貼ったフィエスタを見かけるのはまれだった。

歴代フィエスタが勢ぞろい(右の青いモデルは第1世代が83年にマイナーチェンジを受けたもの)

歴代フィエスタが勢ぞろい(右の青いモデルは第Ⅰ世代が83年にマイナーチェンジを受けたもの)

私はその後、スペインに行ったとき、レンタカーでフィエスタを借りることが出来た。昔憧れた人に出会えたようでとても嬉(うれ)しかった。

でも1リッターエンジンだったせいもあるのだろう。スペインの山岳路の上りではかなり遅くて、おおげさにいうと、百年の恋がさめた気分になった。これは我が人生において特筆すべき、クルマにまつわるガッカリ事件である。でもいまも、忘れられないクルマだけれど。

(写真=FORD提供)

【スペックス】
車名 フォード・フィエスタ1.0
全長×全幅×全高 3565×1565×1360mm
957cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 40ps@5500rpm
最大トルク 6.5kgm@2700rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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