キャンピングカーで行こう!

居住空間広がる「スライドアウト」 国産キャンピングカーで少ないワケは?

「走るときは小さく、使うときには大きいキャンピングカーはありますか?」

なぞなぞのようですが、実際、そんなキャンピングカーはあります。今回は、そんな夢をかなえてくれる「スライドアウト」について考えます。

(TOP画像=アメリカ製キャンピングカーのスライドアウト。左右あわせて約1mも広がる。もはや家のリビングと変わらない広さだ=photo:Winnebago Inc.)

アメリカ製なら当たり前の機構

道路事情を考えれば、走る間はコンパクトな方がいい。居住性を考えれば、停車中は広い方がいい。キャンピングカーユーザーの悩みの一つだといえるでしょう。そんな悩みへの答えの一つが「スライドアウト」です。

スライドアウトとは、文字通り、居室の一部が「スライド」して「外へ拡がる(アウト)」する機構のこと。アメリカ製キャンピングカーでは自走、トレーラー問わず、かなりの割合で装備されています。それも1カ所だけではなく、2カ所、3カ所と取り付けられていて「可能な限り広くしたい」という要望の多さがうかがえます。

特に広さが求められる部屋は「リビング」。車の左右両方にスライドアウトが装備され、それぞれ50cmずつも広がります。もともと大きなアメリカ製キャンピングカーですから、幅が1mも広がった状態は一般住宅のリビングルームに引けを取りません。不思議なもので、長さが1m伸びるより幅が1m伸びたほうが、はるかに広さを感じるものです。

現時点で国産唯一のスライドアウト付きキャンピングカー、かーいんてりあ高橋の「ネオユーロ・スライドアウト」(photo:かーいんてりあ高橋)

現時点で国産唯一のスライドアウト付きキャンピングカー、かーいんてりあ高橋の「ネオユーロ・スライドアウト」(photo:“かーいんてりあ高橋”)

ヨーロッパにもほとんど見当たらない

では、同じ海外製でもヨーロッパのキャンピングカーはどうでしょうか?

ヨーロッパのキャンピングカーにも、アメリカ同様、やたらと車体の大きなタイプのものはあります。しかし、不思議とスライドアウトの機構はほとんど見かけません。その理由は、キャンピングカーに対する考え方の違いにあるように思います。

いつも、アメリカ製やヨーロッパ製の話をするとき、こんな説明をしてきました。

・アメリカ=国土が広くてどれだけ大きい車でもOK。部屋は大きく広く、便利な設備はすべて持っていきたい
・ヨーロッパ=都市部の道路幅が狭く、坂が多い場合もある。あくまでも旅の装備として、なるべく簡易に、でも、センス良く

この違いが居住空間の使い方や広さへの考えにも影響しているように思います。

ヨーロッパでのキャンピングカーの使われ方は、どちらかというと「自然を楽しむ」「自然に親しむ」という印象です。キャンピングカーは宿泊のツール、あるいは悪天候時の逃げ場所と割り切って、昼間はなるべく外で過ごす。設備の整ったキャンプ場には常設のテントルームがあり、キャンピングカーやトレーラーを横付けすれば、そのまま広いアウトドアリビングになるのも、スライドアウトが少ない理由かもしれません。

それでも「室内を広く使いたい」と思う気持ちは万国共通。そこでヨーロッパ車では、スライドアウトは少ないかわりに「プルダウンベッド」の機構が人気です。これは、ベッドが天井に張り付いていて、寝るときだけ引っ張り下ろす(プルダウンする)というもの。

国産のキャブコンやアメリカンのクラスCのように、屋根部分のベッドが出っ張っているのではなく、内部の天井に仕込まれている、というわけです。寝るときまでベッドは天井に張り付いていますから天井高は高いまま。必要なときだけ、ゆったりしたベッドが下りてくる仕組みです。

なかなか「広げ」にくい国内事情

 現在、国産キャンピングカーでスライドアウトの機構を装備しているのは、「かーいんてりあ高橋」社の「ネオユーロ・スライドアウト」しかありません。同車のスライドアウトは右サイドに一か所で、広がる幅は30cm。4人掛けソファの座面分だけ、外に広がるのみですが、元々がトヨタ・タウンエースをベースにしたコンパクトキャブコンなので、たとえ30㎝でもかなり広く感じられます。

「ネオユーロ・スライドアウト」を展開したところ。広がる幅は30cmだが、コンパクトな車両だけに30cmの効果は絶大だ(photo:かーいんてりあ高橋)

「ネオユーロ・スライドアウト」を展開したところ。広がる幅は30cmだが、コンパクトな車両だけに30cmの効果は絶大だ(photo:“かーいんてりあ高橋”)

ここで疑問なのが、なぜスライドアウトを装備した国産キャンピングカーがあまり登場しないのか、ということです。それには、いくつかの理由が考えられます。

①使い方の問題

アメリカ製のように元から大きな車体であれば、スライドアウトを展開しなくても、なんとか通路を確保できます。が、国産車はベースが小さいため、スライドアウトを閉じた状態でも使えるレイアウトにするのは困難です。

スライドアウトを展開できる場所ばかりではないのも要因の一つ。広さに余裕のあるキャンプ場やRVパークでは問題なくても、道の駅やサービスエリアで仮眠などをするときは展開できません。日本のキャンピングカー事情は、決してスライドアウトを使いやすいとは言えません。

②重量の問題

スライドアウト機構を組み込むためには、レールや駆動装置のほか、それを支えるフレームの強化も必要です。となると、どうしても重量が増えてしまいます。ベース車の定格限度荷重に対してあまり余裕がなく、重量にシビアな日本では、なるべく車は軽くしておきたい人が多いのです。

「走るときは小さく、使うときには大きく」。理想的に思えるスライドアウトですが、残念ながら現時点で、国産キャンピングカーへの装備は難しいようです。

とはいえ、キャンピングカーを取り巻くインフラや税制も変わるかもしれません。昨今のキャンピングカー人気を考えれば、今後はより理想的なベース車が登場するかもしれません。未来のキャンピングカーがどんなレイアウトになるのか、楽しみです。

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PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹と妻ひとり。

・YouTubeチャンネル「キャンピングカー坊主めくり」開設!
https://www.youtube.com/channel/UCZzeJtgZFLR0yJLkr052kug

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