小川フミオのモーターカー

フォーマルにもパーソナルユースにも 大きくて豪華な日産セドリック330

1970年代の日産車は派手だった。例えば、75年に登場した「日産セドリック(およびグロリア)」(330型)。先代はすっきりしたボディーラインが印象的だった。先代の色々なところに手を入れて“おおげさ”にしたのがこの4代目だ。

(TOP写真:日産セドリック2ドアハードトップ2800SGL)

上下幅のある大型バンパーをはじめ、フロントグリルはクロームメッキで装飾されていた。抑揚がはげしくつけられたボディーと、そのいたるところにもまたクローム。全長4.7メートルのサイズは堂々としていた。

4ドアセダン2000SGL

4ドアセダン2000SGL

大きくて豪華に見えるクルマが欲しい、というユーザーへの提供価値がはっきりしていたということだろう。ボディーバリエーションとして、4ドアに加え、4ドアハードトップ、2ドアハードトップと、フォーマルにもパーソナルユースにも、と幅広い層へアピールしていたのも特徴的だ。

個人的な好みは、4ドアハードトップ。センターピラーをもたないので、サイドウィンドーをすべて下ろしたときの開放的な雰囲気が優雅と思えたからだ。

4ドアハードトップ2800ブロアム

4ドアハードトップ2800ブロアム

日産車が米国車のデザインの影響から脱していない時期のデザインである。フロントグリルを含めて全体のシルエットや、ぶ厚いクッションのシートを含めた内装の雰囲気は米国車的だが、もちろん、完全な米国車ではない。当時は“コピーしてる”と思ったものだけれど、いまの眼なら、折衷的なスタイルを個性として評価したい。

4ドアハードトップ2800ブロアムのフロントシート

4ドアハードトップ2800ブロアムのフロントシート

エンジンは2リッターと2.8リッターの6気筒が用意されていた。でも排ガス規制実施直後だったこともあり、気化器がひとつしか装着されていないため非力。ここは米国車と決定的に違うところだったのだ。

4ドアハードトップ2800ブロアムの運転席まわり

4ドアハードトップ2800ブロアムの運転席まわり

この330型の大きな特徴は、「ブロアム」という最上級グレードが77年に追加設定されたことである。この後、日産は多くの車種で、長い間、このブロアムのグレード名を使ったものだ。

2ドアハードトップ2000SGL

2ドアハードトップ2000SGL

興味深いのは、なぜ「ブロアム」(英語読みだとブルーム)とつけたのかだ。60年代のキャデラック・フリートウッド・シクスティスペシャル・ブルーム(長い)あたりを参考にしたのかもしれない。でも本来、ブルームBroughamというのは、ちょっと違う。

2ドアハードトップ2000SGLのダッシュボード

2ドアハードトップ2000SGLのダッシュボード

馬車の時代は、運転者(御者)が座る席はオープンで、雨風に吹かれっぱなし。後席にのみルーフがついた車体があった。この形式がブルーム。のちに米国車は、後席の部分だけビニールトップで覆った(それで馬車時代の雰囲気を出した?)キャビンをブルームと呼んだこともある。前記のキャデラックもそんなクルマだ。

日産車の場合、なんでブルーム(ブロアム)って名づけたのか。私には不明。歴代セドリックではぜいたく仕様がブロアムだったので、後席重視のコンセプトをブロアムにつなげたのだろうか。

2ドアハードトップ2000SGLのシート

2ドアハードトップ2000SGLのシート

このあと79年の次世代、430型からセドリックとグロリアは直線基調の、日産のオリジナリティーが強くでたデザインへと大きく変わる。それに対して、330型は、米国車の要素も取り込みながら、市場での成功をめざした開発者の情熱を強く感じさせる点で、私にとっては、エポックメイキングな1台なのだ。

4ドアセダンのダッシュボードは事務的な印象

4ドアセダンのダッシュボードは事務的な印象

(写真=日産自動車提供)

【スペックス】
車名 日産セドリック4ドアハードトップ2800SGL
全長×全幅×全高 4785×1705×1430mm
2753cc直列6気筒 後輪駆動
最高出力 140ps@5200rpm
最大トルク 22.5kgm@3600rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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