小川フミオのモーターカー

長距離ドライブも快適 マクラーレンGT試乗で三重・賢島へ 伊賀上野「金谷」の伊賀牛食レポも

いま、クルマの世界では、長旅も楽チンなスーパースポーツカーというジャンルが活気づいている。ポルシェ911カレラしかり、フェラーリ・ローマしかり。イギリスの強力なコンテンダーが「マクラーレンGT」である。

(TOP写真:マクラーレンGT。三重・伊賀上野の「金谷」前で)

マクラーレンGTは、4683ミリの全長に対して、2095ミリの全幅。運転席の後ろに、エンジン用のエアインテークが口を大きく開けている。ドアは前ヒンジを使い上に跳ね上がる。流れるようなボディーデザインは美しいとはいえ、個性的であり、迫力はハンパない。

マクラーレンGTは最高時速326キロだという

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このクルマに関するトピックスは、スタイリッシュだったり、スポーティーだったり、いろいろある。なかでも最大のものは、ゴルフバッグを含めて荷物がたくさん積めて、しかも長距離のドライブが快適、ということである。

私は実際に、東京から三重の賢島(かしこじま)までロングドライブをした。長い旅もこなせるように作ったクルマの真価を試してほしい、というのがマクラーレンの日本法人の希望だったのだ。

ディヒドラルドアが開いた様子はマクラーレンおなじみのもの

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そのチャンスに甘えて、私は、新型コロナウイルス対策による県をまたいだ移動の自粛が解除された7月上旬、500キロ走った。はたして、まったく疲れない。いちどトイレ休憩をしただけ。自然の要求がなければ、ノンストップでまったく問題ないほど、乗り心地といい、加速性といい、ストレスフリーだった。

マクラーレンといえば、F1やGTといったレースでも知られるように、モータースポーツ界のビッグネームだ。90年代のアイルトン・セナの活躍をはじめ、その名前を耳にするだけでうっとりするような自動車好きもけっこういるはず。

前ヒンジで跳ね上がるディヒドラルドアは特殊なデザインのシャシーを使うための方策であるが乗降性にもすぐれる

前ヒンジで跳ね上がるディヒドラルドアは特殊なデザインのシャシーを使うための方策であるが乗降性にもすぐれる【もっと写真を見る】

量産スポーツカーも、いまは同じ建物内にいるF1開発チームと交流を持ちながら開発されているとか。今回のマクラーレンGTにどこまでF1のDNAが入っているかは不明なのだけれど、とにかく、エンジン性能といいハンドリングといい、見事のひとこと。

4リッターV型8気筒エンジンは、620馬力の最高出力を誇る。車内のドライブモードセレクターで「スポーツ」を選択しておくと、とりわけ、アクセルペダルを少し踏み込んだだけで反応よく、高回転域までいっきに回る。このときの音質や加速感。あまりに気持ちがよくて、死にそうだ。

ステアリングホイールにスイッチ類が備わらないのがリアルスポーツカーぽくて気持がよい

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スポーツカーのよさとは、ドライバーの意思に忠実に走ってくれる一体感にある、と私は思っている。それがほとんどすべて。マクラーレンも期待を裏切らない。ただしマクラーレンGTを経験すると、さらにもっとあると思い知らされた。

東京から向かう途中、御殿場から名古屋までは(比較的)あたらしい新東名高速道路(第二東名)を使った。舗装面が荒れていない道では、マクラーレンGTの魅力をよりよいかたちで経験できる。

「モノセルⅡ-T」というカーボンファイバー製のバスタブ型シャシーは剛性感がとても高い

「モノセルⅡ-T」というカーボンファイバー製のバスタブ型シャシーは剛性感がとても高い【もっと写真を見る】

路面に吸いつくように走り、加速も減速もドライバーの思いのまま。クルマは速いだけでは本当の意味で高性能車とはいえない。しっかり減速できないといけないのだ。マクラーレンGTの性能は見事だ。

そもそもマクラーレンはスーパーがつくスポーツカーでありながら、乗り心地のよさを特徴としていた。マクラーレンGTでは、従来のモデルに輪をかけて、足まわりがしなやかに動き、しかも静粛性が高いのだ。

マクラーレンGTはキャビン背後に長尺ものの収納スペースがある

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目的地は賢島のリゾートホテル。ただし私はぜいたくな寄り道をさせてもらった。伊勢志摩に向かう伊勢自動車道を途中で降りて、伊賀上野へ向かったのだ。伊賀市上野農人町の「金谷」でランチをとるのが目的である。

マクラーレンGTならば、東京で朝ごはんを食べて、ランチは伊賀牛のすき焼きの予定も、楽々こなせる。疲れないからだ。

「金谷」4代目の金谷泰宏氏

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このお店は、1928(昭和3)年から、伊賀牛のすき焼きを提供してくれている。ファンが多く、京都に住んでいた私の妻の祖父(故人)もその一人で、「あそこは本当においしい」とさかんに言っていた。

映画監督の黒澤明も、かつて京都・太秦(うずまさ)で撮影があるときは、ひと月に3、4回も、同店のすき焼きやバター焼きを目当てにタクシーを飛ばしてきたそうだ。たしかに、伊賀牛のおいしさも、大きな魅力の一つである。

「生産者は餌を工夫していて、甘みがあるのも特徴です」。同店の4代目主人の金谷泰宏氏が、私たちを出迎えてくれ、そう教えてくれた。ショーケースのなかに並んだ各部位のかたまり肉やスライス。見事なぐらい美しい色と、適度なサシ。見ただけで、その魅力に頭がくらくらするほどだ。

「松阪では松阪牛は贈答とか高級店にいってしまいますが、伊賀では日常的に牛肉を食べます。そのせいもあって、伊賀牛は美味なのに価格がこなれています」

2016年の伊勢志摩サミットで各国の政治家に提供されたことでも知られる伊賀牛は、風味が豊かだ。

「金谷」では、すき焼きと、バター焼きで、ロースやシャトーブリアン(フィレ肉の中央部)を食べた。適度な歯ごたえと、鼻孔に抜ける牛肉独特の香りは絶品。脂で胃がもたれないのもうれしい。思えば、伊賀牛とは25年ぶりぐらいの再会だよ。

伊賀牛のバター焼きはバターとマーガリン半々で焼きつけ、ガーリックしょうゆをおとした大根おろしとともに食べる

伊賀牛のバター焼きはバターとマーガリン半々で焼きつけ、ガーリックしょうゆをおとした大根おろしとともに食べる。すき焼きはフォトギャラリーで【もっと写真を見る】

「フェラーリとかランボルギーニのお客さんはいらっしゃいますが、マクラーレンは初めて見ましたなあ」。金谷氏は、店頭でしげしげとマクラーレンGTを眺め、内装をのぞきこんだ。

同店では駐車場が多く、平置きができるので、苦もなく駐車できる。一般の女性が晩ご飯のおかずに牛肉を買いにくる一方、マクラーレンGTだろうとブガッティだろうと、どんな客も迎え入れる。こういうのが、昔からの本当のぜいたくさなのだと、私は思った。

V8エンジンを収めたリア部分のボリュウム感がパワフルな印象

V8エンジンを収めたリア部分のボリューム感がパワフルな印象【もっと写真を見る】

(写真=マクラーレンオートモーティブ提供)

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【スペックス】
車名 マクラーレンGT
全長×全幅×全高 4683×2095×1213mm
3994ccV型8気筒 後輪駆動
最高出力 620ps(456kW)@7500rpm
最大トルク 630Nm@5500~6500rpm
価格 2645万円
マクラーレンオートモーティブ
https://cars.mclaren.com/jp-ja

    ◇

金谷本店
三重県伊賀市上野農人町434
0595-21-0105
http://www.gansoiganiku-kanaya.co.jp/

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

フォーマルにもパーソナルユースにも 大きくて豪華な日産セドリック330

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