小川フミオのモーターカー

“空間”を生かしたミニバン 初代ルノー・エスパス

いまや自動車の一ジャンルとして定着したミニバン。1980年代に米国と欧州でミニバンが続々出てきたときは、クルマの新しい可能性を見せてくれる斬新なジャンルと、強い印象を受けた。当時の代表的なモデルが84年に発表された、仏ルノーの「エスパス」である。

(TOP写真:初代ルノー・エスパス。荷物の積載量も大きく機能性が高かった)

斬新さとは、ひとつはスタイル。ステーションワゴンでもなければ、人員輸送用のトランスポーターともちがう。背の高い乗用車ともいうべきカタチなのだ。

バンパーと一体化したエアダムをまるごとペイントするのは当時のルノー車に共通するカラースキーム

バンパーと一体化したエアダムをまるごとペイントするのは当時のルノー車に共通するカラースキーム

フロントマスクは、一対の四角いヘッドランプに、横バーのグリルを組み合わせただけの、シンプルな構成だ。でも、角度を与えて逆スラントにしたことで躍動感が生まれているし、さらに大型のバンパー一体型エアダムとの組み合わせがスポーティーな雰囲気すら感じさせる。

もう一つ、新しかったのが、パッケージング。当時のルノー車独自の、「ペタル」(花弁)ともフランス語で呼ばれたシートを使う。ふんわりとクッションのやわらかな座り心地のシートだ。

シートが後ろを向いてくつろげるのもセリングポイントだった

シートが後ろを向いてくつろげるのもセリングポイントだった

機能的には、1列目シートを半回転させ後ろ向きにできる。2列目シートの乗員と、ラウンジのように対座して座っていられるのだ。大きな荷物を運ぶときは取り外しが可能である。

いまでこそ多機能シートはいろいろあるけれど、エスパス(フランス語で空間の意)が出たときは、たいへんユニークだった。まさに“空間”という機能を使い倒しているクルマだからだ。

視界のよい細いピラーは、いまでは安全基準をパスできないかもしれない

視界のよい細いピラーは、いまでは安全基準をパスできないかもしれない

エスパスのユニークな点は、さらにもう一つあった。ボディー軽量化のため、外板には合成樹脂が使われていることだ(経年変化で色あせてしまうのがタマにキズなのだけれど)。

ボディーが軽ければ、燃費にもいいし、操縦性も上がる。開発を担当したマトラ(2003年に消滅したフランスのブランド)にしても、最終的に開発を引き継いだルノーにしても、モータースポーツに深くかかわっていただけに、ミニバンでも、それまでの技術的知見を生かしたといえる。

いまも古びて見えないオリジナルデザイン

いまも古びて見えないオリジナルデザイン

エスパスがモデルチェンジを繰り返し、現在は2015年に出た第5世代となっている。当然、エンジンや駆動系をはじめ、運転支援システムやインフォテイメントシステムなどはアップデートされている。それでも基本コンセプトは変わっていない。

シートの座り心地は抜群だが床が意外に高くて脚を前に投げ出したように座るポジションをとらざるをえなかった

シートの座り心地は抜群だが床が意外に高くて脚を前に投げ出したように座るポジションをとらざるをえなかった

(写真=Renault提供)

【スペックス】
車名 ルノー・エスパス
全長×全幅×全高 4250×1780×1660mm
1995cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 110ps@5500rpm
最大トルク 16.6kgm@3000rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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