マストリスト

サンダルでもスニーカーでもない“ハイブリッドフットウェア” KEENの原点にして不朽の名作「ニューポート」

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす人が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

◇◆◇

夏が近づくにつれ、サンダルが気になってくる。ただスニーカーと比較すると長時間の歩行には向かず、また足の露出面積が広いためけがのリスクも高くなる。つま先をアスファルトにぶつけた「痛い」経験がきっかけとなり、敬遠するようになった人も多いはず。そんな方々にオススメなのが、スニーカーでもサンダルでもないフットウェア「ニューポート」

発売から15年以上が経過した現在もブランドを代表する売れ筋アイテムだという

発売から15年以上が経過した現在もブランドを代表する売れ筋アイテムだという

一流スニーカーブランドのOEM(他社ブランドの製品を製造すること)を手がけてきたローリー・ファーストは、豊富な経験を生かしてつま先を守るサンダル、ニューポートを創業モデルとして“発明”し、アウトドアフットウェアブランド「KEEN(キーン)」を立ち上げた。開発初期はヨットマンをターゲットとしていたが、固定観念にとらわれることなくアイデアを積み重ねていった結果、用途を限定しない「ハイブリッドフットウェア」という概念を作り上げた。

こうして2003年にアメリカで発売されたニューポートは、汎用(はんよう)性と安全性の高さから大ヒット。現在までに累計3000万足という驚異的な売り上げを達成している。キーン・ジャパンのブランドディレクター・高木雅樹さんは当時を次のように振り返る。

「アウトドア・リテーラーショー(※世界最大級のアウトドア用品の展示会)に小さなブースを出したところ、経験豊富なシューズバイヤーさんの間で『多用途に使えるフットウェア』として評判になったんです。その結果、コアなアウトドアショップから、中高年のお客様がウォーキングシューズを購入される『ブラウンシューズショップ』と呼ばれる街の靴屋さんに至るまで、多種多様なお店で展開していただくことができました。発売直後から幅広いユーザーに受け入れられたのは、ニューポートの魅力をいちはやく理解してくださったショップの皆さんの力も大きかったです」

「春夏秋を通じて驚くほど何にでも使える万能靴です」とキーンのブランドディレクター・高木雅樹さん

「春夏秋を通じて驚くほど何にでも使える万能靴です」とキーン・ジャパンのブランドディレクター・高木雅樹さん

サンダルはつま先を守ることができるか、というテーマが生み出した汎用性

つま先を覆う部分とアウトソールが一体化した形状のアウトソール。今となっては珍しくないディテールだが、実は「ニューポート」がオリジナル

つま先を覆う部分とアウトソールが一体化した形状のアウトソール。今となっては珍しくないディテールだが、実はニューポートがオリジナル

ニューポートを生み出したデザイナーはヨット愛好家でもあり、かねて船上で安全かつ快適に使えるフットウェアを模索していた。デッキ上で使用するとなれば、水はけの良さはもちろん、つま先をロープや危険な突起物から守る必要がある。ところが当時は二つの条件を満たしたシューズが見当たらなかった。

「つま先を守るサンダルがあれば」

そう考えたデザイナーが考案したのが、ソールと一体になった樹脂製つま先ガード「トゥ・プロテクション」だった。このありそうでなかった機能こそが、ニューポートの汎用性を生み出したと言っても過言ではない。サンダルの急所であるつま先を覆ってしまうことで、水辺だけでなく、アウトドアフィールドや街中はもちろん、「サンダル履き厳禁」とされてきたスケートボードや自転車に乗るシーンでさえ使えるようになったからだ。

ワンタッチで調整可能なシューレースはストレッチ素材。しっかりとフィットさせた状態でも動きに合わせて伸縮する

ワンタッチで調整可能なシューレースはストレッチ素材。しっかりとフィットさせた状態でも動きに合わせて伸縮する

シリコンを含有するウォータープルーフのヌバックレザーを使っているため、通常のレザーサンダルと比べて水を吸いにくく、劣化による割れも起こりにくい。また解剖学に基づくデザインが生み出す包み込むようなフィット感も特徴だ。さらに内側にも履き心地を高める配慮が施されているという。

「レザーサンダルにありがちな靴擦れを防止するため、ライニング(裏地)には非常に柔らかなゴム系素材『SBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)』を採用しています。足あたり感が良く、フィット感も高いだけでなく、素肌で触ってもアレルギーが起きにくいのが特徴で、履き心地はスポーツシューズに近い。速乾性も備えているので少々濡(ぬ)れても、しばらくすれば乾いてしまうはずです」

デザインに隙間を採用したことも手伝って、通常のスニーカーよりもハードな動きに追従してくれるというアッパー。裏地に使われている「SBR」もストレッチ性を備えている

デザインに隙間を採用したことも手伝って、通常のスニーカーよりもハードな動きに追従してくれるというアッパー。裏地に使われている「SBR」もストレッチ性を備えている

足裏にフィットするように設計された「アナトミカルフットベッド」。表面には肌ざわりが良く、滑りにくいマイクロファイバーの生地を採用

足裏にフィットするように設計された「アナトミカルフットベッド」。表面には肌ざわりが良く、滑りにくいマイクロファイバーの生地を採用

都市、山道、川辺、船上……どこでも何にでも使えるアウトソール

サイドから見ると非常にソールが厚いことが分かる

サイドから見ると非常にソールが厚いことが分かる

1985年ごろに登場したストラップ式のスポーツサンダルは、ボートを操って観光客を案内するリバーガイドの要望を受けて誕生した。そのためボートを背負って川辺を歩くことは想定してはいるものの、比較的薄めで簡易なソールを採用したアイテムが多く、長距離の歩行に向かない。

一方、しっかりと陸上を歩くことを想定しているニューポートは高いクッション性を備えたソールを採用している。構造はハイテク系スニーカーとほぼ同一。堅牢性の高い「カーボンラバー」、ミッドソールにクッション性の高い「コンプレッションEVA」、足裏に触れるフットベッドには立体成型された「圧縮EVA」という三種の素材を採用しており、ソフトな履き心地であるにもかかわらず、長時間履いても疲れにくい。さらにソール内部にはトレッキングシューズなどに使われるシャンク」と呼ばれる芯材を内蔵して剛性を高めているため、足が段差などに引っ掛かってもひねりにくく、歩行時の安定性も高いという。

ソールは非常に幅広なので安定性が高い。ラグ(溝)は靴底からサイドまで伸びている。岩場などをしっかりグリップ出来るようにとの配慮だ

ソールは非常に幅広なので安定性が高い。ラグ(溝)は靴底からサイドまで伸びている。岩場などをしっかりグリップ出来るようにとの配慮だ

ソールパターンにも汎用性を高めるための配慮が詰め込まれている。舗装路を歩きやすいフラットな面を確保しつつ、同時にトレッキングシューズに近い太く深いラグ(溝)を大胆に配置しているため、岩や障害物などの多い山道でも安定感が高い。また「レーザーサイピング」と呼ばれるタイヤのような細かい切れ込みは接地面から水を押し流す働きもあるため、ヨットのデッキ上や水に濡れたタイルの上を歩いても滑りにくい。

ソールを曲げるとすべりにくさを高める「レーザーサイピング」があらわれる

ソールを曲げるとすべりにくさを高める「レーザーサイピング」があらわれる

レーザーサイピングにはソールの屈曲性を高める機能も

レーザーサイピングにはソールの屈曲性を高める機能も

革新的であると同時に履物の原点に回帰した“ハイブリッドフットウェア”

タンとヒールには着脱の際に指をかける「プルストラップ」を採用。リフレクター入りなので夜間の視認性も高い

タンとヒールには着脱の際に指をかける「プルストラップ」を採用。リフレクター入りなので夜間の視認性も高い

「そもそも人類が作った履物の原点は、非常にシンプルなサンダルに近いものでした。たった一足で全ての用途に対応していたんです。それが長い時間を掛けてドレスシューズ、スポーツシューズ、サンダルという形で細分化され、使用シーンが狭まっていった。ですからニューポートは、革新的であると同時に靴の原点に回帰したアイテムだともいえるのかもしれません」

キーンはスニーカーでもサンダルでもなく、幅広い用途に使える“ハイブリッドフットウェア”を多数展開している。そのコンセプトの原点であり、最高到達点のひとつがニューポートなのだろう。もしかすると夏用シューズは、この一足があれば十分なのかもしれない。

「実はニューポートで1000メートルほどの山に登ったことも。本当に“スーパー万能靴”なんです」と高木さん

「実はニューポートで1000メートルほどの山に登ったことも。本当に“スーパー万能靴”なんです」と高木さん

 

サンダルでもスニーカーでもない“ハイブリッドフットウェア” KEENの原点にして不朽の名作「ニューポート」

ニューポート | KEEN

¥ 17,600(税込み)

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

あわせて読みたい

マストリスト:連載一覧はこちら

PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

流行アイテムにさらなる清涼感を スノーピークのオープンカラーシャツ

一覧へ戻る

国産素材が生み出す“穿いてない”感覚 スノーピークの超通気ショートパンツ

RECOMMENDおすすめの記事