THE ONE I LOVE

佐藤タイジ、中村佳穂らを支える腕利き集団・egoistic 4 leavesが選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、8年ぶりとなる2rdアルバム『debris(デブリ)』を7月29日にリリースした6人組インストゥルメンタルバンド・egoistic 4 leavesが5曲をセレクト。変拍子やポリリズムをふんだんに盛り込んだテクニカルな楽曲で知られる彼らだが、そのイメージとは一見ほど遠い、シンプルで穏やかな楽曲がずらりと並んだ。そこには、卓越した演奏能力を有するからこそ、逆に“弾かない”ことはとても難しい、という彼らならではの感覚が反映されている。

取材には、林礼一(Dr)、堀嵜ヒロキ(Per)、深谷雄一(Dr)、鹿嶌祥平(G)の計4人が参加。なお、堀嵜は佐藤タイジ、ドレスコーズ、堂珍嘉邦らのサポートミュージシャンとして、深谷は中村佳穂BANDのメンバーとしても知られている。

<セレクト曲>
1 高木正勝「あなたはわたしの美しいうた」
2 EGO-WRAPPIN’「a love song」
3 Thad Jones「A Child Is Born」
4 おおはた雄一「おだやかな暮らし」
5 egoistic 4 leaves「msr(feat. MASAHIRO KITAGAWA)」

 

■高木正勝「あなたはわたしの美しいうた」

堀嵜ヒロキ(Per) これは映画『おおかみこどもの雨と雪』(細田守監督/2012年)のサウンドトラック曲です。映画自体が家族愛を描いたものなんですけど、そのストーリーを度外視して単体で聴いても愛を感じるし、温かい気持ちになれる曲だなと思って選びました。僕らのようなインストバンドが選ぶラブソングとしては、こういうのが正解なんじゃないかな。

僕はegoistic 4 leavesではパーカッションを担当しているのですが、パーカッションって、なくても一応演奏は成立するんですよ。ドラムが2人もいますし(笑)。なのでリズムを作り出すというよりは、楽曲に色づけをする役割なんです。そういう意味では、こういった映画音楽とかに近いことをやってるのかなと自分では思ってます。僕らの曲ってリズム的に複雑だったりするので、ほかのみんなは精密に粒をそろえないと成立しないのですけど、僕は唯一曖昧なことをやっても許されるパートなんです(笑)。

 

■EGO-WRAPPIN’「a love song」

林礼一(Dr) 僕は大学時代にスカをやっていたんですけど、これはその当時よく聴いていたDETERMINATIONSというスカバンドがEGO-WRAPPIN’の録音に参加した曲です。ロックステディーとかラバーズロック(ともにスカ/レゲエの派生ジャンル)のような雰囲気の曲で、夕方の時間帯なんかにすごく似合う曲だなと。歌詞うんぬんよりも、醸し出される空気感がすごくラブソング的だと思います。

淡々とした作りの楽曲ながら、ボーカルや演奏の抑揚によって起承転結が表現されていて、そこがすごくカッコいい。派手な展開をせずとも、演奏だけでこのメリハリがつけられるのがDETERMINATIONSのすごいところだと思います。僕らのバンドはわりと緊張感のある演奏を目指しているので、こんなふうに人をハッピーにさせる感じではないのですが、こういうエッセンスをいかにスパイスとして自分たちの演奏に配合できるか、みたいなことは考えますね。

堀嵜 「曲を盛り上げすぎたくない」っていうのは礼ちゃん(林)の中に一貫してあるんですよ。ただ、辞めたギタリストが盛り上げたいタイプの人間だったんで(笑)、急にわかりやすくバーンと終わるような曲が多いのは彼の影響です。

 

■Thad Jones「A Child Is Born」

 僕はジャズの専門学校出身なんですけど、スイングジャズなどの王道よりはエレクトリック・マイルスなんかのハチャメチャなジャズが好きでした。ジャズそのものへの興味というより、ジャズの中の好きな部分だけを吸収したいと思って入学したんです。だから学校で習うようなコンテンポラリーなジャズにはまったく興味なかったのですが、この曲には唯一引き込まれました。すごく幻想的で、本当に子どもが生まれてくるんじゃないかって思えて。“ラブソング”というと一般的には「愛してる」みたいな歌を指しますけど、この曲にはもっと神秘的なものを感じるというか、なんとなくいとしい気持ちになれる。聴けばわかってもらえると思います。

堀嵜 ちなみに、その専門学校では僕と礼ちゃんが同期でした。もっと言うと、今日来ている(深谷)雄一と鹿嶌(祥平)もたまたま全員同じ学校出身なんですけど、彼らはだいぶ後輩にあたります。

 

■おおはた雄一「おだやかな暮らし」

 これは歌詞がよくて、「欲しいものは/おだやかな暮らし」「好きな人の/てのひらがすぐそこにある/そんな毎日」という。キスをするとか体を重ねるとかの派手なイベントを人はつい追い求めてしまうけど、見落としがちな当たり前の日常にこそ幸せがあるんだ、というのが染みたんですよね。で、これまた夕日が似合う(笑)。

ライブで初めておおはたさんを見たとき、優しく語りかけるような歌い方に「声って、張らなくていいんだ!」と衝撃を受けたんですよ。そういうスタイル自体も、この歌詞と同じように「派手じゃなくていいんだ」と言ってくれているようで。高木正勝さんとかもそうなんですけど、肩の力が抜けた演奏ができるアーティストには憧れますよね。自分たちが気合の入った演奏をするタイプのバンドなので。

堀嵜 抜いた演奏って、めちゃめちゃ難しいんですよ。本当に何をしていいかわからなくなる(笑)。

深谷雄一(Dr) プレイヤーあるあるだと思うんですけど、無音恐怖症みたいなのがあって。曲の中には何もしなくていいパートがあったりもするんですけど、音を出さないことに耐えられなくなっちゃう(笑)。とくにうちはドラムが2人いるので、片方がたたかなくてもいい場面がありそうなものなのに、だいたい2人ともたたいてますね(笑)。もうちょっと大人になって、バランスを見ながらやれるようになっていきたいと思っています。

■egoistic 4 leaves「msr(feat. MASAHIRO KITAGAWA)」

 アルバム『debris』収録曲であり、僕らの曲としては一番取っつきやすいであろう曲ですね。4拍子なので拍も取りやすいし、ピアノがずっとキラキラしていて聴きやすいんじゃないかと。とはいえ、僕らの曲って1曲の中に展開がたくさんあって、一番伝えたいことは最後に持ってくるんです。この曲も途中から20拍子になる(笑)。細かく言うと5拍子、9+11拍子、8+8+4拍子の三つの拍が入り交じっていて、どの音に着目するかでリズムの印象が違うという遊びを入れています。

深谷 4拍子のパートでもドラム2人でまったく別のパターンをたたいていて、二つで一つのリズムに聴こえるようにしています。片方だけを聴くと「なんだこれ?」っていうリズムパターンなんですけど、二つ合わさると……違う意味で「なんだこれ?」みたいな(笑)。複雑に絡まってはいるけど、聴きやすさも意識して。楽器のチューニングも2台で対照的な音にしたりして、すごくツインドラムが生きるアレンジになったかなと。

堀嵜 この曲はトライアングルのフレーズ作りに苦労しました。このバンドではトライアングルにかなりこだわっていて、そこが自分のアイデンティティだと思ってるんですよ。それくらい絶対的な自信を持って作ったフレーズだったんですけど、プロデューサーの北川さん(MASAHIRO KITAGAWA/北川昌寛)と意見が食い違いまして(笑)。2人でけっこうな時間をかけてフレーズを考え直して、最終的には満足いくものが録れたんですけど。

鹿嶌祥平(G) 僕はまだこのバンドに加入して浅いので、自分が入ってから新しくできた曲ってまだ1曲もないんです。なので今回のアルバムも、基本的には前任の方が弾いていたフレーズをコピーしつつ、そこに込められた思いを想像しながら自分なりの解釈も加えていくスタイルで臨みました。この曲のギターは、全編通してキラキラしてますね。アルバム のコンセプトが「宇宙」みたいなことなので、そういう意味ではこの曲が一番「宇宙」に近いアプローチかもしれないです。

■前作『aluva』からの8年間で得たもの

鹿嶌 僕はそもそも前作のときはいなかったので(笑)。egoistic 4 leavesとは対バン相手として知り合って、前任のギタリストさんが抜けることになったライブの打ち上げのとき、たまたま同じ店に居合わせたことで入ることになったんです(笑)。それがまさかこんなことになるとはって感じですね……。

深谷 前作は本当に自分たちだけの力で初期衝動的に録音したものをそのまま出した感じだったんですけど、今回は人の力を借りることを覚えたというか。それによって演奏も曲そのものもけっこう変わったし、経験によって成長した部分は大きいなと感じてます。あと、曲が長くなりました(笑)。

堀嵜 このバンドは名古屋を拠点に活動しているのですが、僕個人は1stアルバムのリリースツアーが終わった直後くらいに上京したんです。東京に来て、いわゆるトッププロの方とも仕事をするようになったりとか、規模感も含めて音楽との関わりかたがガラッと変わって。その8年間の経験を、バンドにもフィードバックできてるのかなと思っています。それと、いろんな現場を見て改めて実感したんですけど、礼ちゃんのドラムは本当に異質だなと。とくにキックの音、あんなのよそで聴いたことない(笑)。

深谷 それは本当に思う。センスあるし、クリック(メトロノーム)ともほとんどズレないし、絶対にドラマーとしての需要がめっちゃあるんですよ。

 自分ではわからないけど(笑)。僕が感じていることとしては、ドラムの深谷とパーカッションの堀嵜が上京して大きな仕事をするようになったことで、バンドの打楽器の説得力がすごく上がったなと。演奏をちょっと聴いただけで「ちゃんと仕事してるんだな」ってすぐわかる。その反面、「自分、東京で仕事してるんで」みたいな嫌な奴になってたらどうしようと思ってたんですけど(笑)、そんなことも全然なく。羽ばたいた人間が強くなって戻ってきて、頼もしい限りです。

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■egoistic 4 leavesセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

 

■egoistic 4 leaves『debris』

 

■Profile
egoistic 4 leaves(エゴイスティック・フォー・リーヴス)
名古屋発の6人組インストゥルメンタルバンド。ツインドラム、パーカッション、ベース、ギター、キーボードというリズム強調型編成、変拍子やポリリズムを多用するテクニカルでスタイリッシュな楽曲、クラブジャズを基調としながらもジャンルにとらわれない雑多な音楽性をはらむ独特のサウンド、タイトでスリリングな演奏スタイルが特徴。2002年に結成され、幾度かのメンバーチェンジを経て2012年に1stアルバム『aluva』を、2020年には2ndアルバム『debris』をリリースした。各メンバーはそれぞれプレイヤーとして個人でも活動しており、堀嵜ヒロキ(Per)は佐藤タイジほかのサポート、深谷雄一(Dr)は中村佳穂BANDのメンバーとしても知られる。

 

【関連リンク】
egoistic 4 leaves – ホーム | Facebook
https://www.facebook.com/egoistic4leaves

egoistic 4 leaves (@egoistc4leaves) · Twitter
https://twitter.com/egoistc4leaves

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