小川フミオのモーターカー

躍動感あるボディーと軽快なハンドリングが魅力 プジョー306 S16

自動車メーカーにとって大事なのは、ブランドの個性をいかに創出するかだ。フランスのプジョーは、1980年代までは保守的と評されるクルマ作りだった。それも個性かもしれないが、輝きを増すのは、83年の「205」あたりから。2ドアボディーが特にスタイリッシュなハッチバックだ。そして93年の「306」である。

(TOP写真:プジョー306の旗艦ともいえる「S16」。車名は気筒あたり吸気2、排気2の4バルブによる16バルブから:Sはフランス語でバルブを表す「soupape」の頭文字)

日本では特に、205GTIという高性能モデルが、自動車好きの垂涎(すいぜん)の的になった。80年代から90年代にかけてのプジョーは、世界ラリー選手権やダカールラリーにモンスターマシンを投入。ル・マン24時間レースでも92年と93年に総合優勝している。

プジョーのハッチバックは2ドアのデザインのほうがスタイリッシュ

プジョーのハッチバックは2ドアのデザインのほうがスタイリッシュ

306は全長4040ミリのハッチバックで、ボディーは2ドアと4ドア。のちにステーションワゴン、カブリオレ、セダンと多くの派生車種が作られた。フォルクスワーゲン・ゴルフ3(4020ミリ)の競合車であり、少なくとも日本では、というか私の周囲では、ゴルフより軽快な雰囲気がいい、とあえてこの306に乗る自動車好きがけっこういた。

91年に、同じグループのシトロエン・ブランドで登場した「ZX」や「Xsara」とプラットフォームを共用。さらに「プジョー・パートナー」などの商用車も同じプラットフォームを使った。なかでも、306が圧倒的にすぐれてみえたのは、スタイリングを含めた新しいイメージだ。

抑揚のついたボディーパネルと前傾したリアクオーターピラーは現在の208にまで引き継がれている

抑揚のついたボディーパネルと前傾したリアクオーターピラーは現在の208にまで引き継がれている

ボディーのプロポーションがよく、躍動感がある。さらに、ちょっと前後フェンダーがふくらんでみえるように抑揚がつけられたボディー、つり目のヘッドランプにグリルレス・グリル(明確な開口部を持たないフロントグリル)、ヘッドランプと同じテーマでちょっとつり目ぎみのリアコンビネーションランプなど、いい感じのスタイリングだった。

ハンドリングは軽快で、私は日本でさんざん乗ったものだし、フランスに仕事で行ったときはレンタカーを借りて、アルプスをひとり走ったこともある。そのときも、気持ちよくカーブを曲がっていく操縦性にあらためて感心したものだ。乗り心地は、70年代までのプジョーの大きな魅力。それも健在だった。

実用的なレイアウトのダッシュボード

実用的なレイアウトのダッシュボード

306が人気だったもう一つの理由は、さきに触れたモータースポーツの活躍に通じるようなモデル設定。「S16」という2リッター4気筒DOHCエンジンを持つスポーツモデルがイメージリーダーだった。

繰り返しになるけれど、70年代までのプジョーは、悪くないけれどもっさりしたクルマだった。80年代から、それが一転。“ドライバーを楽しませてくれる”へと変わった。その立役者が、205 GTIであり、306 S16なのだ。

一部の市場ではS16は「GTi-6」として販売された(車名の6は6段ギアボックスの意)

一部の市場ではS16は「GTi-6」として販売された(車名の6は6段ギアボックスの意)

スポーツイメージは、205の後継モデルとして98年に発表された「206」にも引き継がれた。そもそもコンパクトで、ちょっとスタイリッシュで、価格も手ごろで、ブランドイメージも上がっていたプジョーの人気は、日本においてこのころ絶頂だった。

話は少しそれてしまうものの、その時期に投入された「206 CC S16」や「206 RC」といったスポーツモデルも、やはり当時の“プジョーらしい”プロダクトである。ただ、そのあとプジョー車のスタイルはどんどん個性的になっていく。私の印象では“エグく”なっていった。

グリルらしいグリルを持たないフロントマスクも特徴的

グリルらしいグリルを持たないフロントマスクも特徴的

個人的には、エレガントなスタイルの306や405といった、それより前の世代のモデルが好みなのだ。オーソドックスさと、新しさの絶妙なミックスが、スタイルにも乗り心地にも走りにも感じられるからだ。

(写真=Peugeot提供)

【スペックス】
車名 プジョー306 S16
全長×全幅×全高 4040×1695×1400mm
1998cc4気筒 前輪駆動
最高出力 155ps(114kW)@6500rpm
最大トルク 183Nm@3500rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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