シネマコンシェルの部屋

#05 自尊心が低い人との付き合い方に悩んでいます(コンシェルジュ:LiLiCo)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、カラテカ・矢部太郎さん、Base Ball Bear・小出祐介さんの4人です。今回のコンシェルジュはLiLiCoさんです。

#05 自尊心が低い人との付き合い方に悩んでいます(コンシェルジュ:LiLiCo)#05 自尊心が低い人との付き合い方に悩んでいます(コンシェルジュ:LiLiCo)

#05 自尊心が低い人との付き合い方に悩んでいます(コンシェルジュ:LiLiCo)

LiLiCo

映画コメンテーター/タレント。スウェーデン・ストックホルム生まれ。スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳の時来日、1989年から芸能活動スタート。TBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとして出演するほか、フジテレビ「ノンストップ!」やJ-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」など、レギュラー出演番組も多数。イベント出演や映画・アニメの声優などマルチに活躍。ファッションにも意欲的に取り組み、バッグやジュエリーのデザイン、プロデュースも手掛ける。

◆◇◆

<相談者プロフィール>

さいとう・あこ(仮名) 34歳 女性

千葉県在住 会社員

自尊心が低い人との付き合い方について、今でも悩んでいます。

1年ほど前、5歳以上年下の男性と付き合いました。相手の人柄や雰囲気、話し方など、一緒にいればいるほど好きになりました。しかし、そうした気持ちがふくらむほど、相手と距離を詰めたくなる私がギアを上げすぎたために、逆に相手を追い詰めてしまい、別れることになりました。

自分自身のコントロールが30半ばにもなってうまくできなかったことがそもそも恥ずかしいのですが、とても好きだった相手だけに今でも思い出しては腐りかけます。

彼は、彼自身がそれまで歩んできた人生の中で受けた数々の傷により、自尊心が低い人間になってしまった、求められれば求められるほど受け止めきれない、よって別れる原因は自分にある、というようなことを言っていました。

一緒に乗り越えていくことは十分可能だったと思うのですが、遠距離だったことや、私も避けられるほどに傷つきもしたため、これ以上付き合うほうがつらいと思い、諦めてしまいました。  本当に好きな人でした。どうしてあげるのがよかったのか、今でも思い悩みます。

好きな相手だからこそ、距離感を考えて

こんにちは!

愛する人と別れることは本当につらいですね。かなり長く引きずっていますね。

でも自分を責めすぎるととても暗い人間になってしまうから、少しだけ客観的に以前のお付き合いのことを考えてネ。

自尊心が低い人はいっぱいいます。わたしだってそうです。

育った環境、そして大人になって歩んできた道によって、明るい人に見えて実はいっぱい悩みを持っていたりします。

わたしは自分のことを客観的に見て、ひとつの答えを出しました。

「わたしはいっぱい傷つけられて、瘡蓋(かさぶた)ができて、その瘡蓋はなかなか厚い」

他人の言動に「あー、そうですか?」となんとも思わないこともあれば、瘡蓋だってたまに割れて血が出てしまうこともあります。

そういう時は傷つけられ落ち込んでいて、あまり人と話したくない。でも友達に会ったりして楽しく生きるほうが幸せであることに気づいてしまったので、なにか言われても”フッ”と我慢します。

人間って不思議で”どう育てられたか”よりも、”なにを言われてきたか”で性格が形成されます。

さいとうさんの元彼はどんな悩みを持っていたのかなぁ。

まぁ、今それを考えてもあなたはもっと落ち込むかもしれません。

わたしはよく「あの人はあまりしゃべらないよね」と人から言われる、おとなしいイメージのある人と友達になることがあります。

まずわたしがずっとしゃべってる(笑)。そうするとだんだん殻を破って、いろいろ話すようになります。

「人は苦手だけどLiLiCoと一緒は楽」と言われます。こんなにうるさくてうざったいオバサンなのにね!(笑)

でもわたしはその人の”暗い部分”を気にしません。

普段のわたしはテレビほどうるさくなくて、人とフラットに付き合う。言葉の節々でさりげなく相手を褒めたり、楽しくなれることを言ったりします。毎回ではないですよ! それはさすがにしつこい。

さいとうさん、そんなに元彼が好きだったのなら「なにがあったの?」と聞かずにお付き合いをすればよかったかもね。

お二人が一緒にいるところを見たことないからどんな感じだったのかはわかりませんが、相手の懐に入りたいのはわかります。だって好きなんだもの。

でもね、自尊心が低い人でなくてもあまりグイグイ来られると疲れる人はいます。

あなたはどんな感じですか? 男女問わず、すぐに「わたしね~」とか「聞いて~」とか「またいつ会えるぅ~」になると後ずさりしてしまうかも。

わたしの大好きな映画『レスラー』を見て、もちろんストーリーに感動するのもひとつだけど、人と人との距離感に触れてほしい。

え! おじさんがプロレスをしてる映画で!?とお思いでしょう。

この映画、実は様々な見方があるんです。

主人公はプロレスラーのランディ。家族と長年会っていなかった彼は娘を訪ねて、おわびしてやり直すことを告げたい……のですが、思いっきり娘に拒否されます。

『レスラー』は父と娘の物語という側面もありますが、「娘さんに会ってきたら?」とランディにアドバイスしたのは、ランディがたびたび訪れるバーのストリッパー、パム(マリサ・トメイ)。

ストリッパーは彼女が生きるために選んだ仕事であって、そこにもとある理由が……ですがそれは見てのお楽しみ。

パムはランディのことが好きですが、あくまでも彼はパムにとって”お客様”です。だからお店のルールを守って、プライベートなお付き合いはしないものの、娘になにかをプレゼントしたいと頼むランディのお誘いは断れません。

お店では妖艶(ようえん)に踊るパムですが、普段は地に足が着いてるしっかりした女性。

一方ランディは、プロレスラーとしてはかなりの年齢なので身体にいっぱいガタがきていて、本人もそれをわかっている。

お酒を飲んでそのことを考えないようにしたりと、傍(はた)から見たらかなりだらしない。

もう少し自分の人生を大切にしたらきっともっとうまくいくのに……と思うけど、家族を捨ててしまったという事実、昔はスターレスラーだったけど、今はプロレスファンならかろうじて”見たことある”程度に落ちてしまったという事実、これは自信を無くしますよね。

自分はどうしようもない人間だと言いながらまたお酒などで身体を痛めつける。

パムはそんな彼を突き放しながらも見守っています。

ちょっとだけドライな人間になることも大切。ドライとは表面的に、ね。

身体の芯はランディを助けたくて、支えたくて燃えていますが、様々な壁が誰にだってあります。

ちょっぴり激しい映画ではありますが、公開当時、評判のよさでロングランとなり、今でもランディを演じるミッキー・ローク本人とちょっとかぶっているのではないかなど噂(うわさ)され、ラストも語り継がれています。

さいとうさんは、ラストシーンをどう読み取るのでしょうか。

悩んでいる人に対して「大丈夫?」とか「頑張って!」と言葉をかけるのはためらってしまうけど、言いたくなりますよね。でもそこはちょっと我慢です。

ダーレン・アロノフスキー監督は、カメラが主人公の後ろを追うようにして撮影をしています。だからまるで見ているこっちが一緒に歩んでいる気分、あるいはランディになった気分に(実はとても低予算の映画で、スーパーでのシーンは本当のスーパーの営業中に撮影したそう。その臨場感も味わってネ)。

自尊心の低い人との付き合い方にはひとつの答えはないので、次の彼氏があなたに合う方だといいね。

わたしちょっと勝手に感じたんですが、あなたくらいの年齢になると日本の女性は結婚を焦ったりする人が少なくない。

だから目の前にいる彼氏を必要以上に束縛します。今でも彼を忘れられないのはわかります。

でもね、恋愛は両人の気持ちが大事。わたしは大好き――!という気持ちがあっても、自分を愛してくれない男性と一緒にいて幸せですか?

それはつらいんじゃないかな。

彼から別れを切り出したから、彼を傷つけてしまったのかは今も気になると思うけど、どうか自分を責めないで。

合う人合わない人、いっぱいいます。そうして地球は回っていきます。

素晴らしい将来があなたに訪れますように。

LiLiCoさん推薦の映画

レスラー

監督:ダーレン・アロノフスキー

PROFILE

「シネマコンシェルの部屋」ライター陣

LiLiCo、FROGMAN、矢部太郎、小出祐介

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