小川フミオのモーターカー

パフォーマンスカーのパーツ“使い回し”で成功 三菱エクリプス

自動車メーカーが最も好きなこと、それは“使い回し”である。言葉はあまりよくないけれど、ユーザーにとって、それがよく出る場合もある。たとえば、1990年に登場した「三菱エクリプス」だ。

(TOP写真:三菱エクリプス。製造は米国における三菱とクライスラーの合弁、ダイヤモンドスターモーターズコーポレーションが行った)

使い回しとはなんだろう。シャシーをいくつものモデルで共用(できればモデルチェンジを経ても)、エンジンを共用、サスペンションシステムを共用……それが通常のクルマ作りだ。

ブラックアウトしたピラーでガラスのドームのようなキャビン

ブラックアウトしたピラーでガラスのドームのようなキャビン

たとえば、アウディR8とランボルギーニ・ウラカンは、基本的なシャシーを共用、V型10気筒エンジンも同じものを使う。いわゆる姉妹車を探していくと、意外な関係が見つかったりして、面白いぐらいだ。

三菱が手がけたエクリプスは、当初米国市場向けに開発されたスポーティークーペだ。エンジンは、三菱のスポーティーセダン「ギャラン」(87年)のインタークーラー付きターボチャージャーを備えた2リッター4気筒。さらに四輪操舵(そうだ)機構を持った4WDシステムもギャランからの流用だった。

だからといって、それが悪いわけではない。パフォーマンスカーのために開発されたパーツを利用する「使い回し」によって、エクリプス自体の走りも、高いレベルになっていたのだ。ハイパワーのターボエンジンと4WDシステムを組み合わせて、ドライブが楽しめるクルマを作るのは、当時の三菱が目指したところである。

日本にも左ハンドルのまま輸入された

日本にも左ハンドルのまま輸入された

200馬力のパワーを誇り、走りを楽しむスポーティークーペなので、ホイールベースは2470ミリに切り詰め、全長も4395ミリ。コンセプトはギャランとは当然全く違い、競合の1台と目されたのは「ポルシェ944 S2」(211馬力、全長4300ミリ)である。

米国ではともかく、日本ではあまりに価格差があり、ライバルとはいえなかったが、この時代の三菱は、スポーティーなクルマ作りで鳴らしただけに、自動車好きにとって、そんな比較も三菱への応援の一つだったのだ。

ポルシェを連想させるヘッドレストレイント一体型シート

ポルシェを連想させるヘッドレストレイント一体型シート

先に触れたように、そもそもは米国市場で89年に販売開始されたモデルだった。それを、左ハンドルのまま、日本に導入して三菱自動車のディーラーで販売した。日本で売られたのは、前輪駆動版「GS」と4WD版「GSR-4」である。

速くてカッコいいクルマを作りたかったんだろうと、すぐ分かるような、パワフルなメカニズムといい、迷いのないデザイン。そこがエクリプスの大きな魅力だった。

トランクに付いた大型スポイラーは先代にあたるスタリオンを想起させる

トランクに付いた大型スポイラーは先代にあたるスタリオンを想起させる

同じ90年に三菱は鳴り物入りで「GTO」というスポーツクーペを発売。こちらの方が、より大きな脚光を浴びることになった記憶がある。

それでも価格差でエクリプスの方が約100万円安かったし、スタイルもインターナショナルなテイストで、好感が持てた。GTOは今の眼(め)で見ると、仰々しくて面白いけれど、古びて感じないのはエクリプスだ。

石原プロの『ゴリラ・警視庁捜査第8班』(1989年~90年、テレビ朝日系列で放映)とのタイアップで企画されたガルウィングボディーを特注することもできた

石原プロの『ゴリラ・警視庁捜査第8班』(1989年~90年、テレビ朝日系列で放映)とのタイアップで企画されたガルウィングボディーを特注することもできた

(写真=三菱自動車提供)

【スペックス】
車名 三菱エクリプス GSR-4
全長×全幅×全高 4395×1690×1320mm
1997cc4気筒 全輪駆動
最高出力 200ps@6000rpm
最大トルク 28.0mkg@3000rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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