THE ONE I LOVE

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、8月26日にメジャー3rdアルバム『maze』(「メイズ」ではなく「まぜ」と読む)をリリースする2人組ラップユニット・chelmico(チェルミコ)がセレクト。彼女らのポップで明るいイメージからすると少し意外にも思える、比較的音数の少ないしっとりした楽曲が並び、ラップは1曲も選ばれていない。

大ヒットアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK)のオープニング曲「Easy Breezy」がYouTube再生回数800万回を超えるなど、大きな注目を集めているchelmico。2人は今、どのように音楽と向き合っているのだろうか。

<セレクト曲>

1 んoon「Lumen」
2 girl in red「We Fell In Love In October」
3 Keison「天国」
4 AAAMYYY「愛のため」
5 chelmico「milk」

■んoon「Lumen」

Mamiko 周りの音楽やってる友達から「まみちゃん、たぶん好きだと思うよ」って勧めてもらったのが最初です。バンド名自体は以前から知ってたんですけど。「(バンド名の『ふーん』を)なんて読むんだろう?」って気になるじゃないですか(笑)。それで聴いてみたら、本当にドンピシャで好みだった。

歌詞を見てみると、「うれしくて 朝の日/分からない 言葉に/気持ちよくて 遠回り/わりと暖かい 空気」とか、気持ちがあふれすぎて言葉になってない(笑)。何げない日常の気持ちをただただ歌っているだけの曲で、いわゆるラブソングではないんですけど、愛にあふれた曲だなって。この素朴な音の曲をアルバム1曲目に入れるところにもハッとさせられました。

以前、普通にファンとして自分でチケット買ってライブを観(み)に行ったら、申し込みフォームに書いた「鈴木真海子」って名前でchelmicoのMamikoとバレてたみたいで(笑)。まさか気づかれてるとは思わなくて、あとでんoonのメンバーから「最前列にいましたね」って言われてめっちゃ恥ずかしかった(笑)。それからちょいちょい交流が始まって。

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲
Rachel 実は、コロナで中止になった「chelmico 感謝祭Tour -BAND SET-」で積島直人さん(B / んoon)にベースを弾いてもらう予定だったんですよ。ってこれ言っていいのかな? 別にいいよね(笑)。

Mamiko 今後も機会があれば何か一緒にやりたいと思っているので、お楽しみに! まだなんの話も出てないけど(笑)。

 

■girl in red「We Fell In Love In October」

Rachel 私、よくSpotifyでおすすめに出てくる曲を流し聴きしてるんですけど、それで流れてきて「なんじゃこりゃ!」と思った曲です。私でも聴き取れるくらい簡単な英語で歌われていて、とにかく歌詞がすごく入ってきて。屋上でタバコを吸ってるところから始まるのとかめっちゃ映画的だし、「私たちは10月に恋に落ちた。だから私は秋が好き」とかシンプルなことしか言ってないのになぜか泣けるっていう。女の子に恋する女の子ならではのヒリヒリ感、切なさもすごく感じます。

ノルウェーの宅録アーティストで、英語が母国語じゃないからこそいいのかも。ストレートで、純粋で。ざらっとした音の手触りもよくて、「こうやって録(と)ったんだろうな」って想像できちゃうくらい生々しい。それもグッときたポイントですね。

Mamiko このジャケット(アートワーク)、かわいいね。

Rachel そう、ジャケもかわいいの。

 

■Keison「天国」

Mamiko 死んでしまった友達か誰かに向けて歌っている曲なんだけど、こんなふうに素朴な音でヘラヘラしながら明るく歌われるの、すごくいいなって。もし自分が死んだとしても誰かが悲しんでる顔とか見たくないし、葬式とかでしんみりされるのは嫌なので。これをKeisonさんがどういう意図で作ったかはわからないけど、こういう曲を作ること自体が愛だと思うし、すごくリスペクトしています。

Rachel そういうとき、明るい曲のほうが泣けちゃうの不思議だよね。

Mamiko ね。この曲を知ったきっかけは、Leyonaさんですね。もともとLeyonaさんのことがすごく好きで、彼女がよく一緒にやっている周辺人物としてKeisonさんの名前を知って。それで「『天国』むちゃくちゃいい曲だな!」って聴くようになったんです。こういう少ない言葉遣いの歌詞ってラップとは真逆とも言えるけど、私はもともとそういうものも好きなのかもしれない。chelmicoをラップっていうくくりだけで見てほしくない思いはずっとあるし、そういう意味ではラップ曲じゃない「milk」を出せてよかったなって思ってます。

 

■AAAMYYY「愛のため」

Rachel これは“愛の曲”っていうテーマをもらったときに最初に浮かんだ曲です。タイトルに「愛」って入ってるし(笑)。普通にめちゃくちゃ好きで聴いてる曲なんですけど、タイトルからは想像もつかない歌い出しがカッケーなって。「さよなら世界」ですよ? 私の思う愛と違うっていうか、「こんな愛、知らない!」みたいな(笑)。曲もいいですよね。シンプルでオーソドックスな作りに聴こえるのに、なんでこんなに印象に残るんだろう? ほかの恋愛ソングとは全然違う種類の名曲だと思う。

AAAMYYY(エイミー)ちゃんとはライブでもよく一緒になるし、普通に仲はいいんですよ。こないだアニメの曲もやってたから、chelmicoとはそういう共通項もあるし。

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲
Mamiko それ知らない!

Rachel 『BNA ビー・エヌ・エー』(フジテレビ系ほか)っていうアニメのエンディング曲(「NIGHT RUNNING」)をShin Sakiuraと一緒にやってたんだけど、あれもめっちゃいいんだよ。

Mamiko そうなんだ! 聴いてみよ。

 

■chelmico「milk」

Mamiko 「優しい愛」というテーマで書いた曲です。最初に「音数は少なめで」とか大まかなイメージを(作編曲を担当した)Mikeneko Homelessに伝えたら、ほぼギターしか鳴っていないバッチリのトラックが届いて。で、「アットホーム感を出すために声は張り上げずに歌おう」とかそういうことだけがどんどん決まっていって、いざ歌詞を書くとなったときに「どうしようかな」ってなったんですよね。

“そこにいる2人”の関係性を歌ってるんですけど、最初は必ずしも“人”を描くことには執着しなくて。植物を育てることでも、何かに没頭することでも、そこに愛があればなんでもよかった。でも、何回書き直しても納得いかなくて。最終的に“人と人”を書いてみたらしっくりきたので、結果この歌詞になりました。

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲
Rachel コロナによる自粛とかで人の大切さを改めて実感する時期だったし、それが無意識に影響したところはあるのかもね。

Mamiko 確かに。Rachelのラップにも、みんなびっくりするかも。パキパキのラップっていうイメージが強いだろうから。

Rachel 意外に思われるかもしれないんですけど、ラップパートはすごく書きやすかったんですよ。 スルスルスルって書けた。ビート感の強いトラックではない分、いい意味で素朴な感じというか、不器用さみたいなものを表現できたなと。まみちゃんの歌も含めて、この曲で新しい世界が開けたかもしれない。すごく気に入ってます。

 

■今後、chelmicoはどこへ向かうのか

Mamiko インディーズの頃は「RIP SLYMEになりたい」みたいな思いもあったけど、今はそれもなくなり。基本的に「何を目指していこう」みたいなのはあんまりないかも。

Rachel 「ライブやりたい」とか「フェスを主催したい」とか、そのくらいですね。

Mamiko 曲をいっぱい作れればそれでいい。chelmicoの制作スタイルって、やればやるほど友達が増えていくシステムなので、それ自体がもう人生になっているというか。

Rachel ずっと誰かと関わってね。

Mamiko この自粛期間も、意外と大丈夫だったよね。仲がいい人とは頻繁に連絡も取るし、この期間にトラック作りまくってるような人から要らないトラックをもらったりとか(笑)。それが新しいアイデアのタネになることもある。

Rachel 今はインターネットもあるから。実際に会えなくても、データで送ってもらって自分たちの音は家で録ったりして、アルバム制作はけっこうスムーズに進められたかもね。ツアーがなくなったのは本当に悔しいですけど、気持ちを切り替えて制作に打ち込めたので、結果すごくいいアルバムになったと思います。

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■chelmicoセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

 

■chelmico『maze』

 

「そこに愛があれば、なんでもよかった」chelmicoが選ぶ愛の5曲

■Profile
chelmico(ちぇるみこ) RachelとMamikoからなる2人組ラップユニット。2014年結成、16年インディーズ1stアルバム『chelmico』を発表。18年にはメジャーデビューを果たし、CMソングやドラマ主題歌などでも話題を集める。20年にはテレビアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK)のオープニング曲「Easy Breezy」が高い評価を受け、8月にメジャー3rdアルバム『maze』をリリース。奔放でポップな2人のキャラクターと親しみやすいリリック、確かなラップスキル、ヒップホップに執着しない柔軟な音楽性など唯一無二の存在感を放っている。

【関連リンク】
chelmico 3rd アルバム「maze」 – チェルミコのオフィシャルサイト
http://chelmico.com/special_maze/

chelmico_offi (@chelmico_offi) | Twitter
https://twitter.com/chelmico_offi

Rachel (@ohayoumadayarou)  | Twitter
https://twitter.com/ohayoumadayarou

Mamiko (@______mmk______) | Twitter
https://twitter.com/______mmk______

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