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おやじランナーにもおすすめ? 練習から本番レースまで使い倒せる“ナイキの厚底”新モデル

2017年の登場以来、長距離ランナーたちの常識を覆し、マラソンの記録を塗り替え続けてきた“ナイキの厚底”シューズの最新モデルが8月27日に発売された。「ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%」だ。

ナイキは、今年2月に“ナイキ史上最速のレースシューズ”と銘打った「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」をリリースしたばかりだった。アルファフライは、ケニアのエリウド・キプチョゲ選手が試作品を履いて非公式ながらマラソン2時間切りを達成したスーパーシューズだ。

3月の東京マラソンでは、大迫傑選手(ナイキ)がその市販品を着用して見事日本記録を更新し、東京オリンピック男子マラソンの日本代表を確実にした。この夏、オリンピックが予定通り開催されていれば、多くの選手がこの“スーパー厚底”を選択して話題となっていたことだろう。
〈「フルマラソン2時間切り」達成時のシューズ 業界騒然のナイキ「アルファフライ」、ついに市販へ〉

ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%

“ナイキの厚底”シューズの最新モデル「ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%」

今回、発売されたエア ズーム テンポ ネクスト%は、そのアルファフライの基本性能を引き継ぎながら、日々のトレーニングにも使える練習用シューズという位置づけだとメーカー側では説明している。こう書くと「なんだ練習用か」と思う読者がいるかもしれない。だが、よく考えてみてほしい。

アルファフライ ネクスト%はオリンピックに出場するような鍛えあげた超トップランナーが秒を競うためのシューズである。キプチョゲ選手が2時間を切り、大迫選手が自らの日本記録を更新したスーパーシューズだ。テンポ ネクスト%が練習用というのは、そんな世界のトップアスリートたちにとっては“トレーニングシューズ”に相当するという意味なのだ。

多くの一般ランナーにとっては、アルファフライの持ち味をマイルドに楽しめ、いろいろな意味で手の届きやすいシューズだと考えるといいかもしれない。

オフセット(つま先とかかとの高低差)が10mm(アルファフライは8mm)あるため、転がるようなライド感が味わえる

オフセット(つま先とかかとの高低差)が10mm(アルファフライは8mm)あるため、転がるようなライド感が味わえる

アルファフライ ネクスト%はトップランナーが本番レースで42.195kmを1秒でも速く走り切れるように設計されている。反発性の強いフォーム素材(ソールに使われる発泡体)とソールに仕込まれたカーボンプレートが強い推進力を生み出し、シューズ全体は極限まで軽量化されている。

そのために、犠牲にしなければならないことがいくつかあった。例えばそれは、耐久性と価格である。アルファフライ ネクスト%は1足3万3000円(税込み)とスピードと同様に価格もトップクラスだ。“ナイキの厚底”の元祖、ヴェイパーフライに比べれば耐久性が増したとはいえ、普段の練習でガンガン履けるかというと、躊躇(ちゅうちょ)がある。やはりレース用に大事に履いて、練習は別のシューズでと思いたくなる。

アルファフライ ネクスト%

キプチョゲ選手が2時間を切り、大迫選手が自らの日本記録を更新したアルファフライ ネクスト%

そんな悩みを一気に吹き飛ばしてくれるのが、実はこのエア ズーム テンポ ネクスト%ではないかと筆者は考えている。

フルマラソン4時間切り(サブ4)から3時間切りを目指す一般のランナーなら、これ1足で練習から本番まで十分使い倒せる。それでいてアルファフライに相当する性能=速さが体験できて、価格が1足2万4200円(税込み)は、なかなかに魅力的なのである。

外観で特徴的なのは、アルファフライと同じく前足部のソールにむき出しのエアバッグ(ズーム エア)が二つ並んで装着されていることだ。このエアバッグが推進力にもつながる強い反発力を生んでくれる。

ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%の内部構造

ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%の内部構造

ナイキ伝統のテクノロジーであるエアバッグが、その存在を主張しているかのように見える

ナイキ伝統のテクノロジーであるエアバッグが、その存在を主張しているかのように見える

着地時に踏み込んでつぶされた素材が元に戻る力(エネルギーリターン)を数字で表現すると、一般的なランニングシューズで多く使われているEVA系の素材が60~70%なのに対して、“ナイキの厚底”で使われている新素材ズームXは80%、ズーム エアは90%にもなるという。この反発力が蹴り出す力をサポートして、自然にスピードが上がる走りが体感できる。

これはアルファフライも同様なのだが、実際に履いてみると多くの人は驚くと思う。普通に歩いていても、足の下にバネがあるというと大げさだが、弾むような感覚になる。グッと踏み込んで走り出すと、筆者レベルのランナーでもシューズの推進力で速く走れることが実感できた。このアルファフライに近い性能に耐久性が加わって、練習でも使えるというのだからうれしい限りだ。

逆にアルファフライとの違いは大きくは三つあって、ひとつはソールに埋め込まれたプレートにカーボンではなく合成素材が使われていることだ。この合成素材はカーボンに比べてマイルドで柔らかい。これによって長距離でも疲労が少なく、快適に走れるようになるという。

テンポ ネクスト%のヒール(かかと)部にはリアクト素材が使われている

テンポ ネクスト%のヒール(かかと)部にはリアクト素材が使われている

二つ目は、かかと部分の素材だ。“ナイキの厚底”の主要モデルのソール素材は前述のズームXが使われているが、テンポ ネクスト%はかかとの部分に限って、衝撃からの保護と耐久性を高めるためにリアクトと呼ばれるポリウレタン系のフォームが使われている。

リアクトは長く使っても反発やクッション性が落ちないという長所がある。ズームXと比べてやや硬めで、それが安定感にもつながっている。かかと部分にリアクトが使われたことで、ヒールストライク(かかと着地)でも足のブレを感じずに、体重移動がスムーズにできるなどのメリットが備わった。

アウトソールのほぼ全体が黒いラバーで保護されているテンポ ネクスト%(左)。アルファフライ(右)は前足部のみがラバーで覆われている

アウトソールのほぼ全体が黒いラバーで保護されているテンポ ネクスト%(左)。アルファフライ(右)は前足部のみがラバーで覆われている

そして三つ目は、アウトソール(靴底)の摩耗を防ぐために大部分が黒いラバーで覆われていることだ。これなら普段の練習で使っても安心だ。フライニットのアッパーも内側に補強素材が縫い付けられ、耐久性とともにホールド感も増している。

速く走ることを第一優先に設計されたアルファフライに、耐久性や脚の保護といった機能を付け加えて完成したのが、テンポ ネクスト%なのだと思う。そのため、テンポ ネクスト%は重さが28cmで277gとアルファフライよりやや重い。ちなみに重さを比べると、ヴェイパーフライ<アルファフライ<テンポの順で、重い方がより耐久性があるという関係になっている。

また、このシューズを履いたトップアスリートの多くが指摘しているのが、長距離を走っても疲労感が少なく(中村匠吾選手)、ダメージが残らない(設楽悠太選手)ということだ。新谷仁美選手も同様に「長距離種目は後半疲労を感じてペースが下がることがありますが、このシューズは疲労を感じず走り切れると思います」と語っている。疲労が少なく走れることは、一般ランナーにとっては何よりのメリットだ。

東京マラソンでの大迫選手の走りを見て、アルファフライに注目しつつも手が出せないと思っていたおやじランナーのみなさん、テンポ ネクスト%ならイケるかもしれませんよ!

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ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%
https://www.nike.com/jp/running/zoom-tempo

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PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

ランナーの走りを解析しアドバイス スマートシューズに高まる期待

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