LONG LIFE DESIGN

「非公式」の言葉が心に響く “本心”の重要性が増す時代

いよいよ9月。今年も4カ月です。早いものですね。そして、いろんなことがありましたね。びっくりするようなことや、悲しいことも。でも、頑張って生きましょう。工夫して。なんか、そんな気持ちになって、今回はそんなことをいつも通り3話書きました。

最初はライターの西山薫さんがはじめる僕らD&DEPARTMENTについての日記。僕らが書くのではなく、つまり彼女が仕事として書くものではない読み物。

2話目は先日取材でお邪魔した東京の島、利島(としま)で出会った「ちゃんと困る」というお話。なかなかの気づきでしたよ。

そして最後は大好きな植物のお話。植物を買って部屋やベランダで育てるってどういうことか、僕なりの体験から書きました。「植物たちの生きていくための工夫」についてです。それではしばしお付き合いくださいね。

「非公式」の言葉が心に響く “本心”の重要性が増す時代


新しくデザインチームを独立させました。なんか、55歳にして再スタートって感じです。やっぱりワクワクは、自分ごとが一番ですね

非公式のような公式

先日、「NIKKEI DESIGN」というデザイン専門誌で連載をしていた時に担当して下さったライターの西山薫さんと、「d西山薫日記(仮)」という読み物をつくろう、と、盛り上がりました。

きっかけは、西山さんが“勝手に”僕らD&DEPARTMENT(以下d)のファンという立ち位置でブログサービス「note」に書いたものをたまたま読み、そのあたかも公式のような非公式の言葉やものの捉え方が、とっても楽しく感じたのでした。

昔、自動車のホンダが好きで、「Honda ファンサイト」というファン向けサイトのアイデアを勝手にプレゼンしたことがありました。当時も今も自動車を自己流でカスタムすることは「改造」となるので、自動車メーカーの「公式」として紹介するのはなかなか簡単ではありません。しかし、もちろん違法改造はいけませんが、ちょっと色を変えたり、車内にユニークな部品をつけたりするくらいのことはみんな楽しんでやっています。それこそ所有する楽しみであって、そういう文化をどうにか公式の側にも取り入れたいと思ったのか、ホンダは僕の提案に予算をつけてくれました。

その中で特にやりたかったことは、「CIVICを探せ!!」という企画。個人的に探していた「CVCCエンジンのシビック」を取材にかこつけ、どさくさに紛れて譲ってもらうことが狙いでした。その後、ファンサイトはこの世に生まれ、僕の企画した様々なコンテンツは今でもファンサイトと共に残っています。今ではもしかしたらコンプライアンスとか、なんとか言って、できないことになったのでしょうけれど、当時は比較的寛容ないい時代でしたし、HONDAというのは、本当に面白い会社だと今も思っています。

このサイトに予算をつけてくれた時、担当の方からは「公式ですが、非公式ですよ」と。僕はとても感動したことを思い出します。なんて粋な会社だろうと。

冒頭で紹介した西山さんのnoteを見つけ、僕はすぐに「Honda ファンサイト」を思い出しました。西山さんは「ファン」だからこその思いで僕らのことを書いてくれる。それは「仕事」ではなく、個人的に書いている。だからそれは僕らでは表現できない、外側すれすれの微風のように表現され、そういう外部の人が書いたものだからこそ、お客さんや取引先のみんなに読んでもらいたいと思えました。

そこで早速西山さんと打ち合わせ。そして、西山さんにこうお願いしました。「公式ですが、非公式に楽しく無理なく書いてください」と。そんな「d西山薫日記」そろそろ始まると思いますが、なんと言っても非公式ですので、いつ始まるかは、僕にも分かりません(笑)。

SNSの時代。お金をつぎ込みメディアに褒めてもらう時代はいち段落しました。これからは「本当に思った」ということが大切になってくる。西山さんが書いてくれる自分たちのことを、お客さん、取引先の皆さんと一緒の気持ちで、楽しみたいと思います。西山さん、よろしくね。公式ですが、非公式で!!

「非公式」の言葉が心に響く “本心”の重要性が増す時代

「Honda ファンサイト」の中には僕の企画がいくつかあり、今も残っているのがうれしい。一番のオススメは「名車図鑑」。昔の車のいろんなシーンは白いつなぎを着た若き僕が自ら出演しています(「Honda ファンサイト」より)

ちゃんと困る、ということ

東京にある11の島の一つ利島に取材に伺ったときのことです。いろんな気づきをもらえた中で特に印象に残ったのがJAの加藤大樹さん、村役場の荻野了さん、この二人との出会いです。彼らはこんなことを言っていました。「困った時は、ちゃんと困るのが大切」だと。

「ちゃんと困る」って一瞬、何のことかわかりませんよね。でもよく考えてみましょう。私たちの生活の中には「困る」ことが実はたくさんあります。とはいえ、加藤さん、荻野さんが暮らす離島ほどはないんです。離島に暮らすと「困る」ことがたくさん出てきます。島暮らしではない私たちの場合、その「困る」は誰かしらが解決してくれていますが、島ではそうはいきません。例えば、雨がずっと降らなかったことがあったそうです。島民は約320人。島の貯水槽は360人を想定して作られている。雨が降らず貯水槽の底が見えた時、困るわけです。そこで「誰かがなんとかしてくれる」と考えてはいられない。だから本当に考えてみる。本当に困ってみる。それを「ちゃんと困る」と表現していました。

いちいち、困ったと思ったら「自分ごとにして困ったそれと向き合う」。ちゃんと困る癖をつけることが、島で生きるということと結びつくというお話でした。意外と難しいことかもしれません。でもこれ、とてもいい話でした。東京に戻り、毎日の小さな困りごとに、ちゃんと向き合ってみたいと思いました。

「非公式」の言葉が心に響く “本心”の重要性が増す時代

写真左が利島役場の荻野さん。右がJA利島の加藤さん

植物のいとおしさ

家の中で一緒にいる植物たち。外から来たばかりの植物は、部屋に配置された瞬間から、その環境がその植物の生態系になる。2、3日経ち、床を見ると沢山の葉を落としていたりする。彼らはその場所が、自分が「生き続ける」ところかどうかを判断して行動を起こす。そういう様子を見て、ごめんね、とは思わないけれど、今日から一緒に暮らそう、と思う。彼もきっとそう思っている(と、いいなぁ)。

人間である僕との共存生活で、彼らも精いっぱい「ここにいよう」「それには、こんなに葉をつけていては養分を使ってしまう」とか、考える。それがとてもいとおしいと思う。

彼らは元は地面に植えられていた。その場所の条件を感じ、考え「生きていく」ためにいろんな工夫をした。ある日、大地から鉢に植え替えられ、植物屋の室内の環境に移される。でも、そこでも彼らは「生き続ける」ことを考え、葉っぱを落とすなど、いろんなことをして生き延びるアイデアを考え、実行した。そして、我が家へやってきた。また変わった環境について、彼はまた「生きる」ためのアイデアを探る。そして、大胆に床に葉をたくさん落としたり、ネバネバの粘着質の体液を発したりする。もしかして、死ぬかもしれない。でも、この環境で生き延びなくてはならない。だから、彼らはアイデアを絞る。

僕が植物のことが好きなのは、こういうところだ。人間のエゴで持ち込んだものだけれど、彼らは一生懸命「生きよう」とする。そのアイデアにいとおしさを感じずにいられない。「ごめんね」とは思いたくない。地植えがいいに決まっている。でも、一緒にいようと努力してくれる(ように見える)、彼らのアイデアにハッとする。

彼らは動けない。だから、与えられた「場所」で、「生き延びる」ためのアイデアを絞るしかない。

僕は栄養剤をあげてみる。僕は5000円もする太陽光に近い電球で光を当ててみる。僕は葉っぱを布で一枚ずつ拭いてみたりする。僕は毎朝、話しかけながら水をあげたりする。彼らをこまめに移動させ、光や風を浴びてもらおうとする。人間も「一緒に生きよう」と思わないといけない。一緒にいたいと思うならば……。

彼らは話せない。話しかけてきたりはしない。でも、何か一緒にここで生きようと思い、何となく対話する。

結果として、彼らはとても小さな体になってしまうかもしれない。でも「ごめんね」とは思いたくない。一緒に暮らしているのだから。僕がこの部屋に持ち込んだのだけれど……。彼らの「生きよう」とするアイデアにドキドキしながら、やっぱり、植物たちから学ぶことってたくさんある。そう思う。朝、思いもしなかったが、彼らは花を咲かせていた。

まさか花が咲く植物とは思っていなかったので、夜中にそれを見つけ、本当にニヤニヤしました。いとおしすぎて……。植物はかわいいです

まさか花が咲く植物とは思っていなかったので、夜中にそれを見つけたときには、本当にニヤニヤしました。いとおしすぎて……。植物はかわいいです

PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2カ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

「覚えようとしなくても記憶に残ってしまうこと」それが自分という存在の輪郭を描くのだ

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