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あの定番が裏地の剥離をついに克服 パタゴニアの質実剛健な防水ジャケット

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす人が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

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「まだ暑さも残るというのにナイロンジャケットの紹介か」と感じられた方も多いだろう。が、それでも紹介しておきたかったのが、パタゴニアの定番ナイロンシェル「トレントシェル3L」だ。

 

前身モデルにあたる「トレントシェルジャケット」は、比較的手に取りやすい価格(発売当時18000円)ながら、しっかりと風雨を防ぎ、かつ蒸れにくい防水ジャケットとして長らく人気を集めてきた。年間を通じてレインジャケットとして、またインナーにフリースやライトダウンを着込めば、防寒着にもなる汎用性の高いアイテムである。街でも使える安価なナイロンシェルとして「マストリスト」でも真っ先にすすめたいアイテムだったが、唯一あまりにも大きな“弱点”を抱えていた。それを解消したモデルが、2020年発売の「トレントシェル3Lジャケット」である。

あの定番が裏地の剥離をついに克服 パタゴニアの質実剛健な防水ジャケット

前身モデルとなる「トレントシェルジャケット」は、表地、防水透湿膜の2層に、裏地の役割を果たす樹脂パウダーコーティングをかけた「2.5層」構造だった。しかし、このコーティングは非常に軽量だったものの、保管方法によっては劣化が早まり、ボロボロと剥がれ落ちるという欠陥を抱えていた。コーティングや防水透湿膜が剥がれれば、防水機能は失われてしまう。

しかしリニューアルモデルの「トレントシェル3Lジャケット」は、この弱点を見事に解消している。「3L(レイヤー)」の名の通り、パウダーコーティングを廃して「トリコット」と呼ばれるニットを裏地に採用することで3層構造としたのだ。このリニューアルについてパタゴニアでマーケティングを担当する八木康裕さんは次のように語る。

「どんなハードシェルにも寿命はあるのですが、以前のトレントシェルも剥離によるお問い合わせを頂く事がありました。弊社には製品保証制度がありますので、ご返金や新品製品へのご交換を行っていたのですが、結局お渡しする製品は同じものなので、根本的な解決にはなりませんでした。我々スタッフとしても、お客様に対して心苦しく感じていました。ですから社内でも長く使える3層構造へのリニューアルは大変話題になりましたね」(八木さん)

パタゴニアでマーケティングを担当する八木康裕さん。自身でも「トレントシェル3Lジャケット」を愛用しているという

パタゴニアでマーケティングを担当する八木康裕さん。自身でも「トレントシェル3Lジャケット」を愛用しているという

裏地素材のリニューアルに合わせて、防水透湿フィルムの素材も加水分解に強いポリカーボネートへと変更した。また2016年にリサイクルナイロン100%に切り替えられた表地は、さらに海洋汚染の原因となる使用済み漁網などをリサイクルしたナイロン素材「エコニール」に。あわせて若干厚みを増すことで耐久性も上げた。実は生地全体が大きくアップデートされているのだ。

裏地採用された「トリコット」は織物のようなニット生地。コーディング時代と比べて肌触りも向上した

裏地採用された「トリコット」は織物のようなニット生地。コーティング時代と比べて肌触りも向上した

「H 2 No」はパタゴニア独自の防水透湿規格。もともとは防水フィルムのことを指す言葉だった

「H 2 No」はパタゴニア独自の防水透湿規格。もともとは防水フィルムのことを指す言葉だった

堅実なテクノロジーを効率的に配置することで高められた機能性

熱気や湿気のこもりやすい脇には排気用のファスナー装備

熱気や湿気のこもりやすい脇には排気用のファスナー装備

今回紹介する「トレントシェルジャケット3L」のルーツにあたる「トレントシェルジャケット」は、2010年に発売されたアイテムだ

「トレントシェルジャケット」は、必要十分な機能を備え、日常生活とアウトドアで兼用できる安価なアイテムとして発売と同時に注目を集め、そのままロングセラーモデルとなる。裏地コーティングに難があったにもかかわらず、10年の長きにわたって売れ続けたのは、欠点を補って余りある堅実な魅力があったからだ。

フロントの防水機能も万全

フロントの防水機能も万全

正直言って「トレントシェルジャケット3L」は、実験的な素材やパーツを多用した最先端のジャケットではない。どちらかといえば90〜00年代からあるテクノロジーを効率的に配置することで、機能性とリーズナブルな価格を両立した「堅実なエントリーモデル」といったところだ。

腰の左右には大容量のポケット

腰の左右には大容量のポケット

フロントには止水ファスナーではなく、ビスロンジッパーを採用した上で、フラップは内側を含めて三重にして防水機能を高めている。また素材の進化に伴って省略されることも増えてきた脇のベンチレーション用ジッパーも装備して、しっかりと熱や湿気を逃がす機能を確保している。腰に付いている大容量ポケットに本体を詰め込めば、それなりにではあるが小さく収納して持ち運ぶことも可能だ。「ここが凄い」とは言いにくいものの、必要な機能を着実に揃えた真面目なジャケットであることは、なんとなくおわかりいただけると思う。

左のポケットの内側にカラビナ用のループが付いている

左のポケットの内側にカラビナ用のループが付いている

「上位モデルに比べるとシンプルな構造ではありますが、しっかりと立体裁断も採用しています。個人的に良く出来ていると感じるのはフードですね。つばにフォームが入っているので形崩れしにくく、顔に雨が当たりにくいです。また額とフードの間に隙間を作らないように1センチほどの肌当たりの良い生地を縫い付けていたりと、非常に細かく作り込まれています」(八木さん)

2軸のドローコードを採用して頭にしっかりとフィットさせることが可能

2軸のドローコードを採用して頭にしっかりとフィットさせることが可能

肌触りが非常に良いだけでなく、裏地に直接皮脂が触れないようにする機能も。袖の裏側や裾の裏側など肌に当たる部分には共通して付いている

肌触りが非常に良いだけでなく、裏地に直接皮脂が触れないようにする機能も。袖の裏側や裾の裏側など肌に当たる部分には共通して付いている

頭の動きにしっかりと追従するため、真横を向いても顔がフードに入って視界が遮られることがない

頭の動きにしっかりと追従するため、真横を向いても顔がフードに入って視界が遮られることがない

発売から10年の時を経て、ついに完成に至ったエントリーモデル

環境、労働者、消費者にとって安全な化学物質と加工工程を経た製品であることを証明する「ブルーサイン認証」を受けている

環境、労働者、消費者にとって安全な化学物質と加工工程を経た製品であることを証明する「ブルーサイン認証」を受けている

トレントシェルジャケットは、シルエットやロゴなどのデザイン、リサイクル素材の採用など、細かいアップデートを重ねてきた。その締めくくりが、今回の3L(レイヤー)化だ。発売から10年の時を経て、ついに名作は完成に至ったと言っていいだろう。

「本当に何にでも使える“万能選手”という言葉がぴったりくるアイテムです。通勤からアクティビティーまで出番が多いこともあり、パタゴニア社内でも多くのスタッフが愛用しています。雨具としてはもちろん、春や秋など季節の変わり目には、ちょっとした防寒着として、冬にはインナーに R 2など着ていただければ、ちょっとした雪山のトレッキングにも十分使えます。一年を通じて、本当に出番の多いアイテムです」(八木さん)

より薄く、軽く、優れた素材を使った最新鋭の本格防水ジャケットは他にもあるだろう。だが機能、デザイン、環境への配慮、汎用性、価格などの「総合点」で判断した場合、トレントシェル3Lジャケットは、今もっとも「買って損のない」防水ジャケットと言っていい。もしあなたが街で使う質実剛健なナイロンジャケットを探しているならば、間違いなくおすすめのアイテムだ。

スソのドローコード・ストッパーはサイドから若干前に寄せた位置に。着たままでもスソの調節がしやすい

スソのドローコード・ストッパーはサイドから若干前に寄せた位置に。着たままでもスソの調節がしやすい

メンズ・トレントシェル3L・ジャケット
22,000円(税込み)

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

&編集部からのお知らせ

2018年8月7日より連載を開始した「マストリスト」は今回をもちまして終了とさせていただきます。みなさま、長らくのご愛読ありがとうございました。

 

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

30年間アップデートを重ねた銘品 パタゴニアの大型3WAYバッグ「トレス・MLC 45L」

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