シネマコンシェルの部屋

つらさを理由に手放した夢 その選択に自信がもてません(コンシェルジュ:Base Ball Bear・小出祐介)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、カラテカ・矢部太郎さん、Base Ball Bear・小出祐介さんの4人です。今回のコンシェルジュはBase Ball Bear・小出祐介さんです。

<01> 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには<01> 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには

つらさを理由に手放した夢 その選択に自信がもてません(コンシェルジュ:Base Ball Bear・小出祐介)

小出祐介

2001年に結成されたロックバンドBase Ball Bearのボーカル・ギターを担当。これまで2度にわたり、日本武道館でのワンマン公演を成功させる。また、音楽プロジェクト・マテリアルクラブの主宰も務める。
 

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〈相談者プロフィール〉

角谷 哲雄(仮名) 19歳 男性

神奈川県在住 大学生

 

僕は、現在大学一年生です。

去年は大学受験のために朝から晩まで自習室で勉強漬けの毎日でした。正直、受験勉強はかなりつらく、自分の夢を追いかけているというよりも、とにかくこんな日々を一年で終わらせるために頑張っているという感じでした。

しかし結果、第一志望校は不合格、今は第二志望だった大学に通っています(こういう状況なのでオンライン授業ではありますが)。

受験生のころ、模試で第一志望校に受かる可能性のある成績を何度か出していたこともあり、親や先生には浪人を勧められました。

しかし、毎日朝から夜までただひたすら勉強をしていたあの生活にはどうしても耐えられず、浪人はしませんでした。この思いは今も変わりません。

それでも、何げなく映画を見ていたり、音楽を聴いたりしている時に「夢は諦めなければかなう」というメッセージに触れると、どこか後ろめたさを感じてしまいます。

第一志望校にどうしても行きたい!という思いは、今はもう薄れているのですが、自分は夢を諦めたんだという意識を心のどこかに抱えているようで、時々しんどくなります。

つらいからという理由だけで夢を手放した選択は本当によかったんだろうかと、自信が持てなくなっています。この思いとこれからどう付き合っていけばいいのでしょうか。

夢は自分のための挑戦であるからこそ、自分がここまでだと思うところまで追いかけるのでいい

夢や可能性についてのお悩みかと思います。

角谷さんのお便りを読んでまず、夢を諦めたことに後ろめたさなんて感じなくていいぜと思いました。

何よりもつらい受験勉強を頑張った、やりきったことが大切です。

そして、浪人してまで再挑戦することには耐えられないと感じた、自分の心の正直な反応に従った判断も絶対に正解です。無理して角谷さんがもし傷ついてしまっていたら、その方がかえって後に悪い影響があったかもしれません。

角谷さんの感じている後ろめたさの背景には、ご家族など周囲の方を気にされている部分もあるのではないかと想像しましたが、夢というのは、たとえ“誰かのために”追いかけ始めたのであっても、“そう思っている自分のために”見ているものなのではないでしょうか。

夢は自分のための挑戦であるからこそ、自分がここまでだと思うところまで追いかけるのでいいと思いますし、誰かと比べる必要だってないです。夢にヒエラルキーはありません。「夢をかなえた」結果が偉いのではなくて、挑戦するすべての人が尊いです。

「夢は諦めなければかなう」というメッセージもよく目にしますよね。

漫画『SLAM DUNK』にも「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という有名な台詞(せりふ)がありますが、諦めたとしても人生は終了じゃありませんよ。その試合が終わっただけです。

“次の試合”、自分が「諦めたくない」「行けるところまで行きたい」と思えるようなものと出会える日を待てばいいんです。

それはもしかしたら、大学生活の中で、あるいは就職先での仕事の中で見つかるかもしれません。人生はあっという間ですが、それなりに長いものです。変化や成長はこれからだって起き続けますからね。焦らなくても大丈夫です。

続いて「夢を手放した選択は本当によかったんだろうか」という部分についてです。

僕も自分の過去について「あのときこうしていたら……」とよく考えていましたが、タイムトラベルものの小説や映画が好きで色々と読んだり観たりしているうちに、そう考えすぎることをやめていました。

ちなみに、いちばんのきっかけになったのは、宮沢賢治作品についての論考『宮沢賢治 存在の祭りの中へ』(著:見田宗介)と、『あなたの人生の物語』(著:テッド・チャン、映画『メッセージ』の原作)です。

例えば、いまここにタイムマシンがあって、やり直したい過去を選び直すことに成功したとします。ただ……それはそれで、また別の悪いことが起きる可能性だってあるわけです。

ある一点をやり直せたとしても、その後の人生のコントロールができるわけではないんですよね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の展開をイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。

人生には……もっと単位を大きくすると“時間の中には”無限の可能性があって。良い悪いではなく、なるようにしかならないし、現在の自分を愛していくしかない。今をより良くしていくために頑張っていこうと僕は思っています。

角谷さんにも「今は今で悪くないじゃん」と思える日がくるといいなと願っています。

さて、今回はタイムトラベルものの話になったので、『恋はデジャ・ブ』『バタフライエフェクト』……はたまたビックリする展開の『LOOPER/ルーパー』『プリデスティネーション』……最新作『TENET テネット』が話題のクリストファー・ノーラン監督『インターステラー』……デンゼル・ワシントン主演『デジャヴ』もすごく好きな映画だし……と、色々悩ましいですが『ゴジラVSキングギドラ』で!

23世紀の未来人がやってきて、23世紀の日本はゴジラの被害により壊滅状態にあると伝えられます。

未来人からの提案で、太平洋戦争中にラゴス島で発見された恐竜(ゴジラザウルス)が、1954年の核実験によってゴジラへと変異することを食い止めるべく、タイムトラベルをして、ゴジラザウルスを別の場所へとワープさせることになります。

これに成功したことで、ゴジラは歴史上から抹殺されました。しかし、同時にキングギドラが出現してしまいます。ゴジラザウルスの代わりに、未来人が連れ込んだドラットという小動物が放射能を浴び、キングギドラへと変異してしまったのです。

実は、これらはすべて未来人が仕組んだわなでした。23世紀に大国となる日本の成長を阻止するべく、キングギドラを操り、国力を消耗させようとしていたのです。

そこに、消滅したはずのゴジラが出現します。なんと、ゴジラザウルスはワープさせられた海底の放射性廃棄物の影響で、元よりも20mも巨大なゴジラへと変異していました。

まさに「別の選択肢を選んだ結果、さらに悪いことが起きる」というお話です。

最終的にどうにかゴジラを撃退するんですが、(未来人のわなではあるけれど)良かれと思ってやった歴史改変のせいで別に誰も得はしていないという……。

だったらまだ20m小さいゴジラの対策をしていたほうが良かったんじゃないか……と考えると、結局未来のことなんて誰にもわからないなと思います。

ちなみにこの作品は、派手に矛盾が生じてしまっていることでも有名で、例えば歴史改変によりゴジラが消滅したはずなのに、元の時代の人がゴジラのことを覚えていたりします。

もし気になったとしてもその点はひとまず目をつむっていただいて(笑)、新宿都庁前でのゴジラとメカキングギドラの最終決戦のド派手さで、モヤモヤを吹き飛ばしてもらいたいです。角谷さん、いかがでしょうか!

小出祐介さん推薦の映画

ゴジラVSキングギドラ

監督:大森一樹

PROFILE

「シネマコンシェルの部屋」ライター陣

LiLiCo、FROGMAN、小出祐介

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